豆本来の味を楽しむ、
クリーンなコーヒーを。
ソーシャルグッドロースターズさんのお話
クリーンなコーヒーを。
神田にあるコーヒーショップ
SOCIAL GOOD ROASTERS千代田。
ハンディキャップのある方々が、
コーヒーの仕事を通じて
自立することを支援していて、
おいしいコーヒーを提供されています。
編みもののおともにぴったりのコーヒーを3種類、
Miknits缶に入れていただきました。
代表の坂野拓海さんにお話を伺いました。
ほぼ日が神田に移転してきた際、
お越しいただいたのが最初の出会いでしたね。
コーヒーもおいしいし、
とてもスタイリッシュな店内で、
スタッフの高石さんには
marikomikuniのスナップにも出ていただきました。
その節は、ありがとうございました。
コーヒーと福祉を融合させたお店なんですよね。
どんなきっかけでスタートされたんですか?
以前、人事の仕事をしていたときに
障がいのある方の採用に携わったことがきっかけで、
障がいを持つ方の仕事の選択肢を増やしたい、
と思うようになりました。
最初はハンディキャップを持つ方々が
「どれくらいの仕事ができるんだろう」と、
想像が難しい部分がありました。
ですが、実際に会ってみると、
モチベーションは高いし、明るい人も多い。
「誰かの役に立ちたい」
「ワクワクする仕事がしたい」
という気持ちは私たちと一緒でした。
ですが、彼ら、彼女らがやりたい仕事を見つけるには、
あまりに選択肢が少ないのが現状です。
しかも「支援される側」というイメージが
強くついてしまっていて、
評価されるような仕事があまりない。
それで、障がいのあるなしに関係なく
挑戦しがいのある職場を作りたいと思って
この事業をはじめました。
やりたい仕事のレパートリーを増やしていくような。
そんなイメージですね。
ここでは自家焙煎のコーヒーを提供していますが、
杉並区ではクラフトビールのお店を、
渋谷区ではものづくりのクリエイティブスペースなど
ジャンルを広げていっています。
「コーヒー」を選ばれたのは
どうしてだったんですか?
開業する前に、働き手のみんなに
「どんな仕事をしたいか」質問をしました。
そうしたら「接客をしたい」という声を
たくさんもらったんですね。
あと、専門性を持ちたいという声も。
それで、接客もできて専門性も高められる
仕事はなんだろうと考えていたときに、
バリスタの仕事をしている方に出会ったんです。
その方が、あまりに楽しそうに仕事をしていて、
コーヒーを通じて人と繋がれるよろこびや、
技術の必要性についても教えてくれました。
それで、働き手のみんなに
「コーヒーの仕事はどうだろう?」と提案したら
「やりたい!」と凄い反響をもらって、
コーヒーをはじめたんです。
クラフトビールのお店もそうなんですが、
やるからには本気でやりたい。
福祉の商品はボランティアの気持ちで
買っていただくこともありますが、
私たちは最初から市場の中でも
トップクラスのクオリティを提供することを
目指しています。
私たちも最初から、
おいしいコーヒー屋さんというイメージです。
それが一番うれしいですね。
前回取材させていただいた際に
立派な焙煎機や焙煎の技術について
いろいろ教えていただいて、
みなさんのコーヒーへの「本気」を感じました。
ソーシャルさんのコーヒーの特徴は?
コーヒーの世界にはいろいろな評価軸があるんですが、
私たちが一番大事にしているのは
「クリーンカップ」であることです。
クリーンカップ?
クリアで、雑味など嫌な感じが何一つない
コーヒーを表現する言葉です。
クリーンであることで
複雑な風味を心地よく感じられて、
コーヒー豆の個性や魅力をあますことなく
楽しむことができます。
コーヒーの実というのは
産地や生産方法によって味が全然違います。
豆本来のポテンシャルを最大限引き出して、
おいしい味を楽しめるようにするのが
私たちの役目です。
そのために豆のよさを阻害するものは
全て取り除いて、
安全性を確保することを大事にしています。
コーヒー豆の安全性というのは、
あまり考えたことがありませんでした。
まず、無農薬であることは大前提ですね。
その中でも「スペシャルティ」とよばれる、
質の高い豆であること。
公平な取引を徹底している生産者から
持続的に購入するフェアトレードによって、
いい豆を譲ってもらっています。
そして、豆一粒一粒の状態もチェックする。
たとえば、コーヒー豆は生物なので、
カビが生えていることもあります。
小さな穴が開いていると、それは虫食いのサインで、
中が青くカビているんです。
コーヒー豆は自然の産物なので、
状態のいい悪いがあることは仕方ないんですね。
なので、人の手で一つ一つ、
割れや欠けのある豆をより分けられるように
「ハンドソーティング」の専門技術を持った
スタッフを育成しています。
99.9%を目標に、徹底した高い精度で提供できたらと。
手間暇がかかっていますね……!
