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南 |
お芝居をするのは苦手だとしてもさ、
お芝居の演出だったら、できるでしょ。
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糸井 |
ああ、できる、と思う。
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南 |
それはやりたいとは思わない?
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糸井 |
べつに、やりたくはない。
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南 |
ハハハハハ。
お芝居はやりたいけど。
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糸井 |
芝居は、できないのに、やりたいんだよ。
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南 |
でも、できそうな演出はやりたくない。
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糸井 |
だって、演出って、なにがおもしろいの?
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一同 |
(笑)
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南 |
はははは。
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糸井 |
あ、いや、その言い方は語弊があるな。
あくまでも素人がちょっとやってみるとして、
っていうような話だよ?
ちゃんとした芝居の演出の話じゃないよ?
という前置きをしたうえでくり返すとさ、
「オレは演出がやりたい!」って、
どういう人が思うんだろう。
ふつう、思わないだろう。
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南 |
そうだね、たしかに。
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糸井 |
たとえばの話さ、なんかこう、
4人のおもしろい子がいたとして、
バンド組ませて、売って、
「自分が売ったんだ!」っていう仕事やりたい?
やっぱり、楽器持ってやりたいだろ?
まぁ、いつの間にかそういう役どころになって、
演出することになったら、がんばるけどさ。
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南 |
つまり、どっちにあこがれるか、
ということでいうと。
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糸井 |
自分でやるほうだよ。
だから、野球を観ながら、絶対なれないにしても、
「ホームランを打ってみたい」とは思うけど、
「スクイズのサインを出してみたい」とは思わない。
そっちをやりたい人も、いるんだろうけど。
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南 |
あ、いるいる。
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糸井 |
いるよね。
オレは、そっちじゃないんだ。
でも、できないんだよなぁ、芝居は。
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南 |
段取りのないお芝居は?
即興劇。
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糸井 |
エチュードね。
そっちならできるかなあと
思った時期もあるんだけど、
これがね、できなかったんだなぁ。
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南 |
ハハハハハ、どこかでやったんだね。
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糸井 |
八方ふさがり。
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南 |
つまり、やりたくなきゃ、
八方丸くおさまる話だよね。
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糸井 |
そうそう(笑)!
やりたくなきゃいいんだよ、ほんと。
でもさ、やりたいもんだからさ。
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一同 |
(笑)
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南 |
ラブシーンなんかあったらたいへんだねー。
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糸井 |
ラブシーン、できないだろうー。
ほんとのラブシーンだってやだもん。
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一同 |
(笑)
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南 |
段取りだから(笑)。
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糸井 |
段取りだろ。なぁ。
いや、笑ってるけど、みんなできるのかよ。
逆に聞きたい。
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南 |
あはははははは、おかしい。
みんなはやりたがってないんだし。
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糸井 |
そうだけどさ。
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南 |
結婚式とかだと、どうなるんだろうね。
「新郎はこっちからこう来てください」とか。
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糸井 |
それは平気だと思うなぁ。
なんていうか、段取り通りにいかなくても
それはそれでいいや、って思えるから。
あ、でも、仲人とかはちょっとイヤだな。
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南 |
オレね、一度だけ、
仲人をやったことがあるんだよ。
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糸井 |
ほう。
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南 |
そのときにいちばん難しかったのはね、
あいさつとか段取りとかよりも、
入場していくときのスピード。
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糸井 |
スピード?
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南 |
花嫁さんは、かつら重いし、
動くのがたいへんだから、
式場に入るとき、仲人のオレは
「ものすごーくゆっくり歩いてください」
って言われてたわけ。
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糸井 |
あー、はいはい。
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南 |
で、そうはいっても、
ものすごーくゆっくり歩くのって
なかなか難しいので、
ちょっとテストしましょう、
っていうことになったんだよ。
これから扉開けて入場するとこで、
言われたようにゆーっくり歩いたの。
そしたら、「速い、速い!」って言うんだよ。
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糸井 |
はははははは。
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南 |
だいたいこのくらいで歩いてください、
って、式場の人がやって見せてくれた速さがね、
もう、ほとんど暗黒舞踏。
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一同 |
(爆笑)
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糸井 |
はっはっはっ!
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南 |
こーんなんだよ。
こーーーんなにゆっくりだとさ、
にこにこ笑いながら歩く余裕ないの。
だから、こう、顔つきも、暗黒舞踏。
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一同 |
(笑)
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糸井 |
仲人、白塗り。
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南 |
白塗りしたくなったよ、あの速度は。
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糸井 |
見たかったなー、それ。
(おもしろいなぁ。つづきます)
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