- ──
- 「PR-y」の取り組みのなかで、
笠谷さんが
いちばん大切に考えていることって、
何でしょうか。
- 笠谷
- やっぱり、アートだったら、
本物のアート市場で評価されること。
洋服をつくるんだったら、
ただの「お土産Tシャツ」じゃなく、
ちゃんとカッコよく、
ファッションが好きな人に
評価してもらえるクオリティにまで、
仕上げること‥‥ですね。
- ──
- 同情とか、そういうのじゃなく。
- 笠谷
- だから、写真集にしても、
いわゆる障がい者の福祉施設を撮った
ドキュメンタリーには、
絶対に、したくはなかったんです。
そういうの、目立ちもしないですし。
- ──
- 全編モノクロだし、思いっきりな
ファッションフォトになってますね。
- 山下
- いつもの、よくある、ふわっとした、
みんなで手をつないで
仲良くやってます的なのじゃなくね。
- ──
- ぜんぜん違います。
- 山下
- でも、ああやってモデルしたり、
それまでは
落書きって言って捨てられてた絵が
洋服になったりすることで、
その人も大切にされて、
その人の活動も
大切にされるようになったんです。
それまで、ファッションって、
まったく「無縁の世界」だったんで、
もうね、ビックリしますよ。
- ──
- カッコいいです。
- 山下
- 気付かされたんです。
カッコいいものをちゃんとかっこよく見せる、
素晴らしい作品を
ふさわしく見せることって大事なんだなって。
- ──
- はい。
- 山下
- カッコいいって言えばね、
山際正己さんって人の正己地蔵がね、
水戸芸術館に
「7000体」並べられたんですよ。
で、そこに何万人も来たと言うんで、
本人を、
その大盛況の場に連れてったんです。
- ──
- ええ。
- 山下
- そしたらその人、
その素晴らしい会場に向かって駆け出して、
そんなにうれしいのかと思ったら、
その素晴らしい会場を一気に駆け抜けて、
奥にある自動販売機で
ガコッてジュース買うて終わってた。
- ──
- おお(笑)。
- 山下
- つまりね、この人らが、いかに
社会の評価や称賛を気にしてないか。
それがねえ、カッコいいんですわ。
- ──
- ああー‥‥。
- 山下
- ぼくなんて人の目ばっかり気にして、
人と比較して落ち込んでるのに。
彼ら、作品を生み出したあとは、
どんなにチヤホヤ褒められようとも、
まったく知らん顔なんです。
- ──
- その「執着がない」っていう部分は、
自分もうらやましいなあと思います。
- 山下
- 笠谷さんも、よくお話されてますよ。
- 笠谷
- かなわないなあって思う瞬間ですね。
ぼくらは、写真集でも映画でも、
完成した瞬間から、
たくさんの人に見てほしいって、
思っちゃうんですけど。
- ──
- そうですよね。わかります。
- 笠谷
- 彼らは、絵なら絵を描いてる時間は、
ものすごく集中して、
作品に執着しているんですけど、
完成したら、
もうパタッと興味がなくなるんです。
- ──
- はああ。
- 笠谷
- じゃあ何のために‥‥って考えると、
怖くなります。
自分がやってることって何なのかと。
- ──
- はい、自分が担当したコンテンツも、
もちろんこの記事も、
リアルタイムで
アクセス数1桁まで出てくるので、
担当者として、
ウケたウケないで一喜一憂してます。
- 笠谷
- まわりの人の目ばかり気にしながら
何かをつくることって、
ある意味で、
ものすごく不自然なことなんだなと、
気づかされますよね。
- ──
- やまなみ工房のみなさんは、
やりたいから、やっている‥‥だけ。
それでいいじゃないかと思える日は、
自分にも、いつか来るんでしょうか。
- 山下
- 彼らは、別に努力してないんですよ。
苦しんでがんばってるわけではない。
うまくなってやろうと思ってないし、
勉強するわけでもないし、
誰かに強制されてるわけでもないし、
やりたいときにやってるだけ。
- ──
- ですよね。さっき寝てましたもんね。
- 山下
- それで褒めらて、評価されて、
洋服になってお金ももうかってるけど、
そこに、ぜんぜん興味がない。
必死でアーティストを目指して
努力してる人が知ったら呪われますよ。
- ──
- たしかに(笑)。
- 笠谷
- 実際、彼らの作品を見て、
じゃっかん皮肉を言って帰られる
画家さんやアーティストのかたも、
いらっしゃいますし。
- ──
- そうなんですね。
- 笠谷
- 幼いころから絵の勉強をして、
美術の大学を出て、
努力してアーティストになったけど、
そうじゃない、
別にがんばってもない人たちの絵が、
高く評価されてるって、
やはり割り切れないんだと思います。
- ──
- わかる気もします。
- 笠谷
- お帰りになるときは、
わたしはこれを認めません‥‥って、
口ではおっしゃっているけど、
でも、うらはらに、
心で惹きつけられてるような感じ。
- ──
- 今日、同行してくれている廣瀬も、
美大の出身で、
学生を教えてたりしたんですが‥‥
廣瀬さん、どう思われました?
