HOBONIKKAN ITOI SHINBUN
味覚の魔術師と言われ、
世界の名だたる賞を受けてきた
「ミュゼ ドゥ ショコラ テオブロマ」の
オーナーシェフである土屋公二さんが
特別なクッキー缶をつくってくださいました。

テオブロマのチョコレートはすでに広く知られ、
おなじみのみなさんも多いと思います。
これまでテオブロマのチョコレートを食べて
「なぜこんなにおいしく感じるのだろう?」と
思ったことがあったとしたら――、そんな方には
このクッキーをいっそう食べていただきたいのです。
この缶の中にはテオブロマのお菓子が
おいしい理由が詰まっているから。

さぁ、土屋さんご本人にうかがってきました。
なぜ、テオブロマのお菓子はおいしいのですか、と。
> 土屋公二さんのプロフィール

苦くないとぼくの味じゃない

ほぼ日
カカオニブがちりばめられたクッキー
「フェーブドカカオ」は、
食感もたのしいですね。
土屋
ホロホロしているでしょう?
ほぼ日
でも、やっぱり苦いとは思わないかも。
ひたすらおいしいです。
土屋
それは、クッキー自体を甘めにしてるから。
そこに苦いカカオニブをつけた、
というバランスです。
ちょうどいい感じじゃないですか?
ほぼ日
あ、それです!
「ちょうどいい感じ」です。
その「ちょうどいい感じ」を見つけることが
おいしさの秘密なでしょうか‥‥?
土屋
丸いクッキーは
「スペキュロス」といって、
ベルギーの伝統的なクッキーです。
ヨーロッパに行くと
当たり前にあるお菓子なんですが、
これを日本で製造しているところは
ほとんどないんじゃないでしょうか。
香辛料がいっぱい入ってる、
いわゆる大人の味です。
ほぼ日
これ、ちょっとだけ
味が‥‥あのお菓子に似ています。
喫茶店でコーヒーによくついてくる、あの‥‥
土屋
「ロータス」ね、うん。
あれは大量生産品だけど、
よくできた味だと思います。
ほぼ日
「ロータス」はガサっとした食感が
カジュアルでいいんですが、
こちらはもっとサクッとしてて、
香りが高くて甘さがしつこくない。
味の系統は似ているものの、違います。
おいしいなぁ!
土屋
そして色が明るいのは、
「マカロンラスク」。
これが缶に入ってると、たのしいよね。
ほぼ日
私、これ好きな味です。
マカロンでイメージするより
味がやさしくて柔らかい気がします。
土屋
マカロンってね、けっこう幅広いんですよ。
いま日本でみなさんが食べているマカロンは、
パリの洗練されたものです。
でもね、フランスでは、
こういう丸い駄菓子はだいたいなんでも
マカロンっていうんです。
ほぼ日
駄菓子なんですか。
土屋
駄菓子です。
大きさもバラバラだったりしてね。
この「マカロンラスク」は、
乾燥してて硬めでしょう?
ほぼ日
パリッとしてますね。
色で味が違うんですか?
土屋
すばらしいですね、一緒です。
ほぼ日
(笑)すみません。
駄菓子だと思うと、
懐かしい気持ちになります。
缶の中身がぜんぶヘビーじゃないのもいいですね。
土屋
レモン風味の「サブレ オ シトロン」もどうぞ。
うちはあまりこういう味を
つくってなかったんですけど、
去年、社員旅行で香港に行って、
「レモンクッキーってうまいな」
「じゃあつくろうよ」
ということになって、やってみました。
ほぼ日
「サブレ オ シトロン」は爽やかで、
試食の際に「ほぼ日」のみんなが
大好きでした。
香港で出会った味を
再現しているのですか?
土屋
ううん。
ヒントをもらっただけで、ちがう味です。
じゃ、王道の「セックショコラ」をどうぞ。
ほぼ日
「セックショコラ」はさきほど
マネージャーの渋谷さんが
テオブロマの人気商品だと
おっしゃっていたものですね。
でもこれは「チョコレートのクッキー」を
想像して食べると、驚くくらい苦めです。
土屋
おっしゃるとおり。
うちのお店はクッキーだけでなく、
チョコレートケーキも苦いんです。
よそでお菓子の監修をすることもありますが、
そういうときも苦くつくります。
苦くないと、ぼくの味じゃないと思ってる。
ほぼ日
