第6回 荒野を行く人たちを。

桜井 いちばん若かった社員のスタッフは、いま
「笑っていいとも!」
チーフプロデューサーになってます。
福原 そうです、そうです。
イトイ 大出世だね(笑)。
福原 よく出演もしてくれました。だから彼は、
「お願いですから、自分が出てるところは
 DVDで使わないでください」
と言ってきました。
イトイ あ、そりゃそうだ。
福原 いまの「いいとも!」のディレクターやADは、
驚くでしょうね。
「こんなことしてたよ」って、見せたら。
イトイ 「昔、あいつ、裸踊りしたんだ」
みたいなことですね。
桜井 「はだかでかがく」というコーナーでは、
マジで裸踊りしてたから(笑)。
でも、屯田兵を経験したことは
ほかのいろんな人にとっても
よかったと思うんです。
イトイ 徴兵制は、アリですねぇ。
何というのかな‥‥つまり、
クリエイティブ徴兵。
一同: (爆笑)
福原 徴兵された屯田兵が
スタッフルームに集まって、
テラスでよくバーベキューをやってました。
何かあるとバーベキュー(笑)。
バーベキュー当日は
近所に手土産を持っていって、
「今日、バーベキューやります。
 うるさくなってすいません」
って挨拶してまわりました。
桜井 怒られてたのよ、よく。
イトイ そのへんの話は、
いちいちいいですね(笑)。
桜井 買い出しも、みんなで行くんです。
イトイ そこは仕事をストップしてもいいんだよね?
桜井 いいの、いいの。
福原 それが仕事です。延長です。
桜井 スタッフのなかには、必ず
バーベキューを焼く才能のある人がいるわけ。
「僕は家事できます」という
テバちゃんって男の子もいたね。
教えれば器用に何でもできたから、
私がいないときは彼が鍋を作ってました。
福原 あいつは本当にスタッフルームに
住んでたなぁ。
彼はその後、阪神大震災のときに
取材チームとして行ったんですけれども、
炊き出し役をやっていました。
ものすごく重宝されてましたね。
イトイ 一度屯田兵の徴兵を経験した人が‥‥
桜井 彼はいま和歌山かどこかで、
ペンションをやってるらしいです。
イトイ すごい! そういう人生になったんだ。
桜井 うん、すごく合ってると思う。
イトイ 桜井さんは、そういった
屯田兵型のプロデュースが
もともと心の中にあった人なんですか?
桜井 自然にそうなっちゃうんだよね。
「カノッサの屈辱」のときもよく
ご飯炊いて食べてたし‥‥。
なんでそうなっちゃうのかなぁ、と
改めて考えますと、
私は編集もしないし、
音効さんのように夜中じゅう
作業ができるわけでもないから、
「ご飯作るぐらいなら何かしましょう」
という、そんなことが動機じゃないでしょうか。
イトイ プロデューサーとしての仕事は
もちろんあるけど、そのほかに
「私のできることって何?」
ということですね。
そのへんの気分というのは、
僕らの会社もよく「文化祭みたいですね」って
言われるんですけど、同じですね。
桜井 同じですね。
福原 しかし、いわゆる戦術というものは
ロジスティクスが第一です。
ロジスティクスの部分を
しっかりさせてくれたのも、桜井さんです。
桜井 しかも、それはやっぱり‥‥
イトイ 勧進帳を読んでたんだ、と(笑)。
桜井 片方で勧進帳を読みつつ、
もう一方の戦術‥‥つまり、
どんな大戦を思っても
荒野を行くのに必要なのは
メシですよ。メシ。
ダイニング部隊ね。
イトイ いや、そのとおりですね。
桜井さんは、責められたくないわけですよね、
余計な人たちに。
福原 そうそう。
イトイ 桜井さんの世代の人は、
よけいな教養をもっていたりしますし、
河井寛次郎とかを出せば‥‥
桜井 それなりにしゃべっちゃいます。
福原 だから、われわれはなんか‥‥
イトイ のびのびした感じになる(笑)。
福原 「チョーット待ったー!」と言われるまで
安心してワーッと遊びに行ける。
そういう世界を
桜井さんが作ってくれたんです。
 
(続きます)
2008-05-23-FRI
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