お久しぶりです、鶴瓶さん!
ほぼ日には2011年以来、
8年ぶりのご登場となる笑福亭鶴瓶さん。
たっぷり糸井と語ってくださいました。
人気番組『家族に乾杯』のこと。
52年ぶりの同窓会のこと。
ももクロのこと。うれしかったことばのこと。
そして、鶴瓶さんの愛する落語のこと。
気心のしれた者同士、ふたりの会話は
軽やかにポンポン飛びはねていきます。
いっぱいしゃべって、いっぱい笑って、
途中、いっしょに給食もいただきました。
できることならずっと聞いていたい、
ふたりの「いま」が詰まったフリートークです。
深く、ゆるく、全9回。どうぞ!
- 糸井
- そうそう。これ、もう見ましたか?
- 鶴瓶
- うん、なにこれ? 見てない。えっ?
- 糸井
- すでに乗組員たちが着ております。
- 鶴瓶
- あぁ、みんな、丁寧に生きてるな(笑)。
- 糸井
- チームがね(笑)。
- 鶴瓶
- チームが丁寧やわー。
- 糸井
- いいでしょう、これ。
ぼくが『桃色つるべ』に出たとき、
鶴瓶さんのTシャツの話になったでしょう。
「こんなのつくったらどう?」って。
- 鶴瓶
- おぉー、あった、あった。
うふぉっ、ふぉふぉ(笑)。
- 糸井
- いつも胸に「べぇ(BE)」を(笑)。
- 鶴瓶
- あぁ、ほんまにつくったんや。
うわー、うれしい。
はぁぁ、これ、すごいええやん!
- 糸井
- 最初からずっとここにあったんだけど、
全然気づかなかったね。
- 鶴瓶
- そんなん、全然気づかんよ。
まさかそんなんしてくれてるとは思わへんし。
- 糸井
- プレゼントです。どうぞどうぞ。
- 鶴瓶
- わぁ、うれしいわ。ありがとう。
はぁぁ、すごいな。
こういうTシャツとか、
他にもいろいろつくってるんやろ。
Tシャツと本と、あと手帳か。
あれもすごいらしいな。
- 糸井
- やっぱり手帳ですね。
いま、うちの売上の6割は手帳なんです。
- 鶴瓶
- あの手帳をいっぺん使うたら、
また次の年も買ってまうらしいな。
やめられへんって。
手帳やから、毎年買ってまうって。
- 糸井
- それ、偶然なんですよ。
たまたまヒットしたものが、
来年も買うような商品だった。
- 鶴瓶
- わからんとやってたわけや。
- 糸井
- つまり、ぼくらはじぶんたちが
使いたいものをつくるだけだったから。
「こんなのを人はほしがるだろう」で、
つくるんじゃなくて。
- 鶴瓶
- 「こんなの人がほしがってる」は、
そのときは飛びついても、
次がつづかんからね。
- 糸井
- やっぱりそういうものには、
「いのち」が入んないんですよ。
友だちにプレゼントしたいとか、
じぶんがほしいものって、
もうそれだけで精一杯やるでしょう。
「いいものつくって売ろうぜ」というのとは、
またちょっと気持ちがちがうわけで。
- 鶴瓶
- 糸井さんの場合、
お金もうけしてもしゃあないと思うほうやろし。
もうけようとも思ってないやろし。
- 糸井
- それはたぶん、
鶴瓶さんが劇場をほめて、
公演やっちゃうのと同じ話ですよ。
- 鶴瓶
- ああ、ああ、そうや(笑)。
だから俺、そういうところ行ったら、
そういうの言わんとこって、
ものすごい我慢してるもん。
- 糸井
- でも、鶴瓶さんの場合、
その劇場に行っても、行ってなくても、
そんなにちがいはないと思いますよ。
だって、山奥でテレビカメラ連れて歩くか、
そこで落語するかのちがいだもん。
- 鶴瓶
- まあ、そうやね。
やることはどこ行ってもいっしょ。
あんた、うまいこと言うな(笑)。
- 糸井
- やっぱり手編みのセーターなんですよ。
鶴瓶さんは、大勢じゃなくて、
3人しかよろこばないような場所でも、
全然かまわないわけだから。
それはぼくらも根本的には同じなんです。
- 鶴瓶
- そういや、いっぺんね、
江川卓さんに落語したことがあるんよ。
あの人、すっごいええ人やろ。
息子さんが結婚したからって呼ばれて、
俺、お祝いに落語するわ言うたんよ。
向こうも困るやろうと思ったんやけど(笑)。
- 糸井
- それは式場で?
- 鶴瓶
- いやいや、家族だけのときに。
- 糸井
- え、家族だけにやったの?!
- 鶴瓶
- そうや。
江川卓さんもまじめな人やから、
正座してジーーっと真剣に聞いてたわ。
- 糸井
- それ、聞いてるほうが緊張するよ(笑)。
- 鶴瓶
- 俺、つんくにもやったからね。
あいつ、落語が好きやからって、
いっしょに飲んで、
つんくの家に行こうってなって、
むこうからは言わへんかったけど、
俺の落語聞いたことないっていうから、
じゃあ、ここでやろうかって。
- 糸井
- そんな人、ふつういないから(笑)。
- 鶴瓶
- 子どもを寝かしつけたあとに、
つんくと奥さんと、ほんで、俺。
- 糸井
- 3人!
- 鶴瓶
- しかも、つんくのやつ、
やり出したら寝だしたんよ。
奥さんはすんごい聞いてたけど。
- 糸井
- 2人とも寝たらえらいことだ(笑)。
- 鶴瓶
- ひとりは起きててよかった(笑)。
- 糸井
- それはなにをやったの、小噺?
- 鶴瓶
- いやいや、落語やんか。
- 糸井
- はぁぁ、ほんとうに一席やっちゃうんだね。
- 鶴瓶
- 和田アキ子さんにもやったな。
そんときは「錦木検校」いうやつ。
「三味線栗毛」のちがうバージョン。
- 糸井
- はいはい、人情噺だ。
- 鶴瓶
- そんときはアッコさん、えらい感動しはって、
「ウ、ウウゥゥ‥‥!」って泣き出してもうて。
そこからすごい落語が好きになったって。
- 糸井
- フィットした落語を聞いたら、
もうそこからハマっちゃいますよね。
- 鶴瓶
- そうそう。
- 糸井
- ぼくは毎年冬になると
落語の「しじみ売り」を思い出すんです。
いまなんかダウンジャケット着て
「寒い寒い」言ってるような季節に、
昔は木綿だけ着て、
わらじのまま川でしじみをとって、
それを売ってた子どもがいたのかあって。
そういうのだって、
ぼくがその落語を聞いてなければ、
そんなはるか昔の子どもの寒さについて、
なんにも考えなかったわけで。
- 鶴瓶
- わからんかったやろね。
やっぱり落語って、長い歴史のなかで、
いろんな場面を人のこころに
残していくんですよ。
ほんま、だから、
落語ってすごいもんやと思いますよ。
(つづきます)
2019-02-14-THU
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN