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谷川 |
自分では文章とか、
詩みたいなものは書かないんですか?
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松本 |
書いたことないですね。
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谷川 |
芝居はありますよね。
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松本 |
はい、あります。
(『花』
『メザスヒカリノサキニアルモノ
若しくはパラダイス』)
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谷川 |
お母さん、(工藤)直子さんの詩なんか読みます?
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松本 |
あー、あまり読まないですね。
照れくさいっていうのが、あって。
もちろんまったく読まないわけでは
ないんですが‥‥。
母は、ときどき、詩を送ってくるんですよね。
で、「どうやった?」っていう
目をしてこっちを見るので。
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谷川 |
ああー、そう(笑)。
照れない人だからね、あの人ね。
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松本 |
そうですね。
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谷川 |
俺なんか子どもに自分の詩読ませて
「どうやった?」って聞く勇気ぜんぜんないけどね。
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一同 |
(笑)
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松本 |
なんていうのか、
ふだんの母をよく知っていると、
やっぱり、少し照れくさいというか、
切り離してなかなか見られないのかもしれないです。
うーん、でも、読むと、
やっぱり、すごいなと思います。
ことばの使い方、谷川さんももちろんすごいですし、
ぼくなんかの作品で使うことばは、
うん、やっぱり、比べるとつたないと思いますね。
そんなに卑下するわけではないんですけど、
漫画って、すごくこう、多種競技っていうか、
やり投げもして幅跳びもしてみたいな感じなので、
ことばだけを取り出すと、やっぱり。
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谷川 |
ああ、なるほどね。
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松本 |
ときどき、漫画のなかでも、
絵だけで勝負できたり、
ことばだけでも強い人もいて、
そういう人のことばはやっぱり圧倒されますけど。
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谷川 |
古今東西の漫画家で、
好きな人っていうのはいますか?
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松本 |
はい。大友克洋さんとか。
あとやっぱり手塚(治虫)さんのも好きでしたし、
あとフランスにもすごく好きな作家さんがいて、
ニコラ・ド・クレシーっていう人なんですが、
フランスの人たちは、もう、
「絵」で漫画を描こうとするんですね。
これがそうとう強引で、なんていうか、
ものすごく難しいことをやっている。
彼なんかは漫画家とは少し違う、
それこそ詩人のような感じで。
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谷川 |
うん、そういうのでは、ぼく、
メビウスっていう人の作品を見たけど
あの人は、なんかすごいね。
現代詩みたいだななんて、思った。
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松本 |
ああ、メビウス、はい。
メビウスさんはぼくもすごく好きです。
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谷川 |
ちょうど祖父江さんが手伝ってくれて、
六本木ヒルズで『ピーナッツ』の展示を
やってたんですが、
『ピーナッツ』なんかは読みます?
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松本 |
はい、いいですよね。
谷川さんの訳もすごく好きです。
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谷川 |
ほんと。
あの人(シュルツ)はセリフというか、
ドラマ的な設定がうまいんですよね。
そこがふつうの漫画に比べると飛んでて、
すごくいいと思うんだけど。
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松本 |
そうですね。
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谷川 |
ジェームス・サーバーってどう?
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松本 |
あ、わからないです。
何を描かれた人ですか。
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谷川 |
アメリカの古い漫画家で作家です。
小説的なものも描くんだけど、
なんかユーモラスな文章も書くし、
ぼくは、絵がすごい好きなんですけどね。
文章も好きだけど。
『たくさんのお月さま』は、
今江祥智さんが訳してます。
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松本 |
へぇー、読んでみます、
ジェームス・サーバー。
古い方でいうと、ぼくは
ベン・シャーンっていう人が好きで。
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谷川 |
うん、いいですよね。
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松本 |
和田誠さんが
ベン・シャーンを好きだっていうのを
なにかで読んだことがあります。
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谷川 |
そうですね。
あと、粟津潔(あわづきよし)さんが
すごく影響受けてますよね、
ベン・シャーンの。
粟津潔さんってもう知らないか。
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松本 |
わからないですね、すみません。
ぼくは不勉強なもので、
絵描きの人とか、詩人の人、
よく知らないんですよ。
谷川さんは、この人がいたから
自分は詩人になったっていうような人は
いらっしゃるんですか?
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谷川 |
いや、ぼくも不勉強なんですよ。
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松本 |
(笑)
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谷川 |
他人の詩って、ほんとに読んでないんです。
みんな、詩の勉強をしてから
詩人になっているんだけど、
ぼくは友だちに誘われたから
詩書き始めただけで、
詩を書きたいなんて気持ち、
なかったんですよね。
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松本 |
ふーん。
(つづきます) |