第9回
理想の組織は、小粋なチーム
理想の組織は、小粋なチーム
重松 |
おもしろいのは、 曖昧な部署でイキイキやってる課長は、 自らで「ロボット研究所の所長です」とか 勝手に作っちゃうわけ。 「夕日課長です」とか、自分で俗称を(笑)。 やっぱり、自分のキャッチフレーズって、 ほしいんですよ。 |
糸井 |
今、中国では、こういうふうな はたらきかたには、なっていないでしょうね。 |
重松 |
まだ、ならないと思う。 |
糸井 |
中国でもインドでも、 こんなふうにはならないと思うと、 日本が今いる場所っていうのが、 意外に、市場価値としては 魚のいっぱい住んでいる 豊かな海なのかもしれないって、 ちょっとだけ思えてきますね。 国際競争力的には弱いとかね、 いろいろ日本は、 ダメだダメだって言われてるじゃないですか。 もちろん、 ダメなところはダメであるわけだけど、 この雑魚の群れこそが、 付加価値の高いタタミイワシの原料なんだ、 みたいなところがあって(笑)。 |
重松 |
そうそう、あれ、高いです、値段は。 |
糸井 |
ちょうど最近、 百万分の1グラムの歯車を作った会社の 松浦さんだとか、 痛くない注射針を作った岡野さんとか、 そのへんの本を読んでいたんですけど、 今って、会社の中で課長をやっている人の中にも、 岡野さんや松浦さんみたいなの、いますよね。 昔だったら、上から圧力が来たときには、 戦ってスピンアウトするんだろうけど、 今はその、「上の力」自体が なくなっているって感じがあるから。 |
重松 |
そうそう。 結局、あたらしい部署が多いんです。 しめつけがあるどころか、 ワラにもすがる思いで チョウザメ課を作ったわけで、 それは、現場としては、ラクかもしれないです。 |
糸井 |
この本がたぶん、たとえば、 『ニッポンの事業部』っていうタイトルにしたら、 きっと、利益をあげているところから 取材しなければならないでしょう? でも、「課長」という個人を見たから、 おもしろかったわけで。 |
重松 |
そうなんですよ。 ヘンな話だけど、今は、 パーツを見るしかないと思うんです。 本には「十年後にまた会いたい」って書いたけど、 たぶん十年後に社長になっている人間は いないと思うし。 たぶん、十年後に会社がなくなってる人も いらっしゃるかもしれないわけで(笑)。 |
糸井 |
いや、きっと、社長もいるんじゃないかなぁ。 |
重松 |
社長もいる? ロボット研究所が独立したり? |
糸井 |
分社するなら、五人でやったっていいんだもの。 |
重松 |
たしかに、ね。 課長さんには、一匹狼でやっている人も多いし、 けっこう、「スタンドアローン」みたいな味を、 取材をしている中では、何度も感じました。 |
糸井 |
会社でも、どれだけちいさくできるかの競争が、 はじまっているのかもしれないね。 かつては、工業製品を小さくする競争が、 あったじゃないですか。 工業製品って、かならず 時代のメタファーでもありますから、 組織も後からその方向に行くと思うんです。 今は、スケールの大きさに、 メリットがなくなっているんだもん。 かえって、大きくなったからこその リスクが増えているわけで。 今は、四番打者を揃えたジャイアンツが、 ちっとも人気ないじゃないですか。 一応、前からのブランド力で人気があるけど、 今からヨーイ・ドンってやったら、 やっぱりヘンなチームですよね、あそこは……。 やっぱりこう、ステキなチームって、 大きいだけじゃなくて、 軽くて、速くて、小さくて、強い、というか。 |
重松 |
つまり、小粋なチームですよね(笑)。 小粋なチームがいいですよね。 |
糸井 |
(笑)小粋! で、ホロリとさせるみたいな感じが最高ですよね。 |
重松 |
(笑)昔のヤクルトなんかがそうでしたよね。 関根監督時代は、小粋な負けっぷりがよかった。 巨根主義は、もう終わりなんでしょう。 |
2015-01-05-MON
タイトル
チームプレイ論。
対談者名 重松清、糸井重里
対談収録日 2004年2月
チームプレイ論。
対談者名 重松清、糸井重里
対談収録日 2004年2月
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