2016年の岡本太郎特集、最後に登場するのは、
ロックバンドOKAMOTO’Sのみなさんです。
それぞれにオカモトショウ(Vo)、オカモトコウキ(G)、
ハマ・オカモト(B)、オカモトレイジ(Dr)と
全員が”オカモト”を名乗っているのは
「岡本太郎が好きだから」。
だけどそれぞれ、具体的にどんな感じで好きなんだろう?
平均年齢25歳のメンバーのみなさんに
それぞれにとっての岡本太郎について聞きました。
全員に共通していたのは、岡本太郎は
小さいころから無意識に知っている存在で、
そこにいろんな感覚を抱いていたということ。
「わざわざ語る存在とはちょっと違う」
「ヤバイもの見ちゃった、と思った」などの
素直なTAROへの思いについて、教えてもらいました。
- ほぼ日
- ぼくらは「ほぼ日手帳」という
オリジナルの手帳を作っているんですが、
2月1日、岡本太郎さんの作品の手帳を
発売することになりました。
そこで「OKAMOTO’S」のみなさんにも
ぜひお話を聞けたらと思ってやってきました。
- みなさん
- よろしくお願いします。
- ほぼ日
- さっそくですが、「OKAMOTO’S」という
バンド名が岡本太郎から来ている、と聞いたのですが。
- ショウ
- 正確には、
「岡本太郎」×「ラモーンズ(RAMONES)」ですね。
その2つが掛け合わさって
OKAMOTO'Sというバンド名になっています。
「カッコいいものを2つ掛け合せたら
もっとカッコよくなるんじゃないか」
というところから始まっています。
- レイジ
- 「メカゴジラ」みたいな。
- ほぼ日
- メカゴジラ(笑)。
- ショウ
- そしてラモーンズのほうは、メンバー全員が
自分の名字を「ラモーン」と名乗っているんです。
ジョーイ・ラモーンや、
ディー・ディー・ラモーンだったり。
そのシステムを俺たちも使わせてもらって、
オカモトショウ、オカモトコウキ、
ハマ・オカモト、オカモトレイジ、としていまして。
そういった、すごく単純なところに由来しています。
- ほぼ日
- そもそも誰が言いだしたとかはあるんですか?
- ショウ
- うーん‥‥誰が言いだしたか、
もうわからないくらいですね。
もともと中学3年生の時の文化祭をきっかけに
結成したバンドなんです。
本当に文化祭レベルだったのでそもそもこんなに
長く続くと思っていませんでしたね。
部活内のメンバーでランダムにバンドを組んでは
文化祭が終わったら解散して‥‥
という流れのひとつだったので。
- ほぼ日
- だけどそこで
「岡本太郎」という名前が出てきたのは
みなさん好きだったということですか?
作品を見ていたり、本を読んでたり。
- ショウ
- 本をたくさん読んだり、
深く知るようになっていったのは、
もっと後になってからですね。
2011年に岡本太郎の生誕100周年
(「TARO100祭」)の記念イベントの中で、
ライヴをさせてもらったんですけど、
きちんと知りはじめたのは、その頃からです。
当時は、なんというか、
「なんの知識もないまま知っていた」という感じでした。
- ほぼ日
- つまり、どんな考え方をしていてとか、
そういったことは特に知らずに。
- ショウ
- 自発的に知ったというよりも、
もっと、小さい頃から無意識に知っていたような
存在でした。
たとえば『太陽の塔』だったり、
こどもの城の『こどもの樹』であったり。
その後にほかの作品についても
「あれも岡本太郎なんだ。これもなんだ」
と繋がっていって、
「やっぱりすごいんだ」と改めて知らされました。
だから、そういう無意識で知ってたものが、
すごくカッコいいものだった感じですね。
- ほぼ日
- 知識はなくても、
「カッコいい」という感覚はあったんですね。
- ショウ
- 正確には「ヤバい」という感じですかね。
「なんかヤバい」。
- ほぼ日
- なんかヤバい(笑)。
- ショウ
- 岡本太郎の作品は本当に印象に残りますよね。
たいしてよく知らなくても、
すごく記憶の中に強く焼きついていました。
なので正確には、きっともともとの感覚は
「カッコいい」ではなくて、
「なんかすごいもの」という印象だったと思います。
それを「カッコいい」と捉えるようになったのは、
もう少し大人になってからだと思います。
- ほぼ日
- ほかのメンバーのかたはどうですか?
- コウキ
- ぼくにとっても岡本太郎は、小さい頃から
慣れ親しんだものという感じでした。
幼稚園や小学校の時に、
川崎のほうの岡本太郎美術館に、
遠足的に行ったりしていました。
それで、その小さい頃に見た作品が衝撃的で、
「何かいけないものを見た」
「ヤバいものを見てしまった」
ということがずっと印象に残っていて。
そういった経験もあり、
中学でバンド名の話になったときも自然に
「岡本太郎、カッコいいよね」と
そのまま乗っかりました。
そういう意味では、ロックというか、パンクというか、
「どこか怖いけど、魅かれてしまう」
というところが好きなんだと思います。
- ショウ
- あと、レイジの家では母親が
岡本太郎の講演会のCDを聴いたりしていたので、
レイジもそれを聴いたりしていたという。
- ほぼ日
- それは、お母さんがファンだったんですか?
