糸井 |
そしてこのお箸にはもう一工程、
仕上げが入ってますよね。
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三浦 |
はい、拭漆(ふきうるし)です。
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糸井 |
竹屋さんから次に行ってるんですね。
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三浦 |
はい。東端唯(ひがしばた・ゆい)という、
もともと三角屋にいて、
自立して5年ぐらいの職人に託しました。
彼は、家が代々の蒔絵師(まきえし)なんです。
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糸井 |
三角屋さんの工房で拝見したことがあります。
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三浦 |
はい。様々な仕上げができる職人です。
拭漆というのは、直接素材に漆を塗って、拭き取り、
乾かしてから磨いて、また塗って、と繰り返す技法です。
乾燥まで含めたら、仕上げるのに
3カ月ぐらいかかってるんです。
しかも、人工うるしは使わず、
100%天然の漆です。
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糸井 |
そういう3人が、この箸を作っているんですね。
今日の話でよくわかったのは、
箸であろうが、建物であろうが、
全体像として、その世界観みたいなものと
離せないんだよっていうことですね。
箸も、箸だけを見つめたんじゃ面白くない。
今回、三浦さんが探してくださった
職人さんたちと組むことで、
僕らがあえて「大事にしてくださいね」っていう意味が
通じやすくなるということですよね。
たとえば茶道の名人みたいな人が、
どこかで石ころを拾ってきて、
「これはええなあ」ってここに置いたら、
それは意味が出るんです。
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── |
まさしく千利休ですね。
京都の若い職人さんと話をしていて、
「聚楽土」の話が出たんです。
千利休が聚楽第からただ持って来た土を
茶室の壁にがっと塗ってよしとした。
「ただの土です」っていう話なんですが、
そういうことなんですね。
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糸井 |
そういうものなんだよ。
誰かが、「じゃ、だったら俺の石も」「俺の土も」
といっても駄目なんです。
それを認めさせる力がないと。
今回の箸は、全部それをやってきた人が
組み合わさっていったものなんです。
自由をふんだんに扱える権利って、
王様しか持ってない。
2番目の大臣は駄目なんだよ。
でも、その王様の瞬間っていうのは誰もが持ってる、
っていうのが、ぼくの考える「俺民主主義」なんです。
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三浦 |
僕が京都の職人たちに思うのは、
彼らの提案がどんどん取り入れられて行く、
っていうのは、
あんまりいい姿じゃないということです。
そこには未来がない気がすごくする。
やっぱりそこは耐えないと。
何かが来るまで耐えないと。
受けたものを100%以上、102%でいいんですけど、
そうやって繰り返してると、次がまた来る。
その繰り返ししかない。
スタートは受けるほうとして
ミットを持って待ってないと。
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糸井 |
この箸のプロジェクト、三浦さんとは
じつは次のものを、考えはじめているんですよね。
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三浦 |
はい。素材は、糸井さんも気に入って
使われているという青黒檀で作ります。
姿形は基本的には四角なんですけど、
あとはどのぐらいの細さにするかっていうところで
試作を繰り返しているところです。
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糸井 |
とても楽しみです。
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三浦 |
こういうこととの組立で
世の中の人に物を届けていくっていうのは、
ぜひ継続して関わらせていただきたいなと思ってます。
やっぱり彼らの背後に、
いまの若手の職人たちが控えてることもあって、
今回のように、彼らの1個上の世代の人たちとの
取組みっていうのを少しでも始めてると、
次の世代がひじょうに動きやすくなる。
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糸井 |
大人にちゃんと頑張ってもらわないと、
若い人はついていけないですよね。
大人がちょっと拗ねてるのかもね、いまはね。
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三浦 |
こういう職人と組むというのは、
時間はかかるんですけど、
やっぱりもうお尻叩いてでも、喧嘩してでも、
この世代の人たちとある表現をやって、
世の中に出していくところを、
次の世代に見てほしいんですね。
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糸井 |
とてもよくわかります。
最後になりますが、
使い方に気を遣うことはないんですよね。
‥‥多少は、ありますか。
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三浦 |
やっぱり洗剤は控えめに。
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糸井 |
ナイロンたわしでゴシゴシとかは避ける?
軽めに洗ったほうがよさそうですね。
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三浦 |
そうですね。そんなに神経質にならなくても
大丈夫ですけれど。
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── |
食洗機はやめてねという感じでしょうか。
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三浦 |
そのレベルです。
洗剤はそんなに使わなくていいよっていう。
長く使っていただけたらと思います。
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糸井 |
ありがとうございました。
これからもどうぞよろしくお願いします。
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三浦 |
こちらこそありがとうございました。 |
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(9月2日からは、3人の職人さんたちを
順番にご紹介してまいります。
どうぞおたのしみに!) |