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はー‥‥。
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瀧本 |
これまで「スペースシャトル」の写真って
いいなあと思えるものが
あんまり‥‥なかったんですよね。
僕も、自分の作品のプロジェクトとして
やろうと決めたときに
いろいろ資料として探してみたんですけど、
なかなか。
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── |
たしかに、いわゆる記録画像と言いますか
説明的な写真がほとんどで
この『LAND SPACE』みたいに
「作品」としての「スペースシャトル」は
はじめて見るかもしれません。
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瀧本 |
撮りにくい被写体なんです。
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── |
それは、どういう意味で‥‥ですか?
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瀧本 |
もう、そのまんまの意味として。
まず、ケネディ宇宙センターに入るのが大変。
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── |
あ、なるほど。
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瀧本 |
それに、ようやく許可が出たとしても
打ち上げって、しょっちゅう延期になるし。
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── |
つきものですよね、ロケットの打ち上げには。
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瀧本 |
はじめて撮影に行ったときは
たしか打ち上げが「7回」くらい延期になって、
結局、撮影できずに帰ってきたんです。
それで、すっごく悔しい思いをして。
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── |
撮影するためにアメリカにまで行って、
「撮れなかった」って、
なかなか、ないことですよね、きっと。
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瀧本 |
でも、そのときに
「もう、スペースシャトルは
個人的な作品としてきちんと撮っていこう」
と決めたんです。
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── |
もともとお好きだったんですか?
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瀧本 |
ええ‥‥はい、好きでしたね。
スペースシャトルの「初飛行」は
ぼくが小学生のときで
「コロンビア」が宇宙に行ったんですけど
そういう理由もあると思います。
当時の男の子は‥‥好きじゃないですか?
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── |
はい、僕は
「スペーシャシャトルの筆箱」と
「宇宙ステーションの下敷き」を
使っていました。
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瀧本 |
そういう世代ですよね(笑)。
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── |
はじめてスペースシャトルを
見たときのことって、覚えてらっしゃいます?
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瀧本 |
たぶん、ニュース映像か何かでしょうね。
何の予備知識もないままに
あの「ヒコーキのかたち」をしたものが‥‥。
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── |
宇宙へ飛んでいった。
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瀧本 |
そう、たしか、いちばんはじめのころって
外部燃料タンクが「白かった」んですよ。
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── |
え! 赤銅色のイメージしかないですけど!
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瀧本 |
そうそう、内部燃料の温度上昇を防ぐためと
もうひとつ、
真っ白いほうが「見栄え」がいいということで
塗装していたらしいんです。
塗料代や重量がかさんでしまうので
のちに、塗らなくなったみたいですけどね。
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── |
知らなかった‥‥。
でも、スペースシャトルの機体自体は白ですし、
2本のロケットブースターも白だから、
外部燃料タンクが白だったら「全身白」ですね。
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瀧本 |
そう、その真っ白な物体が、宇宙へ飛んで行く。
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── |
よりいっそう、かっこよさそう。
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瀧本 |
しかも、それだけじゃなくて、
役目を終えたら「地球に帰ってくる」わけです。
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── |
僕は興味を持つのが遅かったのか、
物心ついたときには
もう、スペースシャトルは飛んでいたんですが
たしかに初飛行を目にしたら
「わあ、未来が来た!」って感じでしょうね。
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瀧本 |
そう、スペースシャトルが登場するまでは、
宇宙ロケットとといえば
ミサイルみたいな形ばかりでしたからね。
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── |
あの‥‥スペースシャトルのデザインって、
「かっこいい」じゃないですか。
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瀧本 |
夢があると思います。子どもの夢、というか。
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── |
以前、シャトルに搭乗したことのある
星出彰彦宇宙飛行士に
取材させていただいたことがあるんですが
星出さん、そのとき
「スペースシャトルがかっこいいこと」は
相当、宇宙開発に貢献している‥‥と。
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瀧本 |
宇宙のファンを増やしていますものね。
ただ、宇宙船としては、
欠点の多い機体だったらしいですけど‥‥
そこに愛着を感じたりもして。
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── |
宇宙へ飛んで行って帰ってくる、という
設計思想も、
機体をリサイクルしてコストを下げようという
思惑だったはずなのに、
結局、メンテナンスとかを考えると
ロシアのソユーズみたいに
使い捨てのほうが安上がりだった‥‥とか。
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瀧本 |
スペースシャトルって
本当にボロボロになって帰ってくるんです。
大気圏に突入するときには
機体の温度が、
摩擦で「1400度」くらいになるらしくて
耐熱タイルが激しく損傷します。
写真集のなかに
「機体に付箋がつけられている写真」が
あると思うんですが‥‥。
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