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一冊の絵本をつくり終えてみて、
お互いに似ているところというか、
通ずるところを感じたりしますか?
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谷川 |
そうですねぇ、この絵を見てると、
なんか、どこか共通するものがあるから、
こういうふうな絵を描いてくれたんだな
っていうふうには思うんですよね。
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── |
なるほど。
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谷川 |
画面の割り方とかね。
だけど、まだはっきりわかんないですね。
だって、こんなにきちんと話したの
はじめてなんだし(笑)。
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松本 |
ほんとですよね(笑)。
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谷川 |
あとは、ネットでの知識しかないですから。
まぁ、『ピンポン』は読んだし、
映画も観ましたけどね。
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松本 |
ありがとうございます。
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谷川 |
あと、『Sunny』を読みはじめたぐらいだから。
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── |
大洋さんはいかがですか?
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松本 |
あの、谷川さんって、
好きなものがはっきりしてるじゃないですか。
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谷川 |
そうですね。
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松本 |
ぼく、そういうの、すごくないんですね。
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谷川 |
あ、ほんと。
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松本 |
雑なんですね。
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谷川 |
自分の好みはあんまりないんだ。
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松本 |
そうなんですよね。
だから、すごくそういう人に対して、
まぁ、コンプレックスとまではいかないけど、
うらやましいんです。
「ぼくはこのメガネが好きだ」とか、
「この万年筆が好きだ」とか、
きっちりしてる人が。
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谷川 |
ぼくもぜんぜんうるさくないんですよ。
これじゃなきゃダメだっていうのはないの。
だけど、もしなんか買うんだったら、
絶対、自分の好みで買ってるのはたしかですね。
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松本 |
ぼくは、そういうふうだから、
自分で選ぶって苦手で。
だから、好きなものがある人っていうのは
すごいなぁと思って。
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谷川 |
はーー。
じゃあ、食べるものも好き嫌いないの?
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松本 |
ないですねぇ。
うーん、たとえば、蕎麦は好きですけど、
蕎麦が好きっていうだけで、
ここの蕎麦がいいんだとかは、ない。
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谷川 |
逆に、関心があることっていうのは、
どういうこと?
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松本 |
漫画はすごく好きなので、
いつも散歩していても、何をしていても考える。
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谷川 |
漫画のこと考えてる。
自分の描く漫画のことを。
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松本 |
そうですね。
自分の描く漫画のことは、
好きで考えてるんですけど、
あとのことはもう、ほとんど考えてないかなぁ。
といっても、漫画と関係ない時間も
だいたいぜんぶ、たのしいんですけどね(笑)。
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谷川 |
でも、漫画なんですね。
大洋さんの絵本なんかももっと見てみたいけど。
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松本 |
そうですねぇ、漫画を描いてると、
ほかのことは、あまりやれないですね。
ただ、今回、絵本をやってみたら、
思ったよりたのしかったですね。
すごく、いい緊張をしたっていうか。
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谷川 |
大洋さんの描く絵本というのは、
やっぱりそうとうオリジナルだから、
絵本の世界でもすごく目立つと思うなぁ。
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松本 |
そうなんですか。
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谷川 |
うん。
だから、おもしろいテキストがあれば、
絵本も出していいんじゃないかと思いますけど。
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松本 |
ありがとうございます。
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── |
あらためて、
完成した『かないくん』を見て、いかがですか?
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谷川 |
なんかね、絵とことばの離れ方が、
ぼくはすごくいいと思ってる。
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松本 |
ああ。
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── |
たしかに、ことばで出てくる具体的なものを
はっきり描いてあるようなところって、
意外と少ないんですよね。
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松本 |
何度も描こうと苦労したところもあるんですが、
やっぱり、描いたときに、
絵として、バチッとこなかったんですよね。
うーん、たしかに「絵的なことば」があるところは
そう描いたほうがいいんだろうと思ったんですが、
まぁ、ぼくの画力の問題もあるんですが、
それができればって思いながらも‥‥。
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谷川 |
いや、描いてくれなくてよかったです。
だって絵本の場合、
絵とことばの距離が一番のツボだからさ、
離れすぎてるとわかんないし、
くっつきすぎもぜんぜんダメだし、
できあがったものはその具合がすごくよくって、
そこがいいんじゃないかなと思うんですけどね。
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松本 |
実際にことばどおり描いたほうが
ことばの印象から逆に離れてしまったり、
ということは、たしかにありますよね。
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谷川 |
うん。そうすると、なんかこう、
べったりしちゃいますね。
奥行きが出てこないんですよね。
その点、この絵本は
すごく奥行きが出てると思うんです。
そのものを描かないことで、表してるというか。
だから、評論家がよろこぶんじゃない?
深読みのしがいがあるから。
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一同 |
(笑)
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── |
最後に、この絵本の言い出しっぺの
糸井重里の話なんですが、
糸井は谷川さんのテキストも大洋さんの絵も、
それぞれできあがったときに見てたんですが、
絵本の形になったものをはじめて読んだときに
泣いてしまって、自分でびっくりしてました。
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谷川 |
ねぇ(笑)。
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── |
絵本でそんなふうになったのは、
はじめてのことだそうです。
で、その場で、谷川さんに電話をかけて。
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谷川 |
そうそう、なんだかねぇ(笑)。
なんでだか、俺、よくわかんなくてさぁ。
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松本 |
(笑)
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谷川 |
もしかすると、傑作なのかもね。
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一同 |
(笑)
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谷川 |
じぶんたちじゃ気づいてないんだけど(笑)。
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── |
すばらしい絵本ができました。
ほんとうに、どうもありがとうございました。
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松本 |
ありがとうございました。
ほんとに、うれしかったです。
今回は、こういう機会を与えていただいて。
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谷川 |
ありがとうございました。
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