第14回
ほんとは戦争のように重い仕事
ほんとは戦争のように重い仕事
重松 |
経営者セミナーなんかでは、 まだ結局は、戦国時代の武将が ひとつのモデルになっているじゃないですか。 未だに「信長的なリーダー」とか(笑)。 |
糸井 |
(笑) |
重松 |
でも、あれはほんとに 恐怖政治でやってきたわけで、 「キレる社長」じゃないですか。 だったらやっぱり、 天下泰平のときの将軍とかね、 そういうのをモデルにしたほうが、 実は今からの時代はいいのかもしれません。 |
糸井 |
信長のようなデカいスケールの仕事は、 ないんだもんね。 |
重松 |
その面ではやっぱり、 星野監督が阪神タイガースを率いて制覇した後の、 二代目の岡田って、いいラインじゃないですか? |
糸井 |
(笑)おもしろい。 パリーグの方には、大沢監督とか、仰木監督とか、 ときどき「和服の似合う監督」が いるじゃないですか(笑)。 選手たちは、その監督たちのことを、 うれしそうに話すんですよねぇ。 |
重松 |
愛されてるんだよね、やっぱり、 「突っこみどころ満載」っていうのが、 人間として好かれていて。 |
糸井 |
やっぱり 「パーフェクトな機械になれ」っていう命令は、 書面上は成り立つんだろうけど、 誰も言うことなんか聞きやしない……。 |
重松 |
そうそう(笑)。 それに好かれてるバカ殿は、 やっぱり、現場が好きなんですよね。 課長スピリットというか、 課長である部分をどこまで残して 社長になるかって、大事かもしれない。 課長って、仕事を作らないと、居場所がないから。 |
糸井 |
そうかもしれない。 仕事って、 動かし続けるだけでも大変ですから。 「止めるわけにはいかねぇんだ!」 って言ってるわけだけど、 でも、いつかは止まっちゃうんですよね。 経営者は、止まっちゃったときにどうするか、 未来像から逆転して考えて、 課長を育てていかなければならない。 いい課長を育てる経営者って、 いい経営者じゃないですか? 「自分さえも 小さな会社みたいに変えていくこと」 って、もしかしたら、フリーの仕事を している人にだってあるテーマかもしれないなぁ。 昔だったら、大きいものを小さくするって、 店をたたんだとか言われたもんだけど、 今は、そういうものに可能性があるのかもね。 |
重松 |
ただ、トップがアホだと、 いちばん迷惑するのは課長クラスだったりする。 「トカゲの尻尾切り」みたいに 末端がやられるんじゃなくて、 むしろ「おなか」が傷つけられてしまうケースが 多いと思いませんか? ぼく、太平洋戦争がらみのドキュメンタリーを 何本かNHKで手がけたとき、 日本の陸軍について調べたんですよ。 すると、士官学校の教育がじつに興味深かった。 士官学校は、幹部候補生として、 小隊長を育てていくんですけど、 小隊長って課長の役割なんです。 ところが、戦局が悪化していくにつれて、 小隊長クラスが次々に戦死してしまう。 前線の部隊の先頭に立ってひっぱっていくぶん、 戦死する数も多い。 トップの判断の誤りで、優秀な幹部候補生が 次々に失われていくという、 次の時代へも影響を及ぼしてしまう。 |
糸井 |
それは重いね、命がかかっているとね。 |
重松 |
重いですよ |
糸井 |
でも、会社って、 ほんとは、そのくらいの重さがあるんだよね |
重松 |
そうだと思います。 家に帰れば、それぞれの家族がいるんですもん。 |
2015-01-05-MON
タイトル
チームプレイ論。
対談者名 重松清、糸井重里
対談収録日 2004年2月
チームプレイ論。
対談者名 重松清、糸井重里
対談収録日 2004年2月
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