- レイジ
- そうですね。
俺は1冊も読んだことはないんですけど、
うちの母親が好きで、よく本を読んでいました。
そういう意味ではそもそも物心ついた頃からずっと
近くにある存在だったので、
個人的なとらえ方としては、
「芸術家としての岡本太郎が好き」ということとは
全然ちがうような気がしています。
- ほぼ日
- 具体的には、どんな感じでしょう?
- レイジ
- 語るものではないというか‥‥。
小さい頃からパッと見で
「カッコいいからカッコいい」というだけなんです。
『森の掟』とか、カッコいいじゃないですか。
見るからに子どもが好きそうというか。
そんなイメージです。
特に小さい頃は文字なんか読めないから、
母親が見てる絵を見て、なにもわからないながら
「これ、すごくカッコいいな」
「この赤ちゃんみたいなおじさんが描いてるんだ」って。
- ほぼ日
- 赤ちゃんみたいなおじさん(笑)。
- レイジ
- あと、車の中でいつも岡本太郎の
講演会のCDが流れていましたね。
それは子供でもわかるような話しかしないので、
おもしろくて聴いていました。
- ほぼ日
- じゃあ、他の人たちが
「岡本太郎が好き」とか言ってるのを聞くと、
不思議な感じはありますか?
- レイジ
- いや、なんでしょう‥‥
なんだか岡本太郎が好きだと言うと、
「芸術・美術好き」
と思われがちな気がしていて。
「どの絵のどこが好きなんですか?」だったり、
そういう観点で話されることが多くて
戸惑うことはあります。
自分は別にそういうことではなくて、
もうパッと見て、
『森の掟』がカッコよかったから、
自分にとって岡本太郎は
カッコいいものでしかないというか。
‥‥だから「恐竜」なんかに近いかもしれないです。
- ほぼ日
- 「恐竜」。
- レイジ
- 小さい頃に好きだった
「電車」や「恐竜」や「ロボット」。
そういうものに対する気持ちと近い。
あまりに身近なもので、
語るのはなんだか変な感じがしますね。
自分にとってはそういうポップなものですけど、
割と「コアな人たちのコアなもの」という風に
扱われているような気がして。
個人的に岡本太郎の話は
「自分には少し違うけど、一般的にはそうだよな」
という印象を受けたりしますね。
理解できなかったり、そういうことではないんですけど。
- ほぼ日
- ハマさんはいかがですか?
- ハマ
- 僕はバンドには他のメンバーよりも後入りで、
すでに名前や、全員オカモトを名乗ることが
決まった状態で加入しましたが、
理由を聞いて「なるほどな」と思いましたし、
印象的には「あ、いいんじゃない」という感じでした。
すっと腑に落ちたので。
もし、すごい嫌いだったら、
「嫌だ」と言ったかもしれないですけど(笑)。
- ほぼ日
- (笑)ハマさん自身が岡本太郎を
意識しはじめたのはいつですか?
- ハマ
- 僕ももういつ意識したかわからないです。
たぶん「マチュピチュ」と同じようなレベルで。
- ほぼ日
- 「マチュピチュ」(笑)。
- ハマ
- 気づいたときには名前が頭の中に刷り込まれていました。
たぶん学校の教科書の万博かなにかのページに
載っていたんだと思います。
そのとき「ずいぶん奇抜だな」という印象は
あったかもしれないです。
あとは、みんなが口々に言っているような、
作品の造形や色合いは、
カッコいい‥‥というか個人的には、
「カッコ悪くない」という感じがすごくします。
- ほぼ日
- カッコ悪くない。
- ハマ
- 「絵が好き」というようなことを言うには、
少し勇気がいるじゃないですか。
「好きって言えるほどいろいろ見たのか?」
「自分は本当にわかっているのか?」と
色々考えてしまう。
でも、岡本太郎の作品は別に今みたいなテンションで
「カッコよくて好き」くらいの言いかたでも
恥ずかしくない感じがします。
- ほぼ日
- なるほど。
- ハマ
- ただ、バンドに入って最初はそういう
「なんとなくカッコいいですよね」くらいの
認識でしたが、徐々に、
今日のように岡本太郎についてのお話を
いただくようになったりして、
自分もこれだとあまり良くないなと思って、
勉強したんです。
だけど、知れば知るほど、
「カッコいい」と言って崇めるより、
「オッサン、よくわかんないですよね」
と言ってるのが正しいのではないかという
感覚があります。
崇めたてるというより、
「なんだかすごいことをしてた人だな‥‥」
とわからないまま言うほうがいい感じというか。
あと、OKAMOTO’Sで何度か
平野暁臣さん(岡本太郎記念館館長)と
お話させていただいたことがあるんですが、
平野さんも
「広めてもらうことは嬉しいけど、
神みたいな感じで広がっていくのはちょっと‥‥」
というテンションで。
岡本太郎の名前を借りて活動している以上、
そういうテンションで伝わればいいなと
思っていますね。
(つづきます)
2016-02-09-TUE