平原大喜さんが考え抜いた
「aulico」のシャツ地の
Tシャツ。
今回「5DW メンズショップイシカワ」で発売するのは、
宮崎県都城市でものづくりを行っている平原大喜さんによる
「aulico」(アウリコ)の
シャツ地のTシャツとタンクトップです。
石川顕さんが初めて「aulico」のTシャツと出合ったのは
インテリア、ファッション、雑貨などを扱う合同展示会。
毎年、出店ブースが隣どうしで、
巷に着たいビッグTシャツがない!
と思っていた石川さんが、
平原さんがつくる「aulico」のTシャツを見つけて
買ったのがきっかけです。
Tシャツといっても、生地は布帛。
シャツのようなTシャツ、といえるかもしれません。
これをスーツに合わせたかったという石川さんと、
つくり手の平原さんに、対談をしていただきました。
一目ではわかりづらいこのTシャツのいいところを、
おふたりにたくさん話してもらいましょう!
なお、石川さんが考える昨今の
「ビッグTシャツ問題」については、
ぜひ
こちらも読んでみてください。
- 石川
- 今、平原くんの「aulico」のショップは、
『concourse aulico』という名前で
西都城駅に入っているんだけれど、
そのお店がすごくかっこいいんです。
建物に駅ビルっぽさがなくて、東京で言ったら
代官山駅(*)の改札に服屋があるような感じ。
(*編集部注:
東急東横線代官山駅は、いわゆる駅ビル然としておらず、
古い駅舎の改札から道路までの間に、数軒の商店が入っている。)
▲西都城駅にあるお店。駅はお店の真上にあり、
1番ホームが店内の上にあるような立地だそうです。
- 平原
- あの場所、もともと、手荷物扱い所だったんです。
むかしは宅配便がなかったけれど、
明治時代から、国鉄がその役割を果たしていて、
貨物専用の列車ではなくても、
一般の客車に荷物を載せて運んでくれたんだそうです。
そのサービスが昭和61年まであったそうで、
誰でも最寄りの駅で手荷物を預けて、
遠方の人に受け取ってもらうことができた。
その窓口だったのが、僕の店のある場所です。
この建物は駅よりも古くて、
駅は高架になりましたが、
この建物だけがそのまま残った。
国鉄時代の建物って材料が全部丈夫なんですよ。
- 石川
- 「鉄道員(ぽっぽや)」の世界だね。
昔は駅員さんが寝泊まりをしていたんだろうね。
平原くんの店を見て、
こういう駅とか、公共のところを
店として借りるのもアリなんだって思ったよ。
もと国鉄ってのも、ちょっとかっこいい。
- 平原
- 場所を探してくれた役場の人に、
僕はボロ屋が好きだと思われていて、
内見もそういうところばかり、連れ回されて(笑)、
ここに出合ったんです。
でも制約が多い建物なので、内装がさわれないぶん、
掃除だけはすごくしました(笑)。
- 石川
- いまのお店はふつうに買いに行きやすいし、
店のスタイルとしてもあたらしい。
現役の駅だから。
女子高生がワイワイしてたりして、
面白いんだよ。
そういえば、昔、平原くん、
つくっている工房の隣で、
産地直送みたいにして販売していましたね。
水車小屋を改装したお店でした。
- 平原
- はい。水車小屋のお店『bulgoat』のときは、
いちばん最初に手がけた白いシャツと青いシャツを
いっぱい並べていましたね。
今回、いっしょに販売をするタンクトップは、
あの当時の店で考えたことがベースになっています。
オーバーサイズ感覚で着てほしいTシャツなわけですが、
お客さんがどれをどう買ったらいいかが
ピンときていない感じがしたんですよ。
たぶん、じぶんの身体に
関心が向いていないんじゃないかなって思って。
- 石川
- 面白い。
- 平原
- 基準値があっての「オーバー」ですよね。
当時(2006年)はコンパクトなサイズ感が
主流でしたが、何がコンパクトなのか?
