- ほぼ日
- 岡本太郎の考え方の部分で、
こういったところが好き、みたいなことは
ありますか?
- ハマ
- いや‥‥理解できないですね、
いつまで経っても(笑)。
- ショウ
- (笑)そうだね、わかる。
- ハマ
- 理解しようと覚えはじめもしましたが、
個人的にはあまり
「これがこうだからカッコいい」とは
考えてないかもしれないです。
知れば知るほど、よくわからない。
そこが魅力でもあるとも思います。
- ショウ
- でも、いろいろと知っていくと、
言っていることがずっと一貫していて、
万博で「なんか作ってくれ」と依頼されて作った
『太陽の塔』にしても、
「もうメチャクチャにしてやるぞ」くらいの気持ちで
作っていたとか。
- ハマ
- その話を聞いてから見ると
「確かにメチャクチャだよな、こんなものを急に作って」
と思うよね(笑)。
- ほぼ日
- ああ。
- ハマ
- そういうずっと一貫しているところや、
なびかないところ。
簡単に、常識はこうだからといって
そこに合わせて自分の作品を作るという思考に
ならないところだったり、
そういうところには単純に共感しています。
- ほぼ日
- 理解というよりも、共感。
- ハマ
- そうですね。
ロックバンドをやっている身としては
中学や高校に通っていた頃に感じていた
さまざまな「なんとなくの部分」という様なことを
忘れてはいけないぞ、という気持ちがありまして、
「そういうことを言葉にして、
さらにずっと実践してる人がいる」
という凄み。
そういった部分への尊敬だったり、
気分として「‥‥太郎さん、わかるぜ!」(笑)
というところはあったりします。
- ほぼ日
- (笑)
- ショウ
- この言い方が正しいかどうかはわからないですが、
「1回でも手を抜いたら、全部が水の泡だ」
という意図の言葉があって、
それはやっぱりすごいなと思います。
作っていて迷う時は、やっぱりあると思うんです。
「どっちにしようかな」ということだったり。
でも「常にいばらの道を行かないと意味がない」
というようなことを言って、実際にやり続けた。
もちろん自分もなるべくそのつもりで活動していますが、
改めてフッとそういう言葉を思い出すと、
「逃げてないから、
岡本太郎さんはああやって評価されたんだろうし、
負けてられない!」
と、自分にはっぱをかけられる感じはありますね。
- ハマ
- あと、すごく日本らしい存在だな、と感じます。
日本の芸術家で、そういったことに
興味がない人たちにも知られている存在は
なかなかいないと思いますが、
岡本太郎はみんなが知ってる。
そして「太郎」と実に日本人らしい名前でもあり。
さらに、岡本太郎の後、作風の似通ったものが
流行ったかというと、そうではなくて。
そういう意味でも唯一無二の存在というか。
- ほぼ日
- 岡本太郎にインスピレーションを受けて作ったという
「欲望を叫べ!!!!」という曲がありますよね。
そのときは、どう作ったんですか?
- コウキ
- これは生誕100周年のお祝いソングみたいな形で
お話を受けまして、
「好きにイメージしてもらって構いません。
勝手に作ってもらって構わないです」
という様なことを言っていただけたので、
最初は
「実験的な20分くらいの曲にしようか」など、
そういう話をしていました(笑)。
ただ、最終的にはものすごくシンプルな
楽曲になりました。
- ショウ
- でも、どの曲よりも一番、
フィジカルで作ったかもしれない。
カッコよくいえば「セッション」のような感覚で、
とにかくその時の自分たちのできる限りの力を
瞬間瞬間のその中に、全員詰められるだけ詰めたというか。
「作ったはいいけど、これ、とんでもないな」
という感じの楽曲ですね。
- ほぼ日
- 日々の中で、岡本太郎を意識することはありますか?
- ショウ
- ものづくりをするなかで、「少し進歩したな」
「壁ひとつ越えたな」と思うたびに
「そういえば岡本太郎のあの言葉は
こういう意味だったのかな」
と、新しい発見があったりします。
それを思うと、やっぱりものづくりの観点でも
常にすごい先を見ていた人だったんだ、
と改めて感じます。
ものすごく頑固な人でもあっただろうし、
素直に「本当にすごいな」と思える。
そして自分にもこの先まだいっぱい壁が
あるんだろうな、と思いますね。
- ハマ
- あと、この絵(『明日の神話』)に関しては、
もう、日常の光景でもある印象があって。
- コウキ
- そうだね、渋谷駅。
- ショウ
- こういう手帳のかたちで鞄の中に入るのも
すごく自然。
「自分の芸術は常に色々な人が触れられる、
どこにでもあるようなものにしたい」
と、さまざまな作品を作っていた人だと思うので。
手帳になるなんて、岡本太郎本人も
ニンマリ「してやったぜ」と思ってそうな気がしますね。
- ほぼ日
- 先日平野暁臣さんに取材させていただいたのですが、
まさにこの手帳を見て、似たことをおっしゃってました。
岡本太郎の作品を、暮らしのなかに届ける
すごくいいキャリヤーだから嬉しい、って。
- ショウ
- わかります。
実際、芸術はそうあるべきだという気がします。
自分たちの音楽を考えても、変に持ち上げられたり、
崇められたりせずに、常にすごく身近に
関わるものであってほしいと思うので。
- ほぼ日
- いま『明日の神話』のお話もありましたが、
そして、こちらが新しく出る手帳なんです。
「太陽の塔」と「明日の神話」で。
- コウキ
- これ、ツーバージョン出るんですか?
