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糸井 |
伸坊、どっち食べる?
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南 |
ん?
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糸井 |
白いロールケーキと黒いロールケーキ。
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南 |
ふーん、黒いのはなに?
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糸井 |
ま、黒っていうのはチョコレートだね。
白はホワイトチョコレート。
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南 |
じゃ、黒いほうを。
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糸井 |
伸坊がそうやって、
「悪の黒」を選ぶなら、
オレは「正義の白」を取ろうかな。
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南 |
ははははは。
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糸井 |
‥‥いや、オレも悪に染まろうかな?
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南 |
チョコレートが食べたいだけだろう。
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糸井 |
いや、やっぱり、正義をいただきます。
ほら、君の皿に悪が。
そして、ぼくの皿に正義が。
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南 |
おおげさだね。
いただきます‥‥うまいなコレ。
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糸井 |
うん、うまい。
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南 |
うまいね。
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糸井 |
ほんと。
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南 |
これは、なかなか‥‥。
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糸井 |
あのさ、伸坊、
悪と正義をさ、こう、半分ずつにしない?
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南 |
ふはははは。
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糸井 |
ほら、ぼくら、人間だからさ。
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南 |
悪も正義も両方あったほうが。
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糸井 |
そそそそそ。
両方あるのが人間だから。
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南 |
じゃあ、そうしよう。
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糸井 |
人間だからね。
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南 |
ウン、正義も悪くない。
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糸井 |
悪も正義もうまい。
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南 |
あのさ、この、
ホワイトチョコレートっていうのはさ、
そもそもチョコレートなの?
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糸井 |
どういうこと?
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南 |
だってさ、チョコレートなのに
ぜんぜんチョコレート色じゃないじゃん。
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糸井 |
まぁ、そうだけど、
いいじゃないか、そんなこと。
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南 |
いや、いいんだけどね、別に。
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糸井 |
ホワイトチョコレートで有名な
「白い恋人」だって、
たしかに白いけど、「恋人」じゃないだろう?
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南 |
え?
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糸井 |
恋人でもないのに
平気で「白い恋人」って呼んでる人が、
どうしてホワイトチョコレートが
チョコレートかどうかを気にするんだ。
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南 |
なんだ、その理屈(笑)。
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糸井 |
そうじゃないか。
野放しでしょ、「白い恋人」のほうは。
ホワイトチョコレートがチョコレートかどうかより、
「白い恋人」が恋人かどうか気にしようよ。
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南 |
なんだかわかんないけど、
オレが悪かった。
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糸井 |
わかればいいんだよ。
む、この、悪のほうのロールケーキもうまいなぁ。
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南 |
どっちもうまいねぇ。
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糸井 |
悪のなかには、
ちょっとだけ正義が入ってるね。
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南 |
ほんとだね。
一方、正義は正義だけだ。
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糸井 |
だからつまんないんだよ、正義は。
伸坊、両方、食べた?
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南 |
食べた、食べた、両方。
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糸井 |
両方食べたオレらは、いい人だよ。
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南 |
どっちもあるからね。
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糸井 |
どっちもあるからさ。 |
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(おいしかったみたいです。つづきます) |