第12回
目を届かせない管理
目を届かせない管理
重松 |
組織の中にできるルールって、 「宗教の発生」みたいなもんですよね。 |
糸井 |
まったくそうです。 ブランドにしても、 何々先生のゼミっていうのも、 たぶん、ぜんぶの組織は、まずは 宗教のかたちにするしかないと思うんですよ。 「ほぼ日」だって、やっぱりそうですもんね。 それは否定できない。 |
重松 |
ええ。 |
糸井 |
ただ、ぼくが言っていることを 誰かが同じように受け継いでいくっていうことは、 きっと「ない」と思うんです。 同じように受け継ぐことがないかわりに、 「もっといいことが生まれるかもしれない」 とも思っているんです。 |
重松 |
そこに興味があるんです。 「ほぼ日」が、糸井さんのセレクトショップならば、 そのときの糸井さんの選択に、 ぼくたちが信頼を置く、 というのがあるじゃないですか。 もしも、ですけど、糸井さんが引いちゃった後に、 どうなっていくのか…… それを、今の時点で、うかがったみたかったんです。 技術や段取りのところは、引き継いでいけても、 センスというか、性格までは、 たぶん引き継いでいけないですよね。 組織の中でのそういうものの受け継ぎは、 どうなると思っていますか? |
糸井 |
もちろん、そうなったときには 「違うもの」に変わっていくんだと思うんです。 ただ、ぼく自身も変化してますからね。 そういうところでは、たぶんぼくは、 「ちょっと鷹揚に構えていたほうが いいんじゃないかなぁ」 と考えているんじゃないでしょうか。 「ほぼ日」でも、ぜんぶぼくの目が届いています、 という言い方をしなきゃいけない機会もあったし、 してた時期もあったんですけど、 今は、目が届いていないことを、 よしとしているんです。 たとえば、野球チームにしても、 監督が指揮をとってはいるんだけど、 あの選手がいなかったら、 このチームであるはずがない、 という選手、いますよね? そういう状態の組織を、 ぼくは、「たのしい」と思っているんです。 |
重松 |
なるほどなぁ。 |
糸井 |
あんまりカリカリしてたら、 社員の伸びる余地がなくなるから…… っていって敢えてバカになる、というか。 ぼくが会ったすごい経営者って、 「なんとか頭を使っているバカ」 みたいな人が、多いですよ。 |
重松 |
イトイさんの会社の社員に 子どもがいるっていうことが、 やっぱり象徴的ですよ。 世代的には、イトイさんは 「おじいちゃん」になったってことですよね。 ……で、おじいちゃんは、やっぱり、 みんなに愛されないといけない(笑)。 |
糸井 |
(笑) |
重松 |
ちょっとボケていて 「はいはい、あらあら、またこぼして」 って言われながらね。 |
糸井 |
まぁ、おもらしぐらいは、しないとねぇ。 |
重松 |
(笑)30代の経営者が事務所を作って、 若手が集まってくる会社には、 そんなことが起きないじゃないですか。 だから、カリカリもしてくる。 だけど、おじいちゃんの歳になっちゃうと、 「愛されるおじいちゃん」という経営者像って、 ありだと思うんですよね。 |
糸井 |
うん。 やっぱり、ぼくの理想って、 藤田元司監督なんですよ。 ずっと近くにいさせてもらった時期に、 チームにどう接しているかを見ている中で、 やっぱりぼくは、藤田さんの そこの部分を見ていたんだなぁと思う。 藤田さんは、選手に、あんまり、 利口そうなことは言わないんです。 だけど、説明をさせると、できる。 できるのに、しないだけなんです。 審判が、ものすごい細かいところの ルールをまちがえたときに、 パーンと走っていく監督って、 あんまりいないですよ。 いざというときには そういうことをできるんですね。 |
重松 |
それでも、それをひけらかしはしない。 |
糸井 |
しないんです。 |
重松 |
確かに、川上監督を見て長嶋監督を見たら、 学習するんじゃないですか? 両極端を見ちゃうと、 いろんなことを思う……(笑)。 |
糸井 |
ほんとにそうですね。 |
2015-01-05-MON
タイトル
チームプレイ論。
対談者名 重松清、糸井重里
対談収録日 2004年2月
チームプレイ論。
対談者名 重松清、糸井重里
対談収録日 2004年2月
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