お久しぶりです、鶴瓶さん!
ほぼ日には2011年以来、
8年ぶりのご登場となる笑福亭鶴瓶さん。
たっぷり糸井と語ってくださいました。
人気番組『家族に乾杯』のこと。
52年ぶりの同窓会のこと。
ももクロのこと。うれしかったことばのこと。
そして、鶴瓶さんの愛する落語のこと。
気心のしれた者同士、ふたりの会話は
軽やかにポンポン飛びはねていきます。
いっぱいしゃべって、いっぱい笑って、
途中、いっしょに給食もいただきました。
できることならずっと聞いていたい、
ふたりの「いま」が詰まったフリートークです。
深く、ゆるく、全9回。どうぞ!
- 鶴瓶
- この前、大阪で独演会をやってんけど、
毎年やってるうちに、
幼稚園からの同級生が
30人くらい来てくれるようになって。
- 糸井
- へえ。
- 鶴瓶
- そうしたら楽屋のロビーで、
ちょっとした同窓会になって。
そこでだれかが
「ほんまの同窓会がしたい」言うから、
「そんなん、これが同窓会やん」言うてんけど、
「いちどもやってないから、やろう」ってなって、
ほんで一昨日のことですわ。
地元で同窓会したんです。52年ぶりに。
- 糸井
- すごいね(笑)。
- 鶴瓶
- 男8人、女10人来たんかな。
俺がちょっと遅れていったら、
男はこっち、女はそっち、って座ってて。
で、俺は女の列に座らされて。
そのほうが女の子がよろこぶからって。
- 糸井
- なるほど。
- 鶴瓶
- ほんで、そこに座ったら、
そこにいる全員の名前言うたらな、悪いやん。
だって「あんただれ?」って、
そんなん言われたらイヤやん。
- 糸井
- でも、52年ぶりだからね。
- 鶴瓶
- ところがな、俺、言えたんよ、全員の名前。
- 糸井
- えぇーー!
- 鶴瓶
- なぁ、すごいやろ(笑)。
いくら近所の子っていうても、
付き合いあったんは、18歳くらいまでで。
でも、全員の名前、言えたんよ。
- 糸井
- やっぱ「手編み」だね(笑)。
- 鶴瓶
- やろ(笑)。こっちは「手編み」や。
はじめは、全然わからん子からいくわけよ。
- 糸井
- ほう。
- 鶴瓶
- そういう子は
わからんようにごまかしてあげる。
「ヒトミちゃんのとなりは、あれかいな」言うたら、
「へぇ、あれ、クミちゃんか」って、
別のところの会話が聞こえてくるんよ。
「ははーん、この子はクミちゃんやな」って(笑)。
- 糸井
- なるほど(笑)。
- 鶴瓶
- そうしたら
「クミちゃん、いまなんちゅう名前なん?」
とか言うと、また遠くのほうで
「旧姓はモリモトやったな」とか言うてるわけよ。
それを聞いてないふりして
「昔はモリモトやったやろ?」って。
- 糸井
- はぁぁ、技術だね。
- 鶴瓶
- 技術や、技術。
だって、そうやって名前言うたったら、
みんなよろこぶやん。
- 糸井
- そりゃあ、よろこぶよ。
それはだから、芸のひとつだよ。
- 鶴瓶
- そうやねん、芸やねん。
まずはじめに座ってる席をかえたるんよ。
「男と女がわかれてたらあかんやろ!」って。
- 糸井
- 「いまの時代はな!」って(笑)。
- 鶴瓶
- ほんで、そのあと俺、ずっと司会。
- 糸井
- ぜいたく(笑)。
- 鶴瓶
- 男らなんて無愛想やから、
まんべんなく話を振ってあげて、
ツッコミも入れてあげるんよ。
こっちも必死や。
もう「踊る鶴瓶御殿」なんよ。
- 糸井
- (笑)
- 鶴瓶
- だから終わったあとは、
みんな口々に「おもしろかったわぁ」って。
そりゃ、おもろいやろ!
- 糸井
- こっちはプロや(笑)。
- 鶴瓶
- そうや、プロや。
おもろいよ、そんなん。
だって、ふつうの人はそんな芸、
直に見たことないやん。
- 糸井
- ないない。
- 鶴瓶
- でも、めっちゃよろこんでくれて、
俺もうれしかったわ。
みんな「名前言えるんわ、異常や!」って。
- 糸井
- 人って20歳のときと、60歳のときって、
もう全然ちがうじゃないですか。
鶴瓶さんは、そこをつなげちゃったんだろうね。
- 鶴瓶
- そうそう、こんだけ時間が経つと、
人ってかわってるんよね。
もう同じ人じゃないんよ。
でも、やってよかった。
なんか、子どものときの
じぶんに戻れたっていうか。
- 糸井
- 旅だよね、時間を越えた旅。
- 鶴瓶
- みんなが言うには、
俺は昔から全然かわってないって。
- 糸井
- 学(まなぶ)は。
- 鶴瓶
- 学は全然かわってない。
ある女の子は
「マーちゃんは、昔からスケベやった。
あんた、いつも私にチョッカイ出してた」って。
- 糸井
- はははは。
- 鶴瓶
- 俺、その子のことよく覚えてるけど、
その子にそんなことしてないんよ。
でも、その子が言うには
「あんた、小学1年生のとき、
私にずっと卑猥なこと言うてた」って。
ふつう1年生で、そんなん言う(笑)?
- 糸井
- 言ったんじゃない(笑)?
- 鶴瓶
- 俺がいくら「ちがう!」言うても、
「言うてた、こんな卑猥なこと!」って、
また大きな声でなんべんも言うんよ。
その、卑猥なことを‥‥。
- 糸井
- それは困る(笑)。
- 鶴瓶
- ほんなら、他のやつも
「俺も聞いた。こんなん言うてた」って、
67歳のオバハンとオッサンの間で、
卑猥なことをずっと言いあってんのよ。
たのむから、もうやめてくれと(笑)。
- 一同
- (笑)
- 糸井
- それにしても、
全員の名前を言えるのってすごいね。
だれでもできることじゃないよ。
- 鶴瓶
- それで俺、家帰ってから、
もういちど名前を書きだしたんよ。ノートに。
- 糸井
- はぁぁ、そこがもう‥‥。
- 鶴瓶
- それは、ほんまに全員覚えてるか、
確認してみたかったんよ。
だれか忘れてるような気がして。
それで来てた子に
「ぜんぶで何人おった?」って聞いたら
「18人」言うから、
座ってる順に18人の名前をノートに書いたんよ。
そうしたら、ちゃんと18人あって、
ああ、よかった、みんなちゃんと覚えてたわって。
それで。その次の日や。
幹事やってた男から電話があって‥‥。
- 糸井
- ほう、男から。
- 鶴瓶
- それはお礼の電話やってんけど、
そいつに「18人も、よう集まったな」言うたら、
「18人ちゃうよ、19人やがな」って言うんよ。
- 糸井
- うわっ!
- 鶴瓶
- 俺も「うそっ!」ってなって、
「じゃあ、もうひとりはだれや‥‥」って。
どう考えても18人しか思いだせんのよ。
うわぁ、だれや、だれの名前やって、
よう考えたら‥‥‥‥あ、俺や。
- 糸井
- ぶはははは! サゲがあった(笑)。
- 鶴瓶
- あったがな、サゲが。
「あ、俺入れて、19人や」って(笑)。
(つづきます)
2019-02-09-SAT
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN