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糸井 |
伸坊ってさ、下描きってするの? |
南 |
ははははははは。
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糸井 |
いやいや、責めてるんじゃないですよ(笑)。
して、ないんですかね。
してるんですかね。 |
南 |
‥‥どうだったかな。 |
糸井 |
はははははは。
これから展覧会があるのに、
まだ、ぜんぜん描いてないんだって? |
南 |
なんで知ってるの(笑)? |
糸井 |
風のウワサでさ。
展覧会まであと1週間なのに、
ひとつも描いてないっていう。 |
南 |
うん‥‥そうなんですよ。
だから‥‥今回は‥‥
下描きはしてらんないかもしれない。 |
糸井 |
あははははは。
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南 |
はははははは。
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糸井 |
まえさ、横尾(忠則)さんが展覧会やるときに、
「あと、何枚たりないんだよね」
ってことを、よく言ってたよね。
で、どうしても間に合わないからっていうんで、
展覧会場で絵描いたりしてたよ。 |
南 |
横尾さんの絵はおっきいからね。
ぼくのは、こんなちっちゃいから、
なんとかなるんじゃないかな。
だから、なるべく、
そんなに切羽つまってない、
のんびりした絵を描こうって思ってね。
これ、1枚だけあるんだけどね。
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糸井 |
‥‥切羽つまってないねぇ。
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南 |
はははははは。 |
糸井 |
いいなあ〜。
この話、もう、そのまま掲載するよ。
そうすると、お客さんも、
「結果的に、間に合ったんだろうか?」
って思って見に行くかもしれないし。 |
南 |
はははははは。 |
糸井 |
そもそもさ、伸坊は、
自分から進んでやってるわけじゃないよね。
展覧会を。 |
南 |
ああ、展覧会ね。
あのね、「還暦の展覧会」ってのをね、
HBギャラリーさん(今回の会場)が
ずっとやってるらしいんですよ。
で、今年還暦になるイラストレーターってのはね、
意外と少ないんだよね。
みんなもうなっちゃった人か、
もうちょっと下の年代になるらしくて。 |
糸井 |
ほ〜。 |
南 |
で、あの最初は和田(誠)さんと一緒に、
「本の装丁の展覧会」を
やろうっていう話だったんですよ。
ところがぼく、「装丁の展覧会」は
すでに紀伊国屋さんでやったことがあるから、
どうしてもそれと同じようなのに
なっちゃうんじゃないのって思って。
それで‥‥なんか、あの‥‥
「イラスト、なんか、描きます」
なんて、言っちゃったんだよ。 |
糸井 |
言っちゃったんだ。 |
南 |
それが‥‥大きな間違いですよ。 |
糸井 |
わはははははは! |
南 |
それで、やることになりました!
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糸井 |
展覧会って、
これまでにもあんまりやってないよね? |
南 |
2回しかやったことないね。
いちばん最初にやったのは、
高校卒業したとき。 |
糸井 |
だいぶ距離がありますね。 |
南 |
うん。友達と3人でね、
日比谷公園の中にすごい立派な画廊があって、
でも、会場費がものすごく安くてね。
もう、そこはないんだけど。 |
糸井 |
うん、うん。 |
南 |
で、友だちがやってきて、
芝生のとこで飲んだりしてさ。 |
糸井 |
楽しそうだ。 |
南 |
うん、楽しかったですよ。
金持ちになったみたいだしね。
友だちが遊びに来て、
芝生の上でがーっと飲んだりして。
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糸井 |
つまり、公民館で、
バンドをやるみたいなことだね。 |
南 |
あー、そうですそうです。 |
糸井 |
そっから何十年もたって、
2回目の展覧会が紀伊国屋でやった
「装丁の展覧会」? |
南 |
そうそう。
松田(哲夫)くんがね、
「装丁の展覧会くらいやったらどうだ」
って言って、話をつけてきてくれた。
でも、あれは、まあね、
‥‥新たに作る必要はないからね。 |
糸井 |
過去の装丁を並べるだけだからね。 |
南 |
そうそう(笑)。
まあ、いままで作った本を全部ならべて、
それだけじゃ寂しいからって、
イラストをちょっと添えてね。 |
糸井 |
それは手がかかってないね。
というか、両方、手がかかってないね。
最初のやつは、友だち3人とやって、
芝生で飲んだり食ったりしただけで、
2回目は、昔の仕事を並べて。
で、いよいよ3回目は正念場ですよ。 |
南 |
うん。そうですよね。 |
糸井 |
で‥‥これかい。
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南 |
ははははははは。 |
糸井 |
これしか描いてない‥‥。 |
南 |
いや、すでに1枚できてるからさ(笑)。 |
糸井 |
でも、これですら、前に描いたんでしょ。 |
南 |
はははははは、そうなんだよ。
「個展の案内状つくるから、
1枚だけでいいですからください」
って言われて。
あ、じゃあ描かなきゃなって言ってるうちに、
締切の時間になっちゃったんで、
「じゃ、これを」って。 |
糸井 |
ふはははははは。 |
南 |
で、そのときに、
展覧会のタイトルを決めたんです。
「のんき図画」っていう。
なんか、ほら、これ、
のんきな感じじゃない? |
糸井 |
この絵から、タイトルを決めたの(笑)?
本末転倒っていうか、なんていうか‥‥。 |
南 |
のんきな絵が案内状だから、
「のんき図画」(笑)。 |
糸井 |
ある意味、うまいよね。
まえから考えてたみたいだもんね。 |
南 |
ははははは。 |
糸井 |
そういうところで生き延びてきてるんだね。 |
南 |
んふふふふふ。 |
糸井 |
ごまかし、ごまかし。
いや、でも、どうするんですか。
あと、何枚くらい必要なの? |
南 |
20枚くらい描かないといけないんだよね。 |
糸井 |
どうするの? |
南 |
いや、描きますよ。
明日明後日、休みですから。
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糸井 |
土日だ(笑)。
「土日でやるから大丈夫」(笑)。 |
南 |
ははははははは。 |
糸井 |
ははははははは。
(笑いながら、続きます‥‥)
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