牛と海苔が去ってって、1か月たたないくらいのころ、
わたしは友人たちと、福島に遊びに行った。
ほんとうの飼い主・Hさんとは、
なんだか仲良くなって、電話でおしゃべりしたりしていた。
ちょっとした、親戚みたいになっていた。
たしかに、こどもを預かっていた
ということでは、親戚みたいなものなのだろう。
ねこでつながった、ちょっぴり不思議な関係。
Hさんはもともと、9匹のねこを飼っていた。
いまでも、自宅の近くでは野生化してしまって、
捕まえることができない子がいる。
その子を除いて8匹が、
仮設住宅のHさんのちいさな部屋で、
暮らしている。
その仮設住宅に、遊びに行った。
入ると、たくさんのねこがお出迎えしてくれた。
その中に、牛と海苔も、いた。
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▲黒いのが海苔で、白と黒が牛。
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「感動の再会」になるかと思っていたけれど、
ねこがたくさんで、それどころじゃなかった。
どの子も、牛と海苔のように、
人間が好きで、すごくスリスリしてくるタイプ。
「あ、兄弟なんだな。血はつながってないけど」
と思った。
牛と海苔は、その血のつながっていない兄弟たちと
仲良くやっている様子だった。
(けっこうケンカもしているらしい)
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▲再会を必死で記録する、わたし。
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見てると、その8匹の中では、
牛と海苔がコンビ、というわけではなかったようだ。
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▲ビーくんに毛づくろいしてもらっている、牛。
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牛と海苔は、たぶん、わたしのことを
わかっているようだった。
たぶん。
でも、やっぱり不思議なことに、顔がちがった。
表情というか、
ちょっと他人行儀になったんだ。
ねこにも、その家その家での顔と、役割がある。
うちにいたころの顔は、そこにはもう、ない。
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▲牛かな? と思いきや、ブタ吉くん。
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ひとつ、おどろいたことがあった。
牛と海苔は、
いまも福島で、
「牛」と「海苔」という名前で呼ばれているのだ。
もともとは
「ギャオ」と「かわいこちゃん」という名前があって、
それを知らずに、
わたしが勝手に「牛」と「海苔」と
呼んでいただけのことだったけれど、
ほんとうの飼い主・Hさんも、
その名前で呼んでくれていたのだ。
わたしは、うれしかった。
海苔。
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牛。
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お茶を飲みながら、たくさんおしゃべりをして、
ねこたちと遊んでいたら、
すっかり夜になってしまった。
「また、遊びに来ます」と約束をして、
わたしたちは、そこをあとにした。
帰るとき、外に出たら、
入り口のドアの窓に、牛が、来た。
それは、わたしの家にいたころ、
留守から帰ってくると、
かならず玄関横の部屋の窓から見えていた、
牛と海苔の姿と同じだった。
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たのしくて、ちょっぴりせつない福島への旅が終わった。
わたしはまた遊びに行くだろうし、
ほんとうの飼い主・Hさんとの
不思議な親戚みたいな関係も、続いていく。
バイバイ、またね。
これから、寒くなるだろうけど、元気で、
たのしく暮らしてね。 |
(ほんとうにおわり)
2011-11-02-WED
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