糸井 |
勝川さんのお話を聞いていると
いちいち「もっともだ」と思うんですけど
資源管理について
現場の漁師さん以外の反対意見というのは?
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勝川 |
「魚は減っていない」という人も、います。
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糸井 |
あ、そうなんですか。
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勝川 |
水産庁とか。
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糸井 |
それは‥‥そうなんだ。
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勝川 |
「魚は減っていません。
日本近海の資源は、総じて良好です」
と、言っていますので。
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糸井 |
見解が、まったくちがうんですか。
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勝川 |
現場の漁師の9割が
魚は減ってるって言ってるのに。
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糸井 |
ぼくは、だいたいいつも
まず、どっちの意見にも耳を貸そうって
立場なんですけど
「魚が減っていない」というのは‥‥。
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勝川 |
ぼくが漁村で漁師から聞いている現実と、
180度、ちがいますからね。
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糸井 |
はぁー‥‥どうしましょう。
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勝川 |
困っちゃいますよね(笑)。
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糸井 |
でも、勝川さんって
水産庁主宰の勉強会とかに呼ばれたりも
してるじゃないですか。
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勝川 |
ええ。
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糸井 |
あれは、どういう人選なんですか?
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勝川 |
まあ、水産庁に頼まれて
資源管理のありかたを検討する会の委員を
やっているんですけど、
なぜ、ぼくみたいに
現状の漁業に批判的な人間が呼ばれたか。
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糸井 |
ええ。
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勝川 |
まだ、はっきりとはわかりませんけど
ようやく「個別漁獲枠制度」についても
真剣に考えはじめてるのかな、と。
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糸井 |
ほう。
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勝川 |
いま「アベノミクスの三本の矢」で、
成長戦略を国家として打ち出してますよね。
当然、水産庁にもその動きがありますが、
「成長戦略」と言ったって
海に魚がいないのに、成長できないです。
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糸井 |
それは‥‥そうです。
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勝川 |
だから「資源管理」で魚を増やすことしか
方法はないと思うんですよ。
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糸井 |
つまり、可能性が出てきた‥‥と?
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勝川 |
実現に近づいたら、いいなと思います。
ぼく、10年くらい
「資源管理、資源管理」って言ってますが
長年、言い続けてたら
少しは聞いてもらえるのかなあと(笑)。
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糸井 |
実感としては、注目度も上がってますか?
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勝川 |
これまででしたら
検討会なんて誰も傍聴に来ないんですけど
最近では「山盛り」いらして‥‥。
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糸井 |
山盛り(笑)って‥‥誰が?
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勝川 |
マスコミのみなさんはじめ。
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糸井 |
いや、ぼくも行こうと思いましたもん。
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勝川 |
いつもの部屋には入りきらず、
講堂にも入りきらなくて、別の建物に。
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糸井 |
すごいじゃないですか。
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勝川 |
関心は、高まってるんだと思います。
10年前に「資源管理」を言いはじめたとき
手当たり次第に「批判」をしたんですね。
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糸井 |
ええ。
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勝川 |
でも、結局それじゃ、何も変わらなかった。
「なんで、わかってくれないんだ!
どうして資源管理をしないんだ!」
って大声を出しても、まあ、ダメなんです。
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糸井 |
うん、うん。
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勝川 |
だから「北風と太陽」みたいに、
もう、コートを脱がなきゃいけない状況を
「世論」でつくっていこうと。
「日本の漁業をよくしようよ」と言って。
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糸井 |
ぼくは、いつも思うんですけど、
結局みんな、
心がうれしい場所にしか来ないですもんね。
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勝川 |
そうそう、そうなんです。
冷静に考えてもらったら、
現状の「分捕りゲーム」みたいなものより、
資源を管理したほうが
絶対に、状況はよくなるんです。
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糸井 |
うん。
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勝川 |
いまの枠組みだと「もたない」です。
だから、漁業が本当にダメになってしまう前に
方向転換できたらいいな、と。
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糸井 |
勝川さん‥‥見えますよ。
バックに魚の応援団がついているのが。
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会場 |
(笑)
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勝川 |
あ、ありがとうございます(笑)。
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糸井 |
いや、やっぱり、そういうものだと思う。
いま、犬や猫の愛護団体の手伝いを
やってるんですけど、
やっぱり、うまくいってる人の後ろには
「動物」がついてますもん。
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勝川 |
そうですか。
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糸井 |
勝川さんのお話も、
国民世論だとか成長戦略だとか言う前に
もっと、生き物として
「魚がおいしい」みたいな話でしょうし。
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勝川 |
そうなんですよね。
結局、われわれ日本人は魚が好きですし、
やっぱり
「魚がおいしい」ことが、重要ですよね。
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糸井 |
思ったとおり「希望の話」になったなあ。
いやあ、ありがとうございました。
会場から質問とか感想とか‥‥いかがですか。
いちばん前の、
気仙沼からお越しの小野寺さん、どうですか。
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小野寺 |
はい、ありがとうございます(笑)。
北大西洋のマグロと、ミナミインドマグロが
個別割り当てで
いま、資源が豊富になっていると聞きました。
そういう実例が気仙沼にもあるので、
漁師さんはじめ
まわりの人にも広めていけると思いながら
うかがっていました。
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糸井 |
ああ、そうなんですか。
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小野寺 |
わたしたち、漁業の「後継者不足」を
目の当たりにしてるので、
がんばっている漁師さんのお給料が増えて、
漁師になりたい人が増えて、
もっと、若い人が来てくれる町にしたくて‥‥
それでカレンダーをつくったりとか、
いろいろ、やっているんです。
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糸井 |
「漁師カレンダー」って知ってます?
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勝川 |
研究室に飾ってあります(笑)。
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小野寺 |
わあ、ありがとうございます!
漁師さんが
漁師という職業を選んで本当によかったと
思えるような環境にしたいです。
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糸井 |
小野寺さんは、
もう、気仙沼の漁師の大ファンですものね。
斉吉商店の和枝さんは、どうですか。
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和枝 |
私も、本当におもしろかったです。
もうなんか、呼吸しないで聞いたような。
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糸井 |
ねえ。
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斉藤 |
お話の後半になっていくにつれて
本当に、希望を感じました。
福島の漁業とかも
絶対、何かできるんじゃないかと思って、
ワクワクして聞いていました。
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糸井 |
そうですか。
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和枝 |
今日のお話をうかがったことで
やりたいことを、
またひとつ、増やしていただいたなって。
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糸井 |
それは、よかったです。
勝川先生、今日はありがとうございました。
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勝川 |
こちらこそ、ありがとうございました。 |
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<おわります> |