- 廣瀬
- やっぱり障がい者の展覧会というと、
こっちも、
そういうつもりで見に行ってしまう、
つまり、プロのアーティストの
展覧会とはちがう、
別な企画だと思って見ちゃいがちで。
- 山下
- そう、ぼくたちも最初は、
障がいを持っている人たちが
がんばって描きました、
この作品の作者はこんな人で、
こんな苦労して‥‥って。
結局、自分らの主観ばっかり、
デッカイ声でね。
- 廣瀬
- それだと、ちがうじゃないですか。
作品にたいして、あらかじめ
フィルターがかかっちゃいますし。
- 山下
- 褒めなきゃいけないとか、
ぜんぜんよくないって言えないとか。
- 廣瀬
- それがいちばん失礼なことですよね。
だからって、どう思えばいいのかは、
一概には言えないんだけど、
少なくとも自分は今日、
清々しく影響を受けちゃいましたね。
- ──
- ああ、そうですか。
- 廣瀬
- うん、色使いひとつにしても
ものすごく勉強になるなあって作品、
たくさん、ありましたから。
- ──
- 笠谷さんは、そのあたりの
「フィルター問題」については、
どうお考えでしょうか。
- 笠谷
- 山下さんは、ここの施設長ですから、
みなさんが
穏やかに過ごされることを、
いちばんに考える役目の人ですよね。
だからどの作品が良いとか悪いとか、
軽々しく言ってないと思うんです。
- 山下
- そもそも、わかんないですしね。
- 笠谷
- でも、ぼくは外の人間として、
「おもしろいものだけを取り上げる」
そのことに、徹底しています。
そうじゃなかったら、
かえって誠意はないなと思ってます。
- ──
- つまり、アートディレクターという、
ご自分の役割に徹している。
- 笠谷
- はい。
<つづきます>
2019-07-16-TUE
やまなみ工房のアーティストの作品を、
TOBICHI2に展示します!
山下完和(まさと)施設長はじめ
やまなみ工房のみなさんが、
滋賀から車で運んできてくださいます。
やまなみ工房まで行かずとも、
直に作品を鑑賞できる貴重な機会です。
また会期中は連日、
19時30分〜20時30分のスケジュールで
『地蔵とリビドー』を上映します。
会場はTOBICHI2で、料金は1000円。
料金の中に山際正己さんの作品
「正己地蔵」代が含まれていますので、
当日ご観覧くださったかたは、
お好きな「正己地蔵」をお持ち帰りいただけます!
今後、東京近郊での上映は未定なので、
どうぞ、おみのがしなく。
ぜひ、展示作品を鑑賞したあとに、
ドキュメンタリーを観て帰ってください。
初日18日(木)の上映終了後には
山下施設長と
映画を撮った笠谷圭見さんの
アフタートークを開催(30分の予定)。
詳しいことは、
こちらの特設ページでご確認ください。
- 会期
- 7月18日(木)〜28日(日)
- 時間
- 11時〜19時 ※会期中無休
- 会場
- TOBICHI2
- 住所
- 東京都港区南青山4-28-26 MAP
- 料金
- 無料
- 会期
- 7月18日(木)〜28日(日)
- 時間
- 19時30分〜20時30分 ※1日1回上映
- 会場
- TOBICHI2
- 住所
- 東京都港区南青山4-28-26 MAP
- 料金
- 1000円(正己地蔵1体つき)
参加方法など詳しくは、こちらの特設ページで。
協力:RISSI INC
8月24日(土)〜8月30日(金)
「地蔵とリビドー」上映
@京都シネマ:20時20分〜
※初日のみ、笠谷監督・山下施設長の舞台挨拶あり
〒600-8411
京都府京都市下京区水銀屋町620
COCON KARASUMA3F
https://www.kyotocinema.jp
8月24日(金)25日(土)
DISTORTION3 2020SS
@しまだいギャラリー:11:00〜19:00
〒604-0844
京都府京都市中京区 仲保利町191
http://shimadai-gallery.com
8月16日(金)〜8月26日(月)
「いのちといのちーやまなみ工房のいとなみ」
川内倫子写真展
@アンテルーム京都:11時〜21時
※17日(土)17時より18時30分まで
川内倫子と施設長・山下完和のトークショーあり
〒601-8044
京都府京都市南区東九条明田町7
https://hotel-anteroom.com/