2018年の「ほぼ日手帳」には、
ビートルズをモチーフにしたカバーが登場しました。
世界でいちばん有名なバンドを、
世界に少しずつ広がりはじめている
「ほぼ日手帳」のカバーにするのは、
なんだかとてもいいことのように思えたのです。
さて、その発売を記念して、
十代のころからビートルズに影響され続けてきた、
糸井重里にたっぷりと話を聞こう、としたのですが‥‥。
「ビートルズを語るなんて‥‥!」
そう、誰もが知る偉大なバンドだからこそ、
あらためて語るのは難しい。
でも、それを承知で、あえて語ってもらいました。
ビートルズって、なにがすごいんでしょう?
「ビートルズこそ、我が青春だ」という人も、
「ビートルズって、どこがいいの?」という人も、
どうぞご一緒におたのしみください。
そうそう、10月5日には、六本木のライブハウスで
「ほぼ日のビートルズ・ナイト!」も開催します。
そちらのお知らせにもどうぞご注目ください。
※「ほぼ日のビートルズ・ナイト!」
申込み受付は終了しました。
02
もしもビートルズがいなかったら
- 乗組員B
- 糸井さんは、メンバーでいうと
やっぱりジョン・レノンが好きなんですね。
- 糸井
- まあ、そうだねぇ。
もう、なんていうか、こうして、公の場で、
「ジョンが好き」なんて言うだけでも
どうなんだそれはと思うけど、
言わなきゃ話になんないから言うと、
まあ、その、ジョンですね。
- 乗組員A
- (笑)
- 乗組員C
- 同席者の中でいちばんビートルズを知らない私に
ジョン・レノンの魅力を教えてください。
- 糸井
- 「顔」と「声」以外で?
- 乗組員C
- 「顔」と「声」以外で(笑)。
- 糸井
- なんだろうなぁ。
「‥‥好きっ!」っていうことじゃなくて、
人としてのことで挙げるとね、
たとえば、『imagine』っていう
ジョンの人生をまとめた映画があるんだけど、
そのなかで、自分ちの庭に、
怪しい男が入り込んでくるところがあるんだよ。
- 乗組員A
- あああ、あそこはいい!
- 糸井
- いいんだよなぁ(笑)。
- 乗組員A
- あれはジョン・レノンです。
- 糸井
- ジョン・レノンだよなぁ。
- 乗組員B
- 永田さんは黙ってて。
- 乗組員A
- すみません。
- 糸井
- ジョン・レノンがプライベートで
家でいるところをカメラが撮ってるんだけど、
ある日、家で朝食を食べようとするとね、
庭に誰かいるんだよ。
それは、ジョンの大ファンで、
広い庭だし、入り込んじゃったわけ。
で、ジョンが「おまえは誰だ」と。
不審な男が「あなたのファンです」と。
で、ジョンが困った顔をして。
- 乗組員C
- ふんふん。
- 糸井
- 困ったジョンがどうするんだろうと思ったら、
「じゃあ、こっちに来い」と。
「一緒に朝食でも食べよう」と。
- 乗組員B
- え!
- 乗組員A
- そのままテーブルを囲むの。
ジョンと、ヨーコと、謎の男で、
一緒に朝ごはんを食べる。
- 乗組員C
- へーーーー!
- 糸井
- そういうところがね、ジョンにはある。
それもなんていうか、
明るく盛り上がるわけでもなく
「こういうことは困るんだよね」
みたいな雰囲気で、
ファンの男も「すみません」みたいな感じで、
ただ、ふつうに朝ごはんを食べる。
- 乗組員B
- そういう演出じゃなく?
- 糸井
- 演出じゃないよ。
だって、そういうことの延長上に、
あの、ジョンを撃った男がいるわけだからさ。
ダコタアパートの前でジョンに声をかけて
うしろから撃った人が。
- 乗組員A
- マーク・チャップマン。
- 糸井
- そう。彼もおんなじなんじゃない?
ジョンに声をかけて、たぶん、ジョンは、
嫌な顔して足早に立ち去ったりせずに
「やあ」くらい言ったんじゃない?
