平野レミさんと、和田誠さんのことを話そう。 平野レミさんと、和田誠さんのことを話そう。
イラストレーター、映画監督、
グラフィックデザイナー、そしてエッセイストとして、
さまざまな活躍をした和田誠さんが
2019年10月に逝去されました。

糸井重里もほぼ日も、
和田さんにはとてもお世話になりましたが、
思い出を大きく語ることをしませんでした。
ご家族をはじめまわりのみなさんもほとんど、
そうしていたのではないかと思います。

あんなに偉大な仕事を数多くのこし、
憧れている人も感謝している人も山ほどいるのに、
みんなを大袈裟にさせない「和田さん」って
いったいどんな人だったの? 

いま、たっぷり話したいと思います。
平野レミさんといっしょに、和田誠さんのことを。
最終回 図書室からこんにちは。
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糸井
『話の特集』で、和田さんは
アートディレクションもしたし、
人を口説くところまでやってましたね。
タダで仕事するから好きなことをやらせてくれ、
という条件だったと聞きました。
レミ
お金は出さなくていいから、
口出させてくれってね。
糸井
すごいですよね。
好きなことだけやって、
徹底的に好きなことを追求した。
お金にはまったく頓着しない。
通帳もさわったことないんじゃないかな。
レミ
通帳は見たことないよ。
銀行もたぶん行ったことないと思う。
人としていちばん
うらやましい生き方だと思うんですよ。
ガマンしないで、自分の好きなことを仕事にして、
人に喜ばれて、さらに
世の中にその爪痕を残せるなんて。
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レミ
好きなことだけして生活になってたから、
よかったね、和田さんは。
糸井
自分の作品以外でも、
人を発見したり応援したりして、
いろんな爪痕を残しましたね。
最後まで新進気鋭のイラストレーターの作品を
事務所に飾ってらっしゃいました。



和田さんは、みんなに自信をつけさせる人だった。
応援された人は、みんな憶えてますよ。
そんなことは表彰されたりしないから
わからないだけで、
ひとりひとりは感謝してると思います。
そうなんですよね。
受賞もよく断ってたし、
仕事人としてのドキュメンタリー取材も
基本的に断っていました。
糸井
和田さんは結局ずっと現役で、
政治家にも先生にもなっていないでしょう。
なんだかそういうところも、
いま現役でいるみんなが真似しています。
でも、こういうこと言って持ち上げるのも
和田さんはいやがったかも(笑)。
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レミ
そうそう、そうそう。
そうなんですよね。
レミ
和田さんは、テレビのコマーシャルも
ぜったいに断ってたからね。
会社に連絡しても和田さんが断るもんだから、
うちに電話がかかってくるわけ。
私が出ると、奥からでっかい声で
「出ないよ」なんて怒ってました。
母にCMのオファーが来たときにも
「これはやっちゃだめ」なんて言ってました。
母も、ある意味、親父の作品だと思うんです。
レミ
そうそう。路線を考えて、
アドバイスしてくれました。
糸井
和田さんは変わった人だけど、
「人はこう思う」という、
常識のなんたるかをよく知ってるんですよ。
通に向けたような映画の話も、
一般に向けて書いている。
だからおもしろいんです。
‥‥ああ、やっぱり生きてるうちに、
こういう話をしたかったね。
レミ
ほんとにねぇー。
ほんとにねぇー。
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糸井
やっぱり、和田さんは
お見事だと思います。
こういうふうに亡くなりたい。
ぼくの夢は、自分のお通夜なんですよ。
自分のお通夜に、
出たり入ったりでいろんな人が集まって、
こんな話をずっとしていてほしいんです。