- ほぼ日
- はい、ツーバージョンです。
『太陽の塔』はこのサイズのものひとつで、
『明日の神話』は大きいのとふつうのがあります。
- ショウ
- この銀色のやつ、強烈だな‥‥。
俺、これがいい(笑)。
- ハマ
- 僕は一番大きいやつがいいですね。
- コウキ
- これ持ってたら、職場でかなり
インパクト与えられそうですね(笑)。
- ショウ
- 確かにこれは相当与えられる。
いいですね。
- ほぼ日
- ありがとうございます。
- レイジ
- どうでもいいことですけど、
「TECHO」ってローマ字で書いてあると、
「TECHNO」みたいですね。
- ほぼ日
- ‥‥ほんとだ(笑)。
- コウキ
- このカバー自体、機能面が高いですね。
ただのカバーじゃないというか、
いろいろ入るようになってますね。
- ほぼ日
- あ、そうなんです。
現在この手帳は15年目なんですけど、
カバーも年々改良して、
いまのかたちになっているんです。
- ショウ
- ペンが2本入るのもいいですよね。
- コウキ
- いや、そうじゃなくて、
ふたつのペンホルダーに1本のペンを刺せば、
カバーをとじられるってことじゃない?
- ほぼ日
- じつはそうなんです、
「バタフライストッパー」と呼んでるんですけど、
ペンホルダーでもあり、開くのを防ぐ機能もあり。
- ショウ
- そっか(笑)。
それぞれ1本ずつ通すんじゃなくて。
- ほぼ日
- (笑)2本刺しもできるんで、両方いけます。
- ハマ
- この手帳はなくさなさそうですよね。
シンプル・イズ・ベストが流行っている世の中で、
これを持ち歩く人は、もう勝ちというか。
- ショウ
- 勝ちでしょう。
打ち合わせでこれ出されたらヤバい。
- レイジ
- これは舐められなさそうな(笑)。
あとアドレス帳って、もう6人分しか
書くところがなくなっちゃったんですね。
- ほぼ日
- はい、今はスマホに住所を入れている人が多いので、
大事な人の分だけ書けるようにして、
その分メモページを増やしています。
- レイジ
- すごいな、10年くらいでこんなに変わるんだ。
僕、中学生のとき2、30ページ分くらい
手帳にみんなの電話番号書いてましたもん。
- コウキ
- たしかに、昔は覚えてた。
友達の電話番号とか。
- ハマ
- あとこの「Gift」ぺージ、すごくいい。
- ショウ
- 本当だ。貰ったもの忘れやすいもんね。
大事だ。
- ほぼ日
- わぁ、ありがとうございます。
実際に、手帳とかを使われてたりはしますか?
- コウキ
- 使ってますよ。
- ショウ
- 俺も使ってます。スケジュールだけに限らず、
歌詞でも、その日あったことでも、
何でも書ける様に1冊使ってます。
ステッカーなんかも貼りまくっていて。
一時期、歌詞をパソコンに書き溜めていたんですけど、
パソコンだと、どうも思いついた時の感じが
蘇ってこない時が多くて。
- ほぼ日
- 打っちゃうと、文字が均一になっちゃいますもんね。
- ショウ
- そうなんです。
「すごくいいことを思いついたと思って
書いてるけど、そんなにいいかな」
という思考に陥ってしまう時があって。
なので去年くらいから、手書きにしています。
そういう直感的なものは、
そのまま手で書くほうがいいのかなと
実験中です。
今のところ調子いいです。
- ほぼ日
- たしかに手帳と歌詞は相性がよさそうですね。
- ショウ
- いや、でも歌詞に限らず、
なにか書いておくのは本当に大事ですよ。
ぼくらがこの間作ったアルバム(『OPERA』)は、
現代の三重苦――
家の鍵、携帯電話、財布を失くした男の
ストーリーを描いた作品なんですけど、
それはまさに「携帯と鍵と財布をなくす」という
俺自身の実話が元になったものなんです。
そしてあのとき、なかでも一番困ったことは、
「あの人に連絡すればなんとかなる」という人の
電話番号がわからなくなってしまったことなんです。
人の電話番号なんか、もう覚えてないですもん。
こういうところに書いておけばよかったんだー!
と思いましたね。
(岡本太郎特集、OKAMOTO’S編はこちらでおしまい。
お読みいただき、ありがとうございました)
2016-02-10-WED