という基準もないわけですし、
そもそも自分の身体に気を向けるのって難しい。
だから、タンクトップだって思ったんです。
- 石川
- タンクトップを着ることで
自分の体と向き合えるってことかな。
- 平原
- そう、身体の凹凸をちょっとなくした状態で、
上からシャツを着ることで、
自分にとってのジャストなサイズ感がわかります。
自分にとってのオーバーサイズの
ちょうどいいところを探すのにも、
まずタンクトップを着てもらうと、
体がフラットになって、
シャツを選びやすくなるんじゃないかな、って。
- 石川
- そこで天竺のTシャツではなく
シャツ地のタンクトップにしたのはどうして?
- 平原
- 最初は天竺素材でつくっていたんですよ。
しばらくしてシャツ地に変更しました。
繊維長が長くて、撚りが甘いコットン100%です。
シャツ地だとネックがのびず、
しゃきっとしているから、襟元も清潔感があって、
着膨れもしないですし。
最初、なぜ天竺素材だったかというと、
ぼくは昔、シャツの下にはタンクトップではなく、
Tシャツを着ていたんです。
でも、あるとき、フランス軍のデッドストックの
タンクトップをたくさん手に入れて、
シャツの下に着るようになりました。
それが天竺素材で、
丈夫で、サイズが小さめだったので、
「いかにもタンクトップを着ている人」に見えず、
Tシャツ感覚で着ることができた。
フィットするから体型の凹凸もややフラットになる。
そういうタンクトップならつくってみたいなと。
つくったのがこのタンクトップの原型です。
- 石川
- そうなんだ。
このタンクトップの上にTシャツを着ると、
シャツ地+シャツ地の重ね着だから、
アタリの感じが、服としてかっこいい。
レイヤードしている雰囲気なんだよ。
- 平原
- 素肌で着るよりもきれいに見えますよね。
あと、かさばらないのもいいところで、
旅行の時に荷物を減らすことができます。
僕は荷物の少ない旅が好きなんですけれど、
これをつくったばかりのとき、
コンパクトになるのが嬉しくて、
これを入れて海外旅行に
実験的にうんとちっちゃい袋で行ったら、
荷物が少なすぎるから怪しいって、
入国のときに止められました(笑)。
- 石川
- 荷物を軽くしたいという発想は、
アウトドアの考え方に近いね。
そんなふうに旅のことを考えるのって楽しい。
僕は2泊3日の旅の荷物を考えるのが、
実現しなくてもいいんだけど、楽しい。
コンビニの袋で旅に出て、
足りなくなったら旅先で必要なものを
コンビニで買えばいいじゃん、
それってあたらしい旅行のスタイルって思うんだけど、
実際にはできないんだよ(笑)。
でも旅の荷物を軽くするために
ハイテク素材を使おう、というのは、
そうじゃないんじゃないの? って思う。
- 平原
- 下着だからハイテクな繊維で、というのではなく、
ちらっと見えるのがコットン、というのが、
いいなぁ、って思いますよね。
肌触りがいいものを着たいという思いもありますし。
- 石川
- 平原くんのつくるシャツは、
コーディネートを考えるものというより、
基本的に「これだけでいいじゃん」ってものだよね。
- 平原
- はい。長持ちしますし。
僕は頻繁に着て、2年くらいはきれいに使います。
経年変化があるにしても、くたびれていくより、
素朴にならないものをつくりたいなと思います。
だからタンクトップの形も
なるべくふつうに見えるようにしました。
シャツ地ゆえ、天竺に比べたら
着脱はしにくく、
肩の稼働域を狭く感じるかもしれないので、
とくに男性には無理してジャストサイズを
選ばないでいただけたらと思います。
男の人だったらLでいいと思いますよ。
逆にSサイズだけは
他のアイテムよりも小さくしてあって、
これを着たいという小柄な女性には、
そのサイズを提案しています。
2023-06-20-TUE
(つづきます)
[STAFF]
スタイリング・プロデュース:石川顕
撮影:吉嗣裕馬
文:小笠原民織
モデル:佐藤岳
「aulico」のシャツ地のTシャツとタンクトップ
5DW WEBショップにて販売中。