- ──
- やまなみ工房さんみたいに、
アートや創作の活動をしている施設は、
あんまりないんでしょうか。
- 山下
- ここ最近、増えてはきてるようですね。
少ないとは思いますけど。
やはり、内職や下請けをしながら、
工賃を捻出するのが、
まだまだ一般的なんじゃないですかね。
- ──
- そうなんですね。
- 山下
- うちは、たまたまこうなってますけど、
そもそも、
もうけようなんて思ってなかったから。
- ──
- でも、作品が売れちゃって。
- 山下
- まあ、売れる人の作品は、売れますね。
いまじゃ、スタッフの給料より
もうけてる人もいるんじゃないかって。
それが正直なんとも複雑というか‥‥
うらやましい‥‥。
- ──
- 施設長、心の声が聞こえました(笑)。
ちなみにですけど、
世間の目が変わったタイミングって、
いつくらいからですか。
- 山下
- やっぱり笠谷さんがここに来てくれて、
「PR-y」をやってくれた、
そのころから、
それまでの福祉業界の枠を越えて、
いろんな人に届くようになりましたね。
- ──
- つまり、7年とか8年くらい前。
- 山下
- それまでは障がい者のアート展だとか、
そういうところに出たり、
お寺の朝市に出たり、
自分たちで、駅前にテーブルならべて、
これ見てください的な。
- ──
- 地道な活動ですね。
- 山下
- 地道すぎる‥‥し、作品だって、
最初は売ろうとも思ってませんでした。
えーっ、こんなんほしいの?
じゃ、どうぞ、あげます‥‥みたいな。
- ──
- あげちゃった!
- 山下
- 買ってくれてった人だって、
当時は障がい者がつくったからだとか、
かわいそうだからとか、
同情的な気持ちが強かったと思います。
そもそも、お金を出して買ったモノを
忘れて帰る人とか、多かったですもん。
- ──
- そのような感じが続いていたところで、
笠谷さん登場。
- 山下
- はい。ぼくらにしてみたら、
思いもよらない、かっこいい作品集を、
つくってくれた人なんです。
それまでは
どんくさい手刷りパンフレットだけで
やってたわけですが、
笠谷さんが、いいものはいいんだ、
障がい者かどうかは関係ないんだって、
彼らの作品を正当に評価し出したら、
どんどん‥‥海外からも
問い合わせが来るようになったんです。
- ──
- へええ。
- 山下
- そういう人ばっかりじゃないですけど、
でも、言ってみれば、
アーティストとして評価してもらえた。
この素敵な絵を描いた人に、
大変な障がいがあるかどうかなんて、
関係ないでしょう‥‥って。
- ──
- 海外のすごい美術館からオファーが来たり。
- 山下
- ダンボールに恐竜描いてた人なんか、
こないだもらったお給料なんて
福祉施設で考えたら、すごい額です。
お母さんに聞いた話ですけど、
ご本人にそれで何すんのって聞いたら、
ガチャガチャ3回って。
- ──
- 笠谷さんがここに来たタイミングでは、
何でしょう、まだ、作品に
「額縁」がついてなかったわけですね。
- 笠谷
- そうですね、はじめて拝見したときに、
もったいないなとは感じました。
- ──
- もったいない。
- 笠谷
- すごい作品もあるのに、埋もれていて。
ぜんぶ一緒くたに、
障がい者アートだよねと思われるのが、
もったいないな‥‥と。
- ──
- やはり、アートの専門家からしても、
やまなみ工房にも、
いいものと、そうでもないものとが。
- 笠谷
- それは、もちろん、そうですよね。
全員に魅力は感じてはいないです。
もちろん、人として好きな人は
たくさんいますけど、
作品だけで言えば、
本当に好きなのは数人、ですね。
- ──
- たとえば‥‥。
- 笠谷
- 寝そべって描くインクマンの岡元さん、
「目、目、鼻、口」の吉川さん、
あとは、
点と線で描かれる森田郷士さんですね。
- ──
- なるほど‥‥。
- 笠谷
- その3人の作品は、とにかく好きです。
そういう人たちの作品に、
きちんとした光が当たるようになって、
正当に評価してくれる人の目に
きちんと触れる機会を、
もっと増やしたいなあって思ってます。
- ──
- そういう意識、ずっとあったんですか。
以前から「福祉」には興味があったと、
おっしゃってましたけど。
- 笠谷
- そうですね‥‥ありましたね。
はじめて吉川さんの作品を見たときに、
山下さんに
「買いたいんですけど」と言ったら、
「500円」と言われて、
そこでちょっと腹立ちましたし(笑)。
- 山下
- すんません。
