撮影:小川拓洋
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第3回 見ちゃおうかな時代。

糸井 佐藤さんはコンピューターでは
デザインをされないとのことですが、
それって、
佐藤さん自身がサーファーだということと
通じているような気がして。
佐藤 あー、
自分の体をつかって表現すること‥‥。
糸井 そうそう。
お話を聞いていると、
肉体をつかうほうへ、つかうほうへ
向かっているような気がして。
中村 たしかに。
佐藤さんっていいプロポーションしてるし‥‥
佐藤 一緒にお風呂入ったこともないのに(笑)。
中村 ないですけど(笑)、
やっぱり、そういう身体性を大事にしている人って、
体が引き締まっていたり、文字がきれいだったり、
すみずみまで意識が行き渡っていますよね。
糸井 あぁ、それはそうかもしれない。
書家でだらしない人って、あまりいませんよね。
筋肉運動をしている人は、自覚がある。
中村 そういえば、
僕はある年齢を超えたときから
お風呂入るときに
鏡で自分の裸を見なくなりました。
チラっと見て、もう見ぬフリをするというか。
書くことも同じで、
何かが欠落しているのを見て見ぬふりをして、
キーボードでカチャカチャと打っているんです。
糸井 え、中村さん、おいくつでしたっけ。
中村 今、43です。
糸井 それは、まだまだお若いですよ。
中村 いや、でも‥‥。
糸井 男はね、もう単純に、
自分のお腹をどうするのか、これだけなんです。
「出ているお腹を、俺はどう考えてるんだ?」
という質問が、常にあるわけですよね。
で、中村さんのように
見て見ぬふりをする時代があって、
そのあとにくるんですよ、
「あ、見ちゃおうかな」って時代が。
佐藤 「見ちゃおうかな」時代(笑)。
中村 そんな時代が(笑)。
糸井 僕の10歳下に
みうらじゅんって男がいるんですけど、
彼がその時代に突入して
自分のお腹を見たときに思ったことは、
「昔から徳の高い人はお腹が出ているじゃないか」
だったそうです。
つまり、七福神の布袋さまも、
みなし子に手を差し伸べるおじさまも、
みんなお腹が出ているから、
自分もそういう人間だと思えばいい、と。
お腹が出ていることを認めた男なんです。
中村 開き直ったんだ(笑)。
糸井 でも、それはお腹を見たからなんですよね。
僕は50すぎたころに
「見ちゃおうかな時代」に入りました。
そのころになると、
お腹が出たままでも
「これがふつうだよね」って言って
安心して生きていけるんです。
けど、僕は自分のお腹を見たときに
「こいつが隣にいたら、あんまり好きじゃないな」
って思ったんです。
それから、行き過ぎ禁止の印として、
「これは、俺なのか?」って思う写真を見つけて
パソコンの端っこに置いて、
クリックしたら、その写真が出てくるようにしました。
中村 はははは、いいですね!
糸井 ほとんど見ませんよ、見ないんですけど‥‥
年にいっぺんくらいは見るね(笑)。
きっと、運動のこととか、文字のこととか、
「まあ、これぐらいがふつうだよね」って、
自分でグズグズにしちゃうことって
ほかにもいろいろありますよね。
でも、そういう自分って、案外、不自由なんですよ。
中村 だからこそ、「見ちゃおうかな」って時代が‥‥。
糸井 うん。くるんです。

(つづきます)
2013-10-21-MON

※このコンテンツは、
 『日経ビジネスアソシエ 2013年11月号』に掲載されたものと同じ鼎談を
 「ほぼ日刊イトイ新聞」用に編集し直したものです。

中村勇吾さんにつくっていただいた動画はこちら。

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