今日も「和田さんはあの賞をもらった」とか
そういう話はぜんぜんしないで、
ただの世間話をしてるじゃないですか(笑)。
これが延々つづくのがぼくの理想です。
「話がつきない生き方」
和田さんは、それにそうとう近いです。
あんなにおとなしかった人なのに。
ぼくの家には小さい子どもが3人いるんですが、
子どもからも父の情報が入ってくるんですよ。
糸井
へぇえ。
学校には「じいじの絵」がついた絵本が
たくさんあって、
たまにそれを持ち帰ってきて、
家で朗読してるんです。
何も教えなくても、
子どもたちの生きている世界の中に、
和田誠が入り込んでるんですよ。
これはなかなかなせる技じゃないぞ、と思いました。
糸井
ああ、すごいねぇ。
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以前、糸井さんに
和田誠の記念館や、そういうものについて、
ご相談させていただいたことがありました。
そのときに糸井さんは
「和田さんには証拠写真は要らないかもね」と
おっしゃったんです。
それよりは‥‥と、糸井さんがおっしゃった言葉を
ぼく、メモしてるんですが、
「図書室からこんにちは」
レミ
ああー、すごいすごいすごい!
「和田さんって、この感じじゃない?」
糸井さんにそう言っていただいたのが、
父の葬儀を含め、今後どうあるべきか考える上で、
大きな大きな指標になりました。
それが自分の子どもたちにも、
ちゃんとつながってて。
糸井
ほんとにそうだったね。
だって、そうなるに決まってるもんね。
「図書室からこんにちは」だね。
「図書室からこんにちは」の
やさしい感じが、父に合ってると思います。
レミ
すてき、すてき。(拍手)
すばらしいです、すばらしいです。
ほんと、ほんとに。
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糸井
みんなの好きな和田さんは、
博物館とかそういうところじゃないんだよね。
図書室にいっぱいいるんです。
レミ
うん。
絵本もそうだし、装丁もいっぱい。
たくさんいます。
糸井
いま図書室で
和田さんに出会っている人たちもいるし、
むかしむかしに応援してもらった人もいる。
たばこのパッケージや週刊誌の絵、
ポスターに親しんだ人もいるでしょう。
みんな、たくさんの和田さんとつながりがあって‥‥
そういう、レスポンスしたい方々にも、
なにか関われるしくみができないかなぁ。
「この連載読んでます」と言えば
絵ハガキをもらえたとか、
そういうことができないかなぁ。
レミ
和田さんからの絵ハガキ。
いいね。
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糸井
往復ハガキで
スタンプが捺されたものが来るだけでもうれしいよ。
いまどき往復ハガキって、わかるかな。
あ、そういえば、父は
自分のスタンプを手作りしてましたよ。
「WADA」という、
かっこいいスタンプです。
レミ
うんうん。
あるある。
糸井
そんなのがあるんですか。
WADAのアルファベットを
かっこよくフォント組みしてた‥‥
あのハンコ、たしか持って帰ってきたよね。
レミ
うん。うちにあると思うよ。
糸井
何に使ってたんですか?
たぶん趣味だと思います(笑)。
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糸井
(笑)‥‥かっこいいなぁ。
ネットでなんでもやる時代に、
わざわざハガキにするって、和田さんらしいと思う。
感想も書いてもらえるようだったら、
往復の「往」の部分に書いてもらう。
そしたら、レミさんも読めるから。
レミ
いいですねぇ!
ハガキはお父さんにぴったりです。
パソコンさわったことないですから。
糸井
宛名をレミさん宛にしてもらおうよ。
平野レミ様って。
レミ
ぜんぶ読ませていただきます。
たのしみだなぁ。
「ほぼ日手帳」の絵柄になった、
鳥との相性もいいですね。
レミ
あの鳥も、手紙を持ってるもんね。
読者へのおたより。
糸井
ジンとくるなぁ。
なんか、俺も欲しくなってきた。
いま書かないともらえないハガキだもん。
レミ
和田さんがよみがえっちゃいそうで、いいね。
とってもうれしいね。
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糸井
今日はありがとうございました。
たのしかったです。
レミ
とんでもない。
長いことありがとうございます。
たのしかったです。ほんとに!
糸井
また言うけど、ぼくはお通夜に
こういうことがやりたいんだよ。
最後まであこがれさせるなぁ、和田さんは。
レミ
お通夜ね。
今日が和田さんのお通夜ね。
ずっとずっとおしゃべりできて、
和田さんも笑ってるんじゃないかな。
ほんとによかった。
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(おしまいです。ご愛読、ありがとうございました!

往復はがきも、10月7日までお待ちしています)
2020-09-13-SUN
和田誠さんの「ほぼ日手帳2021」
2021年のほぼ日手帳のラインナップには
和田誠さんのイラストレーションをデザインした
カバー「時を超える鳥」と
weeks「星座を抱いて」が仲間入りしています。



「時を超える鳥」は、
和田さんが1977年より描きつづけている
「週刊文春」の表紙絵の第1作。
コンセプトは「表紙は読者へのおたより」です。
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「星座を抱いて」は、
2002年11月7日号の表紙絵。
和田さんが400年前の星座図を参考に
描いたものだそうです。
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和田誠さんのほぼ日手帳について、
くわしくは「ほぼ日手帳2021」のページ
ごらんください。

また、40年以上にわたって描かれている
「週刊文春」の表紙絵の初期作品をあつめた画集
『特別飛行便』も、ほぼ日ストアで販売しています。
※『特別飛行便』は完売いたしまして、再販売はございません。
(9月2日追記)
和田誠さんの
メッセージカードが届きます。
このコンテンツへの感想や、
和田さん、レミさんにむけたメッセージを
ぜひ「往復はがき」でお寄せください。
返信はがきに和田誠さんのスタンプ
(生前にご自身で作られたものと、
今回のために和田さんのイラストレーションで
和田さんのご家族とほぼ日が作成したもの、
ふたつのスタンプを捺します)
の返信はがきをお送りいたします。
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※往復はがきとは、
往信と返信がつながったはがきです。
必ず「往信」と「返信」の両方の宛先をご記入ください。
返信の宛先が未記入の場合、
スタンプを捺したはがきはお手もとに返ってきません。
ポストに投函するときには、
往信の宛名が外側になるようにふたつ折りにしてください。
往信はがきの裏面には、ぜひコンテンツの感想や
和田さん、レミさんへのメッセージをお書きください。
<ご注意>返信はがきの裏面には何も書かないでください。



※いただいたはがきの内容は、
平野レミさん、ご家族、ほぼ日が拝見します。
ほぼ日刊イトイ新聞で内容を公開することがあります。
返信はがきに記載された個人情報は、
はがきを返信するためにのみ使用します。



※返信はなるべくはやめに
お出しするようにいたしますが、
みなさまからいただく数によっては
時間をいただくことがあります。
また、郵便事情等による不配につきましては、
責任を負うことはできかねます。
どうぞご了承ください。
往信の宛先:

107-0061

東京都港区北青山2-9-5-9階

株式会社ほぼ日

平野レミ様



返信の宛先:

ご自身の住所、お名前



締め切り:

2020年10月7日消印有効