- ──
- 西條さんが「ふんばろう」の活動のなかで
「反省会をしない」と言っていたのも
テニスのご経験を踏まえたもの‥‥ですか?
- 西條
- そうですね。ただ、高校・大学のころは
かならず「反省会」をやっていたんです。
- ──
- 西條さんが反省‥‥されてたんですか。
- 西條
- 部の伝統的な習慣だったので、
当時は
反省会自体は疑いなくやっていました。
ただ、どんなにがんばっても
「まだ声出しが足りない、
まだまだ、○○が足りていない!」
と叱咤されるばかりで。
- ──
- 勝つための「方法」を探る会ではなく。
- 西條
- なので、僕が上の学年になったときは
できるだけ、
建設的な場になるよう心がけてました。
- ──
- なるほど。
- 西條
- ほら、反省会というと、どうしても
「できなかったこと」に
クローズアップしがちじゃないですか。
そこに潜在的な違和感があって。
- ──
- ええ、ええ。
- 西條
- もちろん、それまでも
反省会のあとに
みんなでごはんを食べに行ったりして
それなりに
バランスは取っていたんですけどね。
- ──
- つまり、反省だけで終わらないように
工夫してたってことですね。
- 西條
- よくなっているところもあるわけですから、
そこを認めた上で、改善点を探る。
- ──
- 西條さんの話をお聞きしていると
「いいところを探す」
「ミスや失敗をクローズアップしない」
ということが
重要なんだろうなと思いました。
- 西條
- まずは、
過去の失敗をほじくり返すんじゃなく、
褒められる部分を探す。
そこに意識を向けたほうが、
がぜんエネルギーが沸いてきますから。
- ──
- そっちのほうが前向きになれそう。
- 西條
- とくに「ふんばろう」のように
「完全無給のボランティア」の場合には
「気持ち」が、すべてなんです。
- ──
- そうか‥‥ただ、
それでも反省しなければならない場面も
あると思うんですけど。
- 西條
- ええ、ありますよね。
もちろん、明らかに良くないことについては、
すぐに指摘します。
とくに、子どもがよくないことをしたら、
それはダメだよってすぐに教えないと、
あとで怒られたって
いったい何が悪いのかわからないですし。
- ──
- ああ、そうですよね。
- 西條
- でも、がんばって取り組んで、
内容もまずまず及第点だったとしても、
完璧なんてことは、ありえません。
もっとこうしたほうがよいってことは
かならず見つかるんです。
- ──
- 人間のやることですものね。
- 西條
- そういうときは
「反省するのはあとまわし」にします。
- ──
- あとまわし?
- 西條
- もともとのモチベーションが高ければ、
反省会などしなくても
「どうすれば
もっとよいパフォーマンスができるだろう」
「もっとこうすればよかったかもな、俺」
と自発的に反省します。
- ──
- あー‥‥そうかも。
素直に自分をかえりみられるというか。
- 西條
- 建設的になれるんですよ。
- ──
- 逆に、イヤイヤやってることだと‥‥。
- 西條
- なかなか、自分から反省しませんね。
だから、まずは、
がんばって活動したメンバーどうし、
ねぎらいあって、
次へのモチベーションを高め、
少し時間が経ってから、
「今回は、とてもよかったけど、
あの場面はこうしたほうがさらによかったね」
というふうに「反省」すれば、
やる気を失わず、
改善につなげていけると思うんです。
- ──
- そういう意味で「反省はあとまわし」。
- 西條
- 反省を有効化するための「方法」です。
ひとつ、
反省とセルフコントロールという点で
興味深いのは、
マイケル・ジョーダンのエピソード。
- ──
- 「神」と呼ばれた、あの、バスケの。
- 西條
- 本で読んだのですが、マイケル・ジョーダンは
「優勝のかかったフリースロー」
みたいな場面では
何千回、何万回も練習してきたシュートを
いつもどおりに打つだけで
「結果はまったく考えない」と言うんですが‥‥。
- ──
- ええ。
- 西條
- 仮に外したとしても「ぜんぜん反省しない」
とまで、断言しているんです。
- ──
- え、ふつうの人なら「猛省」しそう。
- 西條
- でしょう?
「何やってるんだ、俺は!」
「次こそ!」みたいに、ですよね?
それまでは、かくいう僕も
自分なりに「反省」していたんですけど、
この話を読んでからは
かえって逆効果だと気づきました。
- ──
- どうしてですか?
- 西條
- 失敗の「悪いイメージ」を
繰り返し、
自分に植え付けることになるからです。
- ──
- あー、イメージトレーニングの逆で。
- 西條
- ですから、真面目な選手ほど
何度も何度も、繰り返し「反省」することで
同じように大事な場面で
また、同じようなミスをしちゃうんです。
- ──
- 悪いイメージがこびりついちゃって。
- 西條
- 逆に、僕の経験から言っても、
精神的に強い選手って、
試合に負けても
けっこう「あっけらかん」としている。
実は、あまんり気にしてないというか、
「負けちゃったけど、
やるだけやったからしかたねーかー」
みたいな。
- ──
- そうなんですか。
- 西條
- もちろん、技術的な面については
改善を繰り返さなければ、上達しません。
何が言いたいかというと
つまり「反省」もひとつの「方法」なので
無闇やたらにすればいいってものではない、
ということなんです。
『スラムダンク』で言えば‥‥。
- 西條
- 「仙道彰」のようなイメージですかね。
- ──
- なるほど。
技術は追究しても、結果は反省しなさそう。
でも、今みたいな考え方って
すごく「構造構成主義的」な感じがします。
- 西條
- そう、構造構成主義の方法の原理では
「ベストな方法」は
「状況と目的」によって決まります。
ようするに「反省する」という「方法」も
「状況と目的」を見定めないと、
かえって事態を悪くすることがあるんです。
- ──
- と、そのような感じで、
大学で学び、テニスで実践した「心理学」が、
「ふんばろう」の運営にも役立っていった。
- 西條
- はい。「ふんばろう」を立ち上げてから、
「リーダーシップ」についての講演を
頼まれることが多くなったのですが、
テニスの部長をやっていたという「経験」に、
心理学という「学問」が加わってなければ、
僕は、ちゃんとしたリーダーシップを
取れていなかったかもしれません。
<つづきます>
2014-09-29-MON