糸井 |
ディズニーは、もともと
ビジネスをソフトから働きかける方法で
やってきた背景があると思います。
例えば、ぬいぐるみを売るということで、
キャラクターをもっと
好きになってもらうことができます。
そしてキャラクターは、ぬいぐるみという形で
みんなの家に入っていけるわけです。
だってさ‥‥みんな、抱っこして寝てくれるんだよ?
俺なんかそんなことされませんよ。
「糸井さんはみんなに会いたがってる」といって
俺のぬいぐるみをつくれば
いいのかもしれないけど、ま、無理です(笑)。
そういうことを、ディズニーはずっとやってきました。
それをもっと思い出して、
「メディアが変わったからどうのこうの」
という狭い変化の説明をするだけじゃなく、
キャラクターやコンテンツの関わり方を
もっと考えたほうがいいと思ったのです。
「こんなものが新発売されますよ」とか、
「いまはアメリカではこんな新作をつくってますよ」
とか、そういうことをいっぱい知る広場のようなものを、 MovieNEXという、
総合表現の場で出せればいいんじゃないのかな。
すぐに銀座通りのような人通りは
できないかもしれないけど、
ちいさな小屋を建てるとこからはじめてもいい。
実は、ちっちゃな映画会社は、
そういうことをすでにやっています。
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塚越 |
そうなんですよね。
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糸井 |
ディズニーのような大きな会社になると
そのていねいさは、なくなるのが普通です。
だけど、喜ぶお客さんがいると信じて、
これからのプロモーション展開を
やっていくのがいいですよね。
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塚越 |
それはいま、まさにぼくが
社内でみんなに
くちすっぱくして言ってることだったんです。
ぼくは糸井さんのおかげで
まったく、その整理がついたわけです。
「じゃあ、糸井さん、
それを一緒にやりましょう」
って、次の瞬間、口から出てました(笑)。
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糸井 |
でも、「それは遠慮しとく」つったの(笑)。
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塚越 |
「なんでですか。
そこまで教えてくれといて、
ねぇ、糸井さん、なんか手伝ってよ」
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糸井 |
「だって俺はいま、よその仕事はしてないから、
よしとくよ」
と言ったんだけど‥‥
カレーのあとにお茶飲んでても、
塚越さんは、ずーっと
「なんか、できる気がする!」と言うわけです。
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塚越 |
ぼくからすれば、
新しいコンテンツの楽しみ方をつくって
広げていくということをしたいわけだから、
それをするには
糸井さんがいちばんいいって、もう決めてた。
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糸井 |
会いたがってる場を
いっぱいつくることなんだよ、
そしてそこで商売をしたい人はいっぱいいるんだから、
塚越さんがやればいいじゃん、
俺はもう自分の仕事に戻るよ、
コーヒーもおいしかったし、みたいな感じで
店を出ようとしたら。
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塚越 |
そしたら。
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糸井 |
会いたがってる場を
いっぱいつくることなんだよ、と
自分が言った声が、自分に聞こえてきたの。
「そうだよ、会いたがってる場を
いっぱいつくることなんだよ!」
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塚越 |
‥‥って、糸井さんが言ってね(笑)。
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糸井 |
「塚越さん! ひとつあるよ。
まだ海のものとも山のものともつかないけど、
第1号議案みたいなアイデアが
ぼくらのなかにもあるんだったよ」
と言いはじめた。
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塚越 |
つながりましたね。
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糸井 |
「いま、気仙沼の山の木に
ツリーハウスをつくろうとしてるんだけど!」
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塚越 |
うん。即座にぼくは、おもしろそうだ! と
乗り気になりました。
ツリーハウスと聞いただけでわくわくしますよね。
ある程度お話をうかがって、
最初のほうは、ツリーハウスで映画館をつくろうか、
ということに発想が行きました。
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糸井 |
だけど電気も要るし‥‥。
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塚越 |
技師も要るし‥‥。
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糸井 |
あきらめました。
塚越さんが考えようとしていた
MovieNEXのコミュニケーション広場のような計画も
ゼロに近くて、
ぼくらのツリーハウスも
ざっくりした場所だけが決まってる、
というくらいの話でした。
どっちもヒヨッコだけど、
「はじめてやったこと同士」シリーズですから、
それはお互いさまです。
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塚越 |
「可能性はあるね」
そういうとこだけ、握れました。
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糸井 |
そして、効果のほどは、
お互い、まったくわかんないわけだよ。
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塚越 |
そうそう、そこがポイントです。
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糸井 |
はたして人がMovieNEXをどう評価するか、
東北のツリーハウスがメディアとして広がっていくのに
100年かかるかもしれないとか、
そんなことは誰にもわからない。
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塚越 |
けれども、ぼくたちは
当人同士が話をしたから、
進めることができるわけです。
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糸井 |
そうなんです。
やっぱりそこは
「やること全体をどう思うか」で、話をしたからね。
震災直後に比べれば、あたりまえですが、
被災地は落ち着いた状態にあります。
そのときに何をやればいいかといえば、
「人の出入り」が、普通の町として欲しいのだと思います。
しかも楽しいことで
人が行ったり来たりするということが大切です。
効果は読めなかった、しかし、ぼくは少なくとも
ツリーハウスをつくれば
「人は呼べる」という自信がありました。
塚越さんにも、MovieNEXについて考えている希望は
山ほどあるわけです。
そういうわけで、
気仙沼の「ツリーハウス1号」は
MovieNEXの協賛でつくりました。
最初に塚越さんが
すべてをのみこんでスポンサーしてくれた。
この意味は、思った以上に大きかったです。
ひとつのツリーハウスを建てるということが
いったいどういうことかが、まずわかりました。
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塚越 |
ぼくらもこういうことははじめてでしたから、
「こういう組み方があるんです」と
社内外に示すことができました。
これは大きな意味をもっていたんですよ。
コンテンツそのものにふれて
いっしょにエンターテイメントをつくっていくのを
ローカルでやっていく。
そういうひとつの道が切り開かれたわけです。
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糸井 |
「場所」というものをスポンサードする。
そこを、宣伝にもイベントにも
どう使ってもいいのですから
アイデアをまた、考えることができる。
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塚越 |
そうそう。いいですね。
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糸井 |
ツリーハウス1号の建設当時は 「モンスターズ・ユニバーシティ」の発売時期だったから
建設チームのつなぎに
「モンスターズ・ユニバーシティ」のロゴを
入れさせてもらったりして遊びました。
ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパンという会社が
あたらしいことをやろうとしたり
お客さんとなかよくしようとしてるかが
わかってもらえるとうれしいな、と
現場の人たちも真剣になっていてくれました。
そしてそれは、伝わったと思うし。
‥‥俺、こんなに
実際にやってるビジネスの話をしたことないなぁ。
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塚越 |
でも、ホントの話ですもんね。
「モンスターズ・ユニバーシティ」のロゴ入りつなぎは、
MovieNEXのプレゼントにも使ったら、
大人気でしたよ。 |
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(つづきます) |
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2014-02-25-TUE |