第2条:できるだけ痩せた土が良い
ほぼ日 それでは、諏訪さんが
永田先生に学んだ経験をもとに作った
「永田農法10か条」を教えてください。
諏訪 はい。まず、第1条は、
「できるだけ痩せた土が良い」

ということです。
ぼくは、2004年の夏に
『糸井重里のおいしい野菜つくっちゃいました』
という番組を作ったことがきっかけで
永田農法と出会ったのですが、
それまでに15年ほど、
有機栽培で家庭菜園をやってたこともあって
自分が作ってきた野菜にも
自信があったんですよ。
糸井さんは「永田野菜はうまい」と言うけれど
それはとりたての新鮮な野菜がうまいんであって
農法によってそんなに差がでるもんじゃないよ、
と、永田農法に関しても半信半疑でした。

ほぼ日 なるほど。
諏訪 ところが、永田先生の畑に実際に行って、
手渡されたタマネギを
生でかじって衝撃を受けた。
「なんだこれは!
 梨のような味じゃないですか」と。
味も驚いたけど、その畑を見てさらに驚いた。
土は赤土だし、石がごろごろ転がってる。
ゴルフボールくらいの石は当たり前だし、
中には握りこぶしくらいの石も混じってる。
プロの畑って、足で踏むと沈むような、
黒いフカフカの土なんですよ。
当然、石なんかはとりのぞかれてるし。
全然違うわけです。
永田先生に「この土は何ですか?」と聞いたら、
高速道路を作るときに出た残土だっていうんです。
ようするにそこはもともと
工事の土を捨てる残土置き場で、
畑でもなんでもない場所だった(笑)。
先生はそこを借り受けて
タマネギを植えてたんです。


ほぼ日 それまで諏訪さんがやってきた
有機栽培の土とは全く違ったわけですね。
諏訪 ええ。
昔から「野菜づくりは土づくりから」
と、言われてたくらいですし、
土づくりに2~3年かける人もいるくらいです。
実際ぼくも牧場に行っては
牛糞をゆずってもらい、鶏糞を買ってきて、
それに落ち葉を集めて入れて
汗だくになりながら堆肥を作って
肥えた土を作ってきましたから。
ところが、永田先生は、
「土にそんなにこだわる必要はない」
とおっしゃるんです。
何十年も検証をくり返してきた
永田先生がたどり着いた結論は、
つぎのようなものでした。
「栄養がある土よりも
 栄養のほとんどない赤土、
 しかも石ころだらけの場所で
 最低限の肥料をちょっとずつあげていく
 これが1つ目のキーワードです」
もう、これがショックで‥‥。
ほぼ日 あんなに苦労して堆肥を作っていた
自分はいったいなんだったんだ! と。
諏訪 本当にそういう気持ちでしたよ。
栄養のある土は必要ないというんですから。
「永田農法はプランター栽培と相性がいい」
と言われる理由もここにあるんです。
つまり、栄養のある土がいらないから
プランターに土を日向土や赤玉土といった
栄養分の入ってない土を入れるだけで
始めることができる。
はじめて野菜作りをされる方でも
土作りのコツみたいなものが
全く必要ありませんから。
ほぼ日 思い立ったら、すぐに始められますね。
諏訪 そこが大きいですね。
一般農法だとふかふかの土にしたいから
畑に肥料を入れて深く耕さなければいけない。
時間もかかるし、重労働です。
一方、永田農法は
水はけをよくするために畝を高く盛って
雨水を避けるために
マルチシートをかけるだけでいい。
マルチシートをかけると
雑草も防ぐ効果もありますから
夏場の雑草取りも本当に楽ですよ。


(つづきます)
2008-04-11-FRI