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物事を研究するつんくさんの目線が
あくまで「一般の日本人」っていうのは
どうしてなんでしょうか。 |
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いや、やっぱりぼくは
自分のことをすごいと思ってないですから。
誰にでもできると思ってますから。 |
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そこがおもしろいんですよね。
分析自体もおもしろいんだけど、
分析する目線のほうがもっと興味深い。
つんく♂さんって、子どものころから、
そういう感じだったんですか。 |
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あの、たとえばぼくは、足が速かったんですね。
ただ、「人よりは速い」というレベルだったんです。 |
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学校で一番っていうレベルで、
国体でトップ、っていうことでは──。 |
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そんな次元ではないんです。
大阪府で十何番ぐらいの。 |
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ま、速いんですけど、
それでプロになれるか、生活していけるか、
っていったらそうじゃない。 |
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そんな中でもやっぱり、
十何番からひとつでも上に上がるためには、
あのカール・ルイスがどうやって走るかとか、
気になるわけですよ。 |
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ベン・ジョンソンのバネはどうなってるのかとか、
いろんなことを考えるんですね。
で、ここから先はあの人らの感覚なんや
っていうところはもちろんわからないんですけど、
「あの選手はこうやって走ってるな」っていう、
見た目で理解できる範囲はあるから、
それは徹底して盗むべきやな、
ぐらいのことは思うんですよ。 |
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そうかもしれないけど、
実際にそういうふうに説明してる人は
ほとんど、いないですよね。 |
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まあ、あんまりいないですけど、
説明できないわけじゃないと思うんです。
あの、最近になってよくぼくは思うんですけど、
やっぱり、表現活動をする人って、
当然ですけど自分のことが大好きで
自分の作法や論法みたいなものって
「オレにしかできねぇな」と思ってるんです。 |
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ああ、なるほど。
やろうと思ったらほんとは説明できるのに、
「オレにしかできねぇな」
ということで説明しない。 |
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うん、そうですね。
で、それが意外と「七ならべ」でいうところの、
六とか八を持ってるのに出さへん
トランプをしてるような‥‥。 |
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それが、つまらんなあって思うこともある。
そこ、八、出せへんかったら
九も十も行かへんやん。 |
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うん、うん(笑)。
いや、それ、ぼくは両方の気持ちがわかりますね。
というのは、いつもぼくは
「半分までは教えられるぞ」
って思っているんですよ。 |
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で、残りの半分は、やっぱり説明できない。
なんとか、ことばにすることは
できるのかもしれないけど、
説明しきった瞬間に、なにか、
違ったものになっちゃうと思ってて。 |
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たとえば、歌詞を書くにしても、
Aっていう歌詞とBという歌詞に
同じような条件がほとんどそろってるのに
なにか、魅力が違う。 |
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とか、こいつの話は、
ほかの人と同じ話してるはずなのに
どうも、惹きつけるなとか。
けっこうなところまで言えると思うんだけど、
言える部分が全部かというと、違う。
説明できる部分を完全にコピーできれば
同じようになるかっていうと、
たぶんそんなことないと思う。 |
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あ、なるほど。えっと、そうです。
そのとおりだと思います。 |
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さっきのリズムの話の
「ネイティブ」に当たる部分でしょう? |
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そうですね。
その人の持ってる本質の部分ですよね。 |
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教えられないし、
その人のもつ本質の部分、
その人なりの「ネイティブ」の部分は、
変えたり削ったりしちゃだめだと思うんです。 |
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うん。それはまさに、
つんく♂さんがモーニング娘。を
プロデュースしているやり方ですね。 |
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そうですね。
たとえば、仙台かどこかの
オーディションに合格して、
今日からモーニング娘。です、
っていう女の子がいたとして、
「じゃあ、マイクスタンドの高さ合わせて」
って言ったら、
「どうやるんですか?」ってなるんですね。
で、「あ、そうか、そっからやな」
って思うんですけど、
それは、できなくて当たり前なんですね。 |
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ぼくなんかはもう、シャ乱Qのころ、
年間100本ぐらいのライブを
こなしてからプロになったから、
マイクの高さの変え方から、
1曲目が終わったときのMCでなに言うかまで
わかってるんですけど、
はじめてマイクスタンドの前に立つ子には
そんなんわからなくて当たり前なんです。
というか、その部分こそが
その女の子が新鮮でいられる理由でもある。
だから、さっきの「ネイティブ」なところですね。 |
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そうです。
それはいつまでも、かわいらしい部分。
だからそこを削る必要はないなと。 |
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そこまでわかったうえで、
説明しようとしてるんですね。
なるほどね。 |
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ものすごい運動神経を持った
スポーツ選手のような輝き方もあるけど、
限りなく素人の輝き方ってあるじゃないですか。
それはもうぼくら、ある種、
汚れてしまった人間にはもうできへん。 |
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だから、その輝きは残したまま、
説明できる部分をきちんと鍛えていく。 |
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たとえば、ひとりの女の子がいたときに、
その子が「お母さんっぽい」っていうことが
取り柄になるんだなんてことは、
本人には絶対にわからないんですよね。 |
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で、みんな、
そこのところを直しちゃって
つまんない子になっちゃったりする。 |
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それをつんく♂さんは、
ひとつ高いところから見ていて、
「それは誰にも真似できないから
そのままにしとけよ」
って教えてあげるのと同時に、
違う部分に対しては
「こっちはきちんと練習しなさい」
っていって、足し算していくんですね。 |
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(続きます) |