そこで、撃たれてしまった。
- 乗組員B
- あああー。
- 糸井
- そういうところもぜんぶジョンなんですよ。
あんなに有名で、別次元の存在なのに、
街をふつうに歩いてる。
日本にも来てたでしょ。
軽井沢とか、六本木の喫茶店にも
よく来てたらしい。
- 乗組員C
- 銀座とか、箱根にも
「ジョン・レノンがここに座った」っていう
お店がありました。
わたしも、その席に座ったことあります。
- 乗組員A
- どこかの店で、ジョンがつかった灰皿が
そのままの状態で飾ってあるのを見たことある。
- 糸井
- だからその、なんていうのかなぁ。
とんでもない存在になっちゃっても
ふつうに生活してる感じ、
その無限の弱さを感じさせる
ジョン・レノンっていうのが、
いつまで経ってもずっとしびれるわけですよ。
で、そういうところはジョンだけじゃなく、
他のメンバーにもあってね、
みんなどこかに、油断を抱えているというか、
当たり前の生活や弱さを内包してる、
そのすごさだよね。
- 乗組員B
- 「生活」っていうキーワードは
糸井さん、よくつかってますよね。
- 糸井
- もう、普段から言ってることのなかに、
どんだけビートルズの
影響があるかっていうことですよ。
こうやってしゃべってると
いろいろつながってることに気づくけど、
「弱さ」と「生活」すら、
ビートルズから受け取っている、
みたいなことだってあるかもしれない。
- 乗組員A
- なるほど。
- 糸井
- ポールだってさ、いまや爵位とかもらって
浮世離れしてる感じだけど、
任天堂の宮本さんに
サインもらったりしてるからね。
- 乗組員C
- えーー!
- 糸井
- まあ、有名な話ではあるけど、
ポールの子どもがマリオの大ファンで、
日本でポールがコンサートを開いたときに
宮本さんが呼ばれて、
一緒に食事をしたのかな?
で、子どものためにサインをした。
- 乗組員C
- へーーーー。
- 糸井
- すごいだろう?
- 乗組員A
- あ、「オレ」のことになってる。
- 乗組員B
- 「オレ肯定」になってる。
- 糸井
- ほら、いわんこっちゃない、
ビートルズを語るとこうなるんだよ。
こういう、ほかにはない価値観のあるバンドが
無数のすばらしい曲をつくってて、
無数の実験をしてて、
無数の運が作用するなかで、
無数のやけっぱちを見せてくれて、
無数の歓声に対して、普通の努力をしてた。
それもビートルズの特長なんだけど、
あまりに人気があったから、
ふだんの姿とかもしょっちゅう撮影されて、
楽屋のやり取りとか、
記者会見とかも世界中に届くわけです。
それは、『ハード・デイズ・ナイト』っていう
映画にもなってるし、
ニュース映像にもなっているし。
- 乗組員C
- ファンに追いかけられるところとか、
記者会見の様子とか、見たことあります。
- 糸井
- うん。だから、アーティストとしての
すばらしい面と、ふだんの顔と、
両方をぼくらは見ることができた。
たとえば、ツアーの移動中なんかは
若者っぽいバカな会話をしているのに、
記者会見ではテレビカメラや
新聞記者に囲まれて、
どんどん質問されるわけだよね。
で、前もって打ち合わせなんか
してるわけないのに、
世界中のメディアからの質問に
20代の青年がジョークや皮肉を交えながら、
ぽんぽん答えていく。
それはもう、かっこいいんですよ。
もうクリエイティビティの
マグマみたいなものを感じるんですよ。
ふざけ方もそう。まじめになり方もそう。
それを様式にして芸術にする方法もそう。
エリザベス女王の前で演奏するときに
「安い席の人は拍手をしてください。
それ以外の人は宝石を
ジャラジャラ言わせてください」
なんていうジョークを言ってみたり、
かと思うと、ジョンとヨーコで、
「ベッドイン」なんていう
パフォーマンスをして、
自分たちの意見を主張してみたり。
もう、自由なんですよね、いつも。
だから、ぼくがいまでも、
ひとつの快適な場所に落ち着かずにいたいと
思い続けているのは、ビートルズのせいですよ。
- 乗組員A
- ああ。
- 糸井
- ものすごく大きくなっても、
大きくなってしまった自分たちの存在を
遊び尽くしているビートルズを見てきたから、
何年経っても、大きなチームになっても、
もっともっと何かしていたい。
だから、もしもいまこの話の流れの中で
「なぜ、ほぼ日は上場したんですか?」
って質問されたとしたら、
ひょっとしたらぼくは
「もしもビートルズがいなかったら
上場しなかったかもしれない」って
答えるかもしれない。
それは、大げさなことじゃなくて、
どこかやっぱりほんとうですよ。
むやみに大きくなって、
たくさんの人に知られる存在になる
っていうのは嫌なことじゃないんだ。
大きくなったからこそできることもあるし、
そうなったときにはじめて見つかる
おもしろいこともある。
それは、ビートルズから学んだことです。
- 乗組員A
- なるほど。
- 乗組員B
- なるほど。
- 乗組員C
- なるほど。
- 糸井
- いまの自分の小さな居心地のよさだけを
守るようなことじゃなくて、
おもしろいことにどんどん向かっていく。
リンゴ・スターがただふざけて
ステップを踏んで冗談を言ってるだけ、
みたいなことまで含めて、
人が人の前に自分たちを
思いっきり表現してさらけ出して、
それを人がもう一回おもしろがるっていうのは、
もう、人類の資産の再確認ですよ。
あっ、いま、すごくおおげさに言ったけど、
そういうことなんじゃないか。
- 乗組員A
- よっ。
- 乗組員B
- じょん・れのん!
