「きほんのスピーカーキット」を
組み立てて音楽を聴くときに
欠かせないアイテムがふたつあります。
音が鳴る部分の「スピーカーユニット」と
音を鳴らすための機械の「アンプ」です。
ユニットとアンプを2種類ずつ
取り扱わせていただくフォステクスさんは、
何十年も前から自作用のユニットを作っている
定番中の定番の国産ブランドです。
それぞれの特徴や、選ぶ基準について、
フォステクスショールームでお話を伺いました。
フォステクスショールーム
マネージャー
荒谷正司さん
フォスター電機株式会社
フォステクス カンパニー
営業課 佐藤昭宏さん
- ──
- 「きほんのスピーカーキット」に組み合わせる
スピーカーユニットとアンプについて
お話を伺えたらと思います。
スピーカーについての知識がなくてもわかるように、
初歩的なところから教えていただけないでしょうか。
- 荒谷
- わかりました、
では最初に、スピーカーユニットとアンプが
どういうものなのかを、私から説明しましょう。
まず、「スピーカーユニット」という製品は、
他から電気をもらって初めて動くもので、
これを「受動部品」と呼びます。
身近なものにたとえると、電球みたいなものです。
- ──
- あぁ、電球みたいなものですか。
- 荒谷
- 電球はソケットに取りつけて、
そこに電気が流れてくることで光りますよね。
ユニットも電球と同じような仕組みです。
- ──
- 電気が流れてくることで、
電球は光って、ユニットは音が鳴る。
- 荒谷
- はい、そういうことです。
そして、スピーカーユニットに
電気を送り込むための機械が「アンプ」です。
アンプとユニットがあって初めて、
音を鳴らす準備ができたことになります。
アンプに再生機から音楽信号を入れてあげると、
その信号がアンプによってユニットを鳴らせるだけの
電気信号に増幅されて初めて音が出ます。
- ──
- 解説をありがとうございます。
世の中にはユニットがいくつもある中で、
「きほんのスピーカーキット」の
ユニットとして選ばせていただいた
「P800K」と「FF85WK」には、
どういった特徴があるのでしょうか。
- 荒谷
- スピーカーユニットというものには、
いろいろな種類があるのですけれども、
「きほんのスピーカーキット」のように、
ユニットがひとつずつついているものを
「フルレンジ」タイプのスピーカーといって、
高音から低音まで、すべての帯域を
ひとつのスピーカーユニットで鳴らしています。
フルレンジのユニットにもいろいろなサイズがありますが、
低い音から高い音までバランスよく再生するには
8センチというサイズはやや小さいです。
すごく低い音まで再生できるかというと
難しい部分もあるのですが、
音楽をたのしむには十分だと思いますよ。
- ──
- 小さくても、バランスがいいんですね。
- 荒谷
- フォステクスには8センチの
フルレンジユニットがいくつかありますが、
「P800K」はもっとも入門用のユニットです。
価格は安くて、見た目もぶっきらぼうな感じですけど、
必要最低限の性能は備えていますよ。
- 佐藤
- フォステクスが「P800K」を開発したきっかけは、
特に若い方にスピーカーへ興味を持っていただきたくて、
気軽に手に取っていただきやすいように、
なるべく安くていいものを作ろうという思いからでした。
30年くらい前まではスピーカーの自作が
当たり前という時代でした。
でも、ここ20年ぐらいは、
スピーカーそのものへの興味が薄れている状況です。
入門用のスピーカーをきっかけに
スピーカーへの興味を持っていただいて、
じぶんで作ったものから
音が出ている喜びを感じていただきたい、
さらには、クオリティの高さに驚いていただきたい。
「P800K」のコストパフォーマンスは、
フォステクスの商品の中でも、
1、2を争うほど優れたものだと思っています。
「入門機でも、こんなにクオリティの高い音が出るんだ!」
と思っていただけるレベルだという自負はあります。
- 荒谷
- そしてもうひとつの「FF85WK」は、
「P800K」に比べてバランスに優れたユニットです。
ユニットの部品であるマグネットや振動板の材料、
センターキャップの素材にも、
ワンランク上のものを使っています。
単純な構造に見えるユニットですけど、
じつは、かなりのテクノロジーが詰まっています。
- 佐藤
- 形状や材質を変えることで、
音質にもいろいろな変化を持たせられますから。
- 荒谷
- 部品のすべてが
スピーカーの性質につながっている、
と言ってもいいでしょうね。
- ──
- ふたつのユニットで迷った時には
どっちにしたらいいでしょうか。
- 荒谷
- 迷うぐらいであれば、
「FF85WK」のほうが音質は明らかにいいです。
ただ、「P800K」が悪いってことはなくて、
スピーカーを初めて作る人なら、
どちらでも満足できると思いますよ。
- ──
- ありがとうございます。
つづいて、アンプの選び方について。
「AP15d」と「AP20d」は
どのような製品なのでしょうか。
- 佐藤
- 「AP15d」はどちらかと言うと、
スマートフォンなどの携帯プレイヤーで、
サッと鳴らしてたのしもうという、
気軽なタイプのアンプです。
入門機として手に入れやすいように作られている分、
見た目はちょっと、飾り気のない感じです。
そこがいいって言う方もいらっしゃるのですけどね。
- そして、もうひとつの「AP20d」は、
据置型のCDプレイヤーなどにも
十分に対応できるように開発したもので、
全体的な雰囲気としてもワンランク上ですね。
使っているパーツのクオリティも
ひとつひとつ上級なものを使っているだけあって、
緻密さの部分で性能に反映されています。
- ──
- 異なるのはパーツぐらいでしょうか。
- 佐藤
- 「AP20d」は機能も充実していて、
その先の拡張性があるのもポイントだと思います。
スピーカーを使い続けていく中で、
低音域が少し足りないなぁってなった場合に、
サブウーハーなどを増強することもできます。
- 荒谷
- ちょっとうれしいのが、
「AP20d」にはオートスタンバイ機能もついていて、
信号が無い時に電源が落ちるのです。
そして信号が来ると、電源も立ち上がります。
- 佐藤
- 電源が勝手に切れてくれるのは、意外と便利ですよ。
寝る前に音楽を聴いていてプレイヤーを止めた時に、
アンプのスイッチも切れますから、
わざわざ動かなくてもいいのです。
寝室用のスピーカーシステムとして
買いたいっていう方はいらっしゃいますね。
- ──
- 手間が少なくて済みますね。
消し忘れたままにならないのは、
意外とうれしいポイントかもしれません。
- 佐藤
- そうなんですよ。
それぐらいは、じぶんで切るだろうと思いつつ、
いざその場面を考えると、
勝手に切れてくれるのは楽ですよ。
- ──
- フォステクスさんのユニットとアンプを
2種類ずつ販売することになりますが、
ユニットとアンプの組み合わせ方で
注意することはありませんか。
- 佐藤
- どの組み合わせでも十分に鳴らせますので、
本当に、機能やイメージで
チョイスしていただいて大丈夫かと思います。
「FF85WK」と「AP20d」の組み合わせで
少しだけ贅沢なシステムを構築したいとか、
まずは入門用として
「P800K」と「AP15d」を組み合わせるとか?
- ──
- 印象で買っても大丈夫というのは、
はじめてスピーカーを作る人でも
ポンと背中を押してもらっている気がして嬉しいです。
佐藤さん、荒谷さん、ありがとうございました。
- (次回の予告では、じぶんで組み立てる
真空管アンプのキットについて、
エレキットさんのインタビューをご紹介します)
2018-07-19-THU