“ガーゼとパイルの二重織り”で
親しまれてきたやさしいタオルが、
“ダブルガーゼとパイルの三重織り”
に生まれかわりました。
2003年にデビュー、
2010年秋に、工場と織機をかえ、
2016年秋には、パイルの糸を
現在の「ヴィーナスシード」にマイナーチェンジした
「やさしいタオル」。
2019年夏のこのリニューアルは、
いわばフルモデルチェンジ。
「構造」そのものの変革です。
ダブルガーゼ、ということばは、
洋服の生地や、家庭用の布製品で
おなじみのかたもいらっしゃると思います。
赤ちゃんの肌着に使われることの多いガーゼですが、
このごろは、ダブルガーゼもずいぶん
一般的になっていますよね。
ガーゼを重ねることで、中に空気がふくまれて
ふっくら感、保温性が増し、
糸量が増しますから、保水性も高い。
濡れたからだや髪をはやくかわかします。
もちろん、けっして、いままでの
「やさしいタオル」が不満ということじゃないのです。
でも「もっと、やさしいタオル」が
つくれたらいいのに、ということを、
やさしいタオルチームのめんめんは、いつも思っていて、
製造をお任せしている今治のタオルメーカー、
創業100年を迎える藤高(ふじたか)の
みなさんに会うたびに、相談をしてきました。
そうして、かれこれ3年ほど前から開発をはじめ、
いくつか試作をしたなかで、
とびぬけて快適だったのが、この三重織りだったのです。
ダブルガーゼ、といっても、
同じガーゼが2枚重なっているわけではありません。
表面に使っているガーゼの
半量の糸で織ったガーゼを、
パイルとの間に織り込んでいるんです。
ここには「やさしいタオル」ならではの
開発秘話がありました。
「やさしいタオル」をリニューアルするとき、
通常のパイルの密度で二重織りのサンプルをつくったら、
「うんと硬い」ものができてしまったことがあります。
そこで、表に出るパイルの糸を半分に減らし、
「地糸」といい、地織のところに挟み込むことにしました。
そのことでパイルが抜けやすくなるのを防ぐ、
という効果があったのですが、
逆にいうと、その1本は「タオルの中で余っている糸」
でもあったわけです。
宇都宮さんは、「その糸が使えないかな?」と考え、
それを経糸(たていと)にして、
あらたに緯糸(よこいと)を足して平織りにしたところ、
ふわふわした「もう一層」ができたのです。
もちろんいきなり完成、ということはありません。
宇都宮さんたちは「これではまだだめです」と、
何度も何度も改良をかさねました。
表情が硬くならないようなくふうや、
パイルが抜けないギリギリのところを狙って、
完成までには3年の歳月を必要としたのでした。
織り地を重ねるタオルは、
「接結糸」という、それぞれの生地がずれないようにする
接続のための糸をタテに結びますが、
三層を一気につなげてしまうのではなく、
一層のガーゼと二層のガーゼ、
二層のガーゼとパイル、
その接結糸は、別々で、
間隔と場所を、微妙にかえています。
そうすることで、使ったとき、微妙に「ゆらぎ」が出て、
よりふわふわした印象を出すのです。
これも、動きすぎては、生地が分かれた感じになるので、
一体化しつつ、動く、そんな微妙なバランスです。
さらに、織りで柄を表現する
(チェックなどの)デザインと、
プリントタオルとでは、接結糸の間隔を変えて、
ガーゼ面で目立ちすぎないように工夫をしています。
いやはや、こまかい工夫がされている!
「では、三重織りのやさしいタオルは、
いままでの二重織りに比べて、重くなったの?」
はい。二層目のガーゼをつくるため、
緯糸を足したぶん、ほんのすこし重さは増えています。
でも、もともと「うんと軽い」タオルですから、
サンプルを使っているかぎり、
気になることはありませんでした。
さらに! 三重織りのやさしいタオルは、
ガーゼ面も、すこしやわらかくなっています。
かなり細かな解説になりますが、
以前のやさしいタオルは、
パイル緯糸に20番単糸、
ガーゼ緯糸に16番単糸を使っていました。
糸の番手は「数の多いほうが、細い」ので、
パイルのほうが、細い糸を使っていたわけです。
今回、糸の太さは、
パイルの緯糸が16番単糸、
ガーゼの緯糸は20番単糸。
つまり、逆転させています。
それには2つの理由があり、
パイルの緯糸を細くすることで密度を上げ、
さらに全体の密度も10%ほど上げることで、
パイルの抜けを少なくすること。
そして、ガーゼ面の軽量化です。
中に1層ガーゼが増えたことで上がる全体の重量を、
細番手の糸にすることで軽くしました。
もちろん、ダブルガーゼにしたので、
すこし下がった密度は、フォローできているというわけです。
結果、パイルはしっかりふんわり立ち上がり、
ガーゼは、ほんのりやさしくなったというわけです。