- ──
- 最大の理解者である
山下さんでさえそうだったってことは、
「PR-y」を進める上では、
周囲の理解というか、
ご苦労も、相当、あったんでしょうね。
- 笠谷
- さんざん批判されました。
まず、障がい者の顔を出すこと自体が。
- ──
- ああ‥‥顔を出すどころか、
おしゃれな服を着て、ポーズをとって
「バチーン!」ですもんね。
- 笠谷
- 福祉のこと何にもわからんくせに、
障がい者の顔出すなんて、
どういうつもりだ‥‥みたいな。
- ──
- 岡元さんなんか超カッコいいですけど。
- 山下
- この写真集をね、子どもたちに見せると、
みんなカッコいいって言うんです。
自分もこのお兄ちゃんみたいになりたい、
この人、何してるんですかって、
じつは、こんな絵を描く人なんだよって
インクマンの絵を見せたら、
みんな、わぁ、すごいって言うんですね。
- ──
- カッコよくて絵が描けたら、憧れますよ。
- 山下
- ただでもね、この人じつは
みんなと違って勉強が苦手でと言っても、
何かそんなこと、
すでに、どうだっていいじゃないですか。
- ──
- ほんとだ。
- 山下
- ぼくら、いままで、
まったく逆の紹介をしていたんですよね。
できないことや苦手なこと、
ネガティブなところばっかりを強調して、
少しでも理解してくださいって。
- ──
- ええ。
- 山下
- 結局、そのことが
かわいそうな人なんだってフィルターを
つくってしまったんです。
- ──
- なるほど。
- 山下
- 結果的に、福祉に関わるぼくらが、
偏見や差別をつくり出してしまっていた。
でもそうじゃなく、彼らの得意なことや
人としての魅力に焦点を当てて、
その部分を紹介することで、
人の見る目ってガラッと変わるんだなと。
- ──
- はい。
- 山下
- ぼくが見てもカッコいいと思いますもん。
写真のなかの、インクマンのこと。
<つづきます>
2019-07-15-MON
やまなみ工房のアーティストの作品を、
TOBICHI2に展示します!
山下完和(まさと)施設長はじめ
やまなみ工房のみなさんが、
滋賀から車で運んできてくださいます。
やまなみ工房まで行かずとも、
直に作品を鑑賞できる貴重な機会です。
また会期中は連日、
19時30分~20時30分のスケジュールで
『地蔵とリビドー』を上映します。
会場はTOBICHI2で、料金は1000円。
料金の中に山際正己さんの作品
「正己地蔵」代が含まれていますので、
当日ご観覧くださったかたは、
お好きな「正己地蔵」をお持ち帰りいただけます!
今後、東京近郊での上映は未定なので、
どうぞ、おみのがしなく。
ぜひ、展示作品を鑑賞したあとに、
ドキュメンタリーを観て帰ってください。
初日18日(木)の上映終了後には
山下施設長と
映画を撮った笠谷圭見さんの
アフタートークを開催(30分の予定)。
詳しいことは、
こちらの特設ページでご確認ください。
- 会期
- 7月18日(木)~28日(日)
- 時間
- 11時~19時 ※会期中無休
- 会場
- TOBICHI2
- 住所
- 東京都港区南青山4-28-26 MAP
- 料金
- 無料
- 会期
- 7月18日(木)~28日(日)
- 時間
- 19時30分~20時30分 ※1日1回上映
- 会場
- TOBICHI2
- 住所
- 東京都港区南青山4-28-26 MAP
- 料金
- 1000円(正己地蔵1体つき)
参加方法など詳しくは、こちらの特設ページで。
協力:RISSI INC
8月24日(土)~8月30日(金)
「地蔵とリビドー」上映
@京都シネマ:20時20分~
※初日のみ、笠谷監督・山下施設長の舞台挨拶あり
〒600-8411
京都府京都市下京区水銀屋町620
COCON KARASUMA3F
https://www.kyotocinema.jp
8月24日(金)25日(土)
DISTORTION3 2020SS
@しまだいギャラリー:11:00~19:00
〒604-0844
京都府京都市中京区 仲保利町191
http://shimadai-gallery.com
8月16日(金)~8月26日(月)
「いのちといのちーやまなみ工房のいとなみ」
川内倫子写真展
@アンテルーム京都:11時~21時
※17日(土)17時より18時30分まで
川内倫子と施設長・山下完和のトークショーあり
〒601-8044
京都府京都市南区東九条明田町7
https://hotel-anteroom.com/