- ――
-
冬から春、夏にかけての季節の変わり目、
洋服えらびがむずかしいなっていつも思っていました。
特にアウターは、
しっかり厚みのあるコートだと昼間暑くなって
脱いで手で持ち歩くときにかさばるし、
薄手のジャケットは夜になると冷えるし。
急な雨にも降られると途方に暮れて‥‥。
かといって、本気すぎるアウトドアウェアは
いつもの服になじみにくい。
- 宇和川
-
昼と夜の寒暖差が大きくて、
アウター選びがむずかしい季節ですよね。
急な天候の変化も増えたように思いますし。
- ――
-
そうなんです。
そこで、加藤さんと宇和川さんにご相談して、
季節の変わり目に使えるコートを
あたらしくつくっていただきました。
春先はアウターの脱ぎ着や持ち運ぶシーンも多いので、
腕に持ったときにも疲れないよう
「軽さ」は外せないポイントでした。
持ち運んだときにシワシワになってしまうと困るので、
シワが気にならないような素材で。
そして、突然の雨からも守ってくれる
便利な撥水機能がほしい。
それでいてかっこいいコートがつくれたら‥‥
というのがわたしたちのリクエストでした。
- 宇和川
-
春から梅雨、初夏までや、
夏が終わって秋から冬までのあいだも
長く使っていただける、
ぴったりなコートができたと思います。
- 加藤
-
デザインのベースにしたのは
クラシックなバルマカーンコート。
日本でいう、ステンカラーコートですね。
ふつうのステンカラーコートのようにしてしまうと、
おじさんっぽくなってしまうので、
シルエットや襟でちょっとしたゆとりを出しつつ、
袖は動きやすいラグランスリーブにしました。
- 宇和川
-
裾にかけてなだらかに広がる、
ふんわりAラインになっているのが特徴です。
ふわっと広がって落ちるシルエットが、
ステンカラーコート特有のかっちり感をやわらげ、
カジュアルに見せる隠し味です。
- 加藤
-
ステンカラーコートって
ほかのブランドでもたくさんつくられていますが、
ふつうは高密度のコットンクロスを使います。
こういうAラインでつくると重くなるんですよね。
- ――
-
いくら雨風をしのげるコートとはいえ、
重いのは避けたいです。
- 加藤
- かるいナイロン生地でつくって正解でした。
- 宇和川
-
ナイロンだから撥水性もあって、
晴雨兼用で着ていただけると思います。
- 加藤
-
本格的なレインコートではないので
雨を完全にシャットアウトするわけではないですが、
コートについた雨のしずくをちょっと手で払ったら
難なく落ちるぐらいと思っていただければ。
- ――
-
このコートのもうひとつの大きな特徴が、
女性用に「スタンダードフィット」と
「ルーズフィット」の2サイズがあること。
もともとは、メンズ用にゆるっとした大きいサイズ感、
レディス用にシュッと体に沿うフィット感で
それぞれサンプルをつくっていただいたんですが、
「メンズの大きいサイズ感で着たい」
という女性からの声も多く、
レディスのルーズフィットも仲間入りしました。
- 宇和川
-
メンズ服を女性が着てもかわしいし、
あえて大きいサイズを
ゆったり着るというトレンドもありますしね。
- 加藤
- メンズのサイズ感をキープしつつ、
袖丈の長さとポケット位置を女性用に調整しました。
袖丈は短く、ポケットに手が入れやすいよう
ポケットをつける位置をやや高くして。
- ――
- 大きいサイズを着たい女性にもやさしいつくりです。
- 加藤
-
ありがとうございます。
サイズだけでなく、ディテールにもこだわっていますよ。
この素材に撥水性があるぶん気密性が高いので、
湿気がこもらないように背面には風抜きを。
- ――
- 生地が二重になっているところですね。
- 宇和川
-
かぶさっている生地を留めるステッチを
小さな三角形にしているのも見ていただきたいところ。
- ――
-
小さな三角刺しゅうが4つ。
かわいいアクセント!
- 加藤
-
背中のヨークの折り返しのステッチ幅も
細くすることにこだわりました。
ステッチ幅を大きくとると、
トレンチコートみたいにいかつくなるので。
- 宇和川
-
コートとはいえカジュアルに
さらっと着ていただけるように、
ステッチなどをできるだけ繊細に
つくっているのがポイントです。
- 宇和川
-
やわらかいナイロン素材はふにゃっとした質感なので、
襟を立てたときにキリッと立つように
「月腰」をつけています。
- ――
- 「月腰」とはなんですか?
- 宇和川
-
襟の下にくっついている月の形をしたパーツのことです。
月腰があると、首に沿ったり、
折り返しやすかったりという利点があります。
- 加藤
-
さらに、補強のために横方向に並行ステッチを入れて、
ピッと襟が立つようになりました。
- ――
-
細かい部分まで本格派コートの作りなんですね。
そして、ポケットもこのコートの
アイコン的なディテールのひとつ。
- 加藤
-
フラップがついたポケットですね。
ちょっとななめに取りつけて
手を入れやすいように工夫しました。
フラップがあることで、
上がパカパカ開かなくなるメリットもあります。
- ――
-
「Any Day コート」と名前がつけられたコート、
どうやって着るのがおすすめですか?
- 宇和川
-
前下がりを深めにとっているので、
少し肩を抜くように着てもらうと
かっこよく着られると思います。
- 宇和川
-
袖にはボタンがついていて、
ボタンをひとつとばしで留めるときゅっと袖が絞れて、
それでまたかわいくもなります。
すこしハリのある素材の特性上、形をキープしやすいので
何もせずにくるくるっと
ラフに袖まくりするのもおすすめですよ。
- ――
-
雨の日は袖口から雨風が入りこまないように
ボタンを閉じるのも想定できますね。
ボタンは、背面のベンツのところにもひとつ。
- 宇和川
-
ここもクラシックなコートの特徴的な仕様ですね。
閉じても開けても、お気に召すままに。
- 加藤
-
自転車にのるときなんかに開けてもらうといいかも。
丈も、ひざにかかるかかからないかくらいなので、
脚さばきも苦にならないはず。
- ――
-
部屋着の上にこのコートを羽織るだけでサマになって、
脱いで適当にたたんでもシワが気にならないか、
折りたたみ傘感覚で持ち歩きそうです。
- 宇和川
-
コーディネートも天気も深く考え込まないで
着られそうですよね。
長袖が必要な季節にぜひお使いくださいね。