2匹のねこがやってきて、去ってった。〜牛と海苔の思い出〜あれは4月のことだった。我が家に2匹のねこがやってきた。誰に飼われているのか、名前も、性別も、年齢もわからない。わかっていることは、同じ家で飼われていたっぽいということだけ。5か月間の共同生活の記録を、「文と写真:ゆーないと」でお届けします。
最終回

お別れの日がやってきた。
ミグノンさんが、ほんとうの飼い主・Hさんと、
朝5時に福島で待ち合わせをしている、というので、
夜中に2匹を、
都内の待ち合わせ場所へ、連れて行くことになった。

出発までの時間、いつもよりだいぶ早めに帰って、
家で、しずかに過ごした。
2匹は、気づいているのか、気づいてないのかは、
わからないけれど、
わたしがソファに横になると、すかさず、
おなかの上に2匹で乗ってきた。
こんなことは、めったにない。
それが、うれしくて、また泣けた。
気づいてるのか、気づいてないのか。

わたしは必死で、
おなかの上に乗っている2匹の写真を撮った。
へんに動くと、2匹がどいてしまうだろうから、
細心の注意を払いながら。

▲ブレちゃう。

そのうち、わたしのおなかの上では、
牛の毛づくろいがはじまった。

▲牛の白目こわい‥‥。

▲あいかわらず、必死でガマン中の海苔。

いつものように毛づくろいで、争いが起こることもなく、
2匹はおだやかに、過ごしていた。
ひょっとしたら、気づいているんだと思った。
牛と海苔は、人間のことばを、
ちゃんと理解してるように見えるので、
お別れ前の日々は、
ちょっとしょんぼりしているように、見えた。
もちろん、わたしの勝手な解釈だけれど。

海苔が、おなかを出して、
わたしの脇にはさまっている。
おなかの上には、牛がいるし。
最後の、至福の時間だ。
牛と海苔は、この5か月間、たのしかったかな?
わたしは、ほんとうに、たのしかった。
色んな思い出を思い出しながら、ちょっとうとうとした。


夜中、友人たちも来てくれて、
みんなで車で、待ち合わせ場所に移動した。
キャリーに入っている2匹は、
初めて会った日と同じように、しょんぼりしていた。
「自分たちは、どこに行くんだろう」
と、不安に思っているように見えた。
「だいじょうぶだよ、福島に帰るだけだよ」
と、せいいっぱい、はげました。

2匹は、たくさんの物資を積んだ
大きな車の後部シートに積まれて、福島へ向かった。


牛も海苔も、元気でね。
会いに行くね。
会いに行ってもいい?
近々、会いに行ってもいい?
たのしく、暮らしてね。
いい子でね。

「心にぽっかり、穴があく」
という表現があるけれど、
ほんとうに、大きな穴が、あいた。
これが、
「預かりボランティア」の運命(さだめ)なのだ。
でも、ほんとうの飼い主さんは
とってもよろこぶだろうし、
かわいがってもらえるから、だいじょうぶ。


我が家にやってきた2匹のねこは、
去ってった。








ありがとう。またね。

(おわり。更新は明日、もう1回あります)

2011-11-01-TUE
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