糸井 | 佐藤さんはコンピューターでは デザインをされないとのことですが、 それって、 佐藤さん自身がサーファーだということと 通じているような気がして。 |
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佐藤 | あー、 自分の体をつかって表現すること‥‥。 |
糸井 | そうそう。 お話を聞いていると、 肉体をつかうほうへ、つかうほうへ 向かっているような気がして。 |
中村 | たしかに。 佐藤さんっていいプロポーションしてるし‥‥ |
佐藤 | 一緒にお風呂入ったこともないのに(笑)。 |
中村 | ないですけど(笑)、 やっぱり、そういう身体性を大事にしている人って、 体が引き締まっていたり、文字がきれいだったり、 すみずみまで意識が行き渡っていますよね。 |
糸井 | あぁ、それはそうかもしれない。 書家でだらしない人って、あまりいませんよね。 筋肉運動をしている人は、自覚がある。 |
中村 | そういえば、 僕はある年齢を超えたときから お風呂入るときに 鏡で自分の裸を見なくなりました。 チラっと見て、もう見ぬフリをするというか。 書くことも同じで、 何かが欠落しているのを見て見ぬふりをして、 キーボードでカチャカチャと打っているんです。 |
糸井 | え、中村さん、おいくつでしたっけ。 |
中村 | 今、43です。 |
糸井 | それは、まだまだお若いですよ。 |
中村 | いや、でも‥‥。 |
糸井 | 男はね、もう単純に、 自分のお腹をどうするのか、これだけなんです。 「出ているお腹を、俺はどう考えてるんだ?」 という質問が、常にあるわけですよね。 で、中村さんのように 見て見ぬふりをする時代があって、 そのあとにくるんですよ、 「あ、見ちゃおうかな」って時代が。 |
佐藤 | 「見ちゃおうかな」時代(笑)。 |
中村 | そんな時代が(笑)。 |
糸井 | 僕の10歳下に みうらじゅんって男がいるんですけど、 彼がその時代に突入して 自分のお腹を見たときに思ったことは、 「昔から徳の高い人はお腹が出ているじゃないか」 だったそうです。 つまり、七福神の布袋さまも、 みなし子に手を差し伸べるおじさまも、 みんなお腹が出ているから、 自分もそういう人間だと思えばいい、と。 お腹が出ていることを認めた男なんです。 |
中村 | 開き直ったんだ(笑)。 |
糸井 | でも、それはお腹を見たからなんですよね。 僕は50すぎたころに 「見ちゃおうかな時代」に入りました。 そのころになると、 お腹が出たままでも 「これがふつうだよね」って言って 安心して生きていけるんです。 けど、僕は自分のお腹を見たときに 「こいつが隣にいたら、あんまり好きじゃないな」 って思ったんです。 それから、行き過ぎ禁止の印として、 「これは、俺なのか?」って思う写真を見つけて パソコンの端っこに置いて、 クリックしたら、その写真が出てくるようにしました。 |
中村 | はははは、いいですね! |
糸井 | ほとんど見ませんよ、見ないんですけど‥‥ 年にいっぺんくらいは見るね(笑)。 きっと、運動のこととか、文字のこととか、 「まあ、これぐらいがふつうだよね」って、 自分でグズグズにしちゃうことって ほかにもいろいろありますよね。 でも、そういう自分って、案外、不自由なんですよ。 |
中村 | だからこそ、「見ちゃおうかな」って時代が‥‥。 |
糸井 | うん。くるんです。 (つづきます) |
※このコンテンツは、
『日経ビジネスアソシエ 2013年11月号』に掲載されたものと同じ鼎談を
「ほぼ日刊イトイ新聞」用に編集し直したものです。