そうなんですか。
土屋
ぼくらみたいな世代は、
「チョコレートケーキ? いらないよ」
と思っている人が多い。
なぜならやっぱり、甘いからです。
ほぼ日
言われてみれば、チョコレートケーキって
どんどん食べられる気は、
ちょっとしないですね。
土屋
でしょう。
でも、この苦さだったら食べられると思う。
お酒飲みながらでもいけるかもしれない。
ほぼ日
たしかにお酒とも合いそうです。
苦味強めがおいしさの秘密‥‥? 
この苦味は、カカオなんですか?
土屋
そう。
カカオをちゃんとおもてに出しています。
ほぼ日
食べれば食べるほど癖になる苦さというか、
からだにスッと入ってくる甘さというか。
別のチョコレートクッキーを食べたときに
「やっぱりあれが食べたいな」と
思ってしまう味だと思います。
土屋
いちど食べちゃうとそうなりますね。
じゃあ「クロッカン」もどうぞ。
ほぼ日
おいしさの答えがでないままに、
次々と食べてしまいます。
「クロッカン」はメレンゲですね。
歯ごたえがザクザクしています。
土屋
硬いでしょう? 
以前、これをちょっと柔らかくして、
お店に出したことがありました。
そしたらお客さんに
「あの硬いのがいいんだ」って怒られた(笑)。
ほぼ日
ああ、わかります。
歯ごたえを求めて食べるお菓子って、
ありますから。
しかも、味も、
噛むほど口にひろがっておいしい。
渋谷
私は「テオブロマ」に入るまで、
メレンゲのお菓子があまりおいしくないという
先入観がありました。
だからあまり好んで食べなかったんですが、
はじめてこの「クロッカン」を食べて、
「あ、こんなおいしいのがあるんだ」
と思いました。
いまではメレンゲ、けっこう好きです。
土屋
じゃ、この缶の本命でもある
「ショコラフランボワーズ」のジャムを
ナイフのクッキーにつけて食べてみましょうか。
ほぼ日
いよいよ大本命のチョコジャム!
あ〜。チョコレートもおいしくて
フランボワーズの香りが鼻に抜けていく‥‥。
しかしこれ、
ジャムと言うものか、なんなのでしょうか。
土屋
正確に言うと、
チョコレートのジャムってつくれないんですよ。
ジャムとはフルーツを煮込むものだから。
チョコレートは煮込んだら焦げるだけ。
だから、このチョコレートのジャムは、
フルーツのジャムをベースに、
チョコレートを入れたものなんです。
ほぼ日
しかし、その調合がかなり難しそうですね。
土屋
商品にするまでは、けっこう時間がかかります。
これ、クッキーだけじゃなくて、
みなさんのおうちにあるバゲットに
塗るのもいいかもしれないね。
ほぼ日
あー! いいですね。
やりたい。
土屋
ナイフのクッキーにつけるだけじゃなく、
塩味のクッキーに塗ってもいいんじゃない? 
「サブレサレ」で試してみましょう。
ほぼ日
この組み合わせは新鮮です。
うわ、おいしい!
土屋
「サブレサレ」は2種類とも甘くないんです。
どちらかと言うとお酒のつまみのようなイメージ。
パプリカの「ポワプロン」と、
バジルの「バジリック」があります。
ほぼ日
これ、お酒飲みながらだと、
無限に食べてしまいそう‥‥。
なんだろう、すべてのクッキーが
テオブロマさんの味なのに、
おいしさのポイントがぜんぶ違う!
(明日につづきます)
2020-10-08-THU
イラスト:丸山素直
取材・文:中川實穗

テオブロマといっしょにつくった
缶入りクッキーを販売いたします。

チョコジャムのクッキー缶

3,942円(税込・配送手数料別)

テオブロマの土屋シェフは
チョコレートの世界でその名を知られています。
しかし、チョコレートだけでなく焼き菓子も、
ひとつひとつに工夫が凝らされていて、
とてもおいしいのです。
そのおいしさをすこしずつ食べ比べて、
たのしみつくしたい! 
そんな願いを叶える9種類のクッキーがつまった
クッキー缶がやってきます。
しかも、特製のフルーティーなチョコジャムが
クッキーといっしょに缶に入っています。
これはほぼ日とのコラボレーションの特別仕様。
10月13日の販売開始をおたのしみに。