- 乗組員C
- りんご・すたー!
- 糸井
- うむ。だからね、
ビートルズをあんなに好きだったのなら、
大きさとか新しさとかおもしろさに関して、
ぼくは、守りに入ってはいけないんですよ。
少年時代に「わぁ、すごい!」って思った感動を
いまでも肯定したいって、思うんですよ。
「世界一になるんだ!」なんて
言えなかったし、言わなかったけど、
その可能性の出口なり入口なりを
ふさがない自分でありたかった。
‥‥ああ、いいこと言ってるねぇー。
こんなこと言える人は、なかなかいないよ?
- 乗組員A
- よっ!
- 乗組員C
- ぽーる・まっかーとにー!
- 乗組員B
- じょーじ・はりそん!
- 乗組員A
- ぶらいあん・えぷすたいん!
- 糸井
- おおもとは、
ただの「‥‥好きっ!」だったのにねぇ。
年取るにつれて、自分の考えも
やっぱり育っていくんですね。
若いときに、これは言えなかったなあ。
‥‥ね、曲のことをひとつも言わなくても
こんなにしゃべれるんだよ。
(つづきます)
2017-09-13-WED
ほぼ日手帳2018の
The Beatlesカバー発売を記念して
10月5日(木)19時より、一夜限りの
トーク&ライブイベントを開催します。
ゲストに迎えるのは、
現存する日本最古のロックバンド
「ムーンライダーズ」の鈴木慶一さん。
ゲーム「MOTHER」の音楽を手がけ、
ほぼ日でも何度も登場していただいていますが、
今回、久しぶりに「ビートルズ」をテーマに
糸井とおしゃべりにやってきます。
そして今回は、ビートルズ気分を盛り上げるべく
六本木のライブハウス
「ABBEY ROAD」を貸し切りに!
実はここは、毎晩のように
ビートルズのトリビュートバンドによる
生演奏が聴ける、
ビートルズ専門のライブハウスなんです。
トークの合間には、ビートルズナンバーの生演奏を
たっぷりとおたのしみいただきます。
着席スタイルなので、食事やドリンクを楽しみながら
ゆったりとお過ごしください。
演奏するのは、「ザ・パロッツ」のみなさんです。
彼らは、イギリスのリバプールで開催されている
世界最大のビートルズフェスティバルに出場したり、
来日中のポール・マッカートニーから
プライベートパーティーに招待され、
本人と共演したこともある実力派バンド。
何の曲を演奏してくれるのかは
当日のおたのしみに!
ビートルズファンの方はもちろん、
「ひさしぶりにライブでも行ってみようか」という方や
「ビートルズのことは、あまり知らなくて」という方も、
みんなでいっしょに、
「ビートルズ・ナイト!」をたのしみましょう。
※申込み受付は終了しました。
●出演
鈴木慶一(ムーンライダーズ)
ザ・パロッツ
糸井重里
●日時
2017年10月5日(木)
18時開場
19時開演(21時終演予定、22時閉店)
●会場
ABBEY ROAD(アビーロード)六本木
東京都港区六本木4-11-5 六本木ビル アネックスB1F
・東京メトロ日比谷線・都営大江戸線「六本木駅」
(6番出口・7番出口)より徒歩3分
・東京メトロ千代田線「乃木坂駅」
(3番出口)より徒歩8分
●席数
80席(全席指定)
※6歳未満の方はご入場いただけません。
※全席指定
(お席はお選びいただけません。
2名様以上でお申込みの方もできるだけ
お近くでご覧いただけるようにいたします)
※会場内は禁煙です
●価格
6,000円(税込み)
※このほか、当日は会場にておひとり様2品
(1ドリンクと1フード、または2ドリンク)の
ご注文をお願いいたします。
ご飲食代の総計に15%のサービス料がかかります。
●販売方法
抽選販売
※おひとり様最大4枚まで申し込みが可能です。
●抽選販売受付期間
2017年9月12日(火)午前11時〜9月14日(木)午前11時
●支払い方法
当日、会場受付にて
現金またはクレジットカード(Visa、Mastercardのみ)で
お支払いください。
※領収書が必要な方はお申し出ください。
●その他
当日はカメラマンが対談、ライブの様子を撮影いたします。
「ほぼ日」はじめ他メディアに掲載の可能性がありますので
あらかじめご了承ください。
●お申込み~抽選~当日までの流れは
以下となります。
※申込み受付は終了しました。