手作業で徹底的にやり切ることが、
雑味のないクリアな味をつくるために
一番大事なことなんです。
ぱっと見では、
まったく見分けがつかないですね。
これは熟練した技術と莫大な時間がないと、
かなり難しいです。
福祉という分野にいることもあって、
飲む人が安心できることは第一だと思っています。
しかも、私たちは小規模ですから
責任を持って作れる。
フェアトレードという考えの、
何段階も上をいってらっしゃるんですね。
ほかのどこにもない、
クリーンで純度の高いコーヒーを作ることに
本気で挑戦しています。
だから楽しいんですよね。
障がいがあってもなくても、
自分の仕事に誇りを持てることが大事だし、
少しでも興味があれば始められる環境を用意して、
スタッフと一緒に奮起しています。
もう、ここにいる人たちは障がい関係なく、
おいしいコーヒーを作れる職人たちなんです。
みなさん働かれるまでに、
研修や勉強をされるんですか?
研修や勉強は常々していますが、
試験のようなものではありません。
「やりたい」という気持ちを持っている人を採用して、
入ってから、いろいろ覚えてもらいます。
最初は、こちらが気を遣っちゃったんですよ。
どれくらいできるかわからないから、
「この作業ならできるかな?」って狭めてしまって。
だけど、彼らは意欲があるから、
アドバイザーの焙煎士に積極的に質問するし、
伝えたことも的確に覚えてくれる。
彼らの可能性を活かしてくれる職場が
これまでなかったんだなと、反省しました。
働き手を受け入れる側が
バリアフリーな心を持つというか、
もっと彼らの可能性を信じなきゃいけないですよね。
一つだけ後悔しているのが、
このお店は二階にあるんですね。
というのも、路面店だと人がたくさん来て、
対応し切れないんじゃないかと心配しました。
二階は焙煎に集中できる良さはあるんですけど、
彼らのバリスタとしてのポテンシャルを考えたら、
もっと活躍できるように
路面店にしてあげたかったと思う部分もあります。
その後悔もあって、
クラフトビールのお店は路面に出しました。
土日は行列ができるほど人気で、
スタッフも最初は慌ててましたけど、
すごく楽しそうに接客しています。
今回Miknits缶には3種類の
ドリップバッグを入れていただきました。
お豆の特徴について伺えますか?
コーヒー豆は農作物なので、
産地の状況や収穫の時期によって味わいが変化します。
豆のポテンシャルを最大限引き出すためにも、
個性を伸ばし、欠点を補うために
「ブレンド」を提供しています。
誰が飲んでもスッキリしておいしい、
看板ブレンドが「ソーシャルグッド・ブレンド」です。
酸味、甘み、苦味のバランスがいいですよね。
そうですね。
酸味が強すぎず苦味も出過ぎず、
中深煎りで豆を焼いています。
「チヨダ・ブレンド」は、
地域の特性を考えてブレンドしました。
神田・神保町という土地は、
喫茶店文化じゃないですか。
周りは本屋と喫茶店だらけですね。
喫茶店のコーヒーって深煎りなんです。
なので、この土地の好みに合わせて、
酸味は残しつつも
少し苦味の強めな味わいになっています。
3つ目のシーズナルブレンドは、
季節によってどの場所で、どんな人と飲みたいか
考えて決めるようにしています。
「アキ・ブレンド」は
外出先で本を読んだり、音楽を聞いたり、
ゆっくり過ごすシチュエーションを想像して、
ブレンドを決めました。
ケニア、エチオピア、コロンビアの豆を
ブレンドしてお届けします。
パッケージもスタイリッシュですよね。
グッドデザイン賞も受賞されています。
大西真平さんという、
グラフィックデザイナーさんにお願いしています。
大西さんが表現してくれるのは、
発達障害の方々が見ている景色。
スタッフたちがどんな風に毎季節を感じているのか
話を聞いて、
シーズナルブレンドの絵を描いてもらいました。
秋は「葉っぱを踏むことで秋を感じる」という
スタッフの言葉から、表現されたイラストです。
ほか二つは、僕たちのメッセージをイラストに。
「ソーシャルグッド・ブレンド」は、
人と人をコーヒーでつなげるという思いで、
向かい合う顔を描いてもらいました。
「チヨダ・ブレンド」は仕事を真ん中に置いて、
この職場を通じて人がつながっていくイメージです。
ドリップタイプではなくて、
紅茶のようにお湯につけるだけでいい
コーヒーバッグなので、
手軽にコーヒーを飲んでもらえます。
この手軽さは、とってもありがたいです。
これからも、店舗にも伺いますね。
ぜひ、気軽にいらしてください。
もっといろんな人に来ていただきたいし、
働きたい人を受け入れるためにも場所を増やしたくて。
なので、ポップアップや、
企業の中に
一時的に出店させてもらうチャレンジもしています。
そうすると障がい者雇用について
リアルに考えてもらえるはず。
多くの人に私たちのコーヒーと
ハンディキャップのある人々の働きぶりを、
知ってもらえる機会を増やしていきたいです。
スタイリング|岡尾美代子
ヘアメイク|茅根裕己(Cirque)
モデル|Terry(身長・175cm)(BRAVO Models)