- ──
- じつは、私たちが応援している
動物愛護団体が、にわとりを保護したんです。
- 西村
- はい、なるほど。
- ──
- 私はにわとりを身近に感じるのが
小学校の飼育係以来はじめてで、
わからないことだらけなんですが──、
まず、いちばんお伺いしたいのは、
にわとりの寿命です。
- 西村
- にわとりの寿命は、
10~15年前後だといわれています。
- ──
- 10~15年!
▲飼育員のみなさんの肩にも上手に乗る。
- 西村
- にわとりは、セキショクヤケイという
キジの仲間が祖先といわれています。
ですので、キジ類の寿命から推測して、
だいたいそのくらいだということなんですよ。
- ──
- 15年かぁ。
- 西村
- 生まれたときはヒヨコですが、
半年でおとなになり、
その後トサカが成熟します。
そこまでに約1年かかります。
そして、蹴爪がのびきるまでに2年かかります。
- ──
- 蹴爪‥‥友森さんが切ってると言ってた、
あの蹴爪だ。
▲鳥男の蹴爪。
- 西村
- 体、トサカ、蹴爪、という順番で
おとなになります。
- ──
- ということは、蹴爪がある場合は
2歳以上ということが推測されますね。
- 西村
- そのとおりです。
▲鳥男、2歳以上と判明。
▲トサカも成熟しているし、2歳以上。
- ──
- まさひろくんとよしとくんは、
動物園で飼育されていますが、
にわとりというのはやはり、
野生には戻らないんでしょうか?
- 西村
- そのにわとりが、学習の機会を
どれだけ得てきたかがポイントとなります。
夜は木の上で寝る、
犬や猫が来たら逃げる、
ということを学習できていたら、
ひとりで生きていけるかもしれません。
でも、産業用の生きものなので、
普通の野生種よりからだが重いです。
都会は交通量も多いし、いろんな危険もあって、
生きながらえる可能性は低いと思います。
- ──
- ううーん、からだが重いのか。
- 西村
- ぼくたちは、たまたまこの2羽が
生き延びたということで飼育をはじめました。
彼らはもとは餌だった、ごく普通のにわとりです。
しかし動物園という場所では、
鳥類は檻ごしに見るものであって、
間近で見たことがないお客さまが多いんですよ。
- ──
- はい、そうですよね。
▲まさひろくん、よしとくんを
やさしい目で見る西村さん。
- 西村
- でも、こうして外に出してみたら、
かしこいしかわいいし魅力的だし感動的だしで、
ありふれたにわとりが、いつのまにか
人気者になっていました。
ぼくたち飼育員も、目からウロコでした。
動物を見て人の心が動くのは、
希少価値とは関係ナッシングやな、と。
羽がこんなふうにふわっとしている、
目玉だけ動かしてものを見ることができない、など、
彼らのおかげで鳥類の特徴がいきいきと
みなさんに伝わります。
動物園のほかのどの動物もできなかったことを、
この子たちがやってくれている。
教わることばかりです。
- ──
- 鳥男もとても人なつっこいんですが、
にわとりって、人に慣れるんですか?
- 西村
- 人間とともに暮らすことを目的に
千年単位の長い時間を経験してきた家畜ですから、
ワンちゃんといっしょで、人には慣れます。
狼は慣れないけど、犬は人に慣れる。
それと同じで、
キジは慣れなくても、にわとりは慣れます。
もともとは卵や肉が目的ではなく、
ときを告げる鳴き声や信仰の対象のために
人間社会に入ってきたといわれています。
- ──
- にわとりって、
気性が荒いイメージがあるのですが、
人なつっこくするには
どうすればいいんでしょうか?
▲まさひろくんは特におだやか。
- 西村
- いや、なんにもしてないです。
ぼくらはただいっしょにおるだけです。
自転車に乗ったり、
歩いて園内を散歩したりすることも、
彼らが自らやってくれたことです。
だから、にわとりに対しては、
何もすることはありません。
- ──
- 育て方がうまいから、じゃないんですね。
- 西村
- 彼ら、ものすごくかしこいですよ。
「いま、がまんしてくれてるな」
というのもわかるし、
人によって態度も変えます(笑)。
そのあたりも、間近で見るとわかるから、
動物園のお客さまも驚かれますね。
- ──
- 友森さんが犬や猫よりらくかも、
と言っていたのはほんとうかもしれません。
西村さん、鳥男の写真、
ちょっと見ていただけますでしょうか?
(つづきます)
今回わかったこと
1)にわとりの寿命は10~15年前後。
2)鳥男は2歳以上である。
3)にわとりは、人に慣れる。
4)かしこくてかわいい。
2017-08-12-FRI
© HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN