矢沢 ニューアルバム、聴いた?
糸井 聴いた。
矢沢 『Last Song』、いいでしょ。
糸井 うん。
矢沢 めちゃくちゃいいんだ。
詞もいいのが、並んでる。
糸井 アルバムのタイトルにもなってる
『LAST SONG』って曲は、
山川(啓介)さんでしょ、久しぶりに。
矢沢 そ。18年ぶりの仕事。
ぼく、直接、電話したんだ。
糸井 ああ、そうなんだ。
『時間よ止まれ』が山川さんだよね。
山川さんとの組み合わせは、いいと思うなぁ。
矢沢 うん。
アルバムの最後に入れるスローな曲をつくっててね、
最初のメロディーができたときに、
『LAST SONG』ってタイトルは決まった。
それで、あ、『LAST SONG』、いいタイトルだな、
誰に歌詞つくってもらおうかなって考えたときに、
ああ、矢沢永吉の『マイウェイ』がほしいなぁ、
って思ったの。
糸井 ああ、なるほどね。
矢沢 というのもね、
もう、ずいぶん長くやってるじゃない?
32枚目のアルバム、40周年、
武道館のライブはもう、117回。
糸井 うん、うん。
矢沢 でも、まだ現役。
スティル・ロックシンガー、
サンキューだなぁ、と思ったときに、
俺、フランク・シナトラみたいに
歌ってもいいかなと思った。
そのためには、
「矢沢永吉の『マイウェイ』」がほしいなと。
じゃ、誰がいいかな‥‥‥‥
(指をパチン!)
山川さん、電話しようかな?
で、ぼく、直接電話したの。
「山川さん、元気?」って。
で、『マイウェイ』みたいなやつをって言ったら
こころよく引き受けてくれて。
糸井 山川さんが書くのはいいね。
若いころの、前にがんがん進んでるときの
永ちゃんの歌をたくさんつくってる人だからさ。
長く永ちゃんを見てきた
自分の気持ちなんかも入るだろうし。
矢沢 うん。いい詞だったんですよ。
それで、ぼく、あの曲を歌ってるときにね、
山川さん、うまいなぁっていうだけじゃなくて、
この人も矢沢永吉の応援団長なんだな、
って思った。
糸井 応援団長、応援団長、そうそう。
矢沢 俺、最近、よく思うんだよ。
自分で言うのもなんだけどね、
矢沢永吉には応援団長がたくさんいるんだよ。
糸井 うん(笑)。
矢沢 山川啓介さんも応援団長のひとり、
糸井重里だって、応援団長だよね?
糸井 応援団長ですよ、うん。
矢沢 ちあき哲也とかね、
西岡恭蔵だって、応援団長だったんだよ。
糸井 だから、矢沢永吉って、
個人なんだけど、
個人じゃないみたいなところがあって、
純粋に応援しているというよりも、
矢沢に「託してる」みたいなところがあるんだよ。
矢沢 そう、だから、『LAST SONG』、
あの中にも、山川さんの気持ちがあるんだ。
俺は『マイウェイ』にしたかったんだけど、
「旅を続けろ」っていう歌詞があってね、
最終的に「LAST SONGはまだ歌えない」
っていう歌になってるの。
糸井 つまり、永ちゃんが思いついた
『マイウェイ』としての『LAST SONG』を、
山川さんはもう一回裏返すわけだよね。
だから、旅は続いちゃうんだよ。
矢沢 そうなんだよ。
で、歌い終えてね、ぼくは、
自分で曲つくって、自分でプロデュースやって、
自分で作詞してもらってるくせに、
ぼくが、ほろっときちゃったもんね。
糸井 ああー。
矢沢 これ、ファンも泣くだろうなと思った。
糸井 なるほどね(笑)。
矢沢 ま、そんなこんながあって、
『LAST SONG』という曲ができたときに、
あ、アルバムタイトルも
『Last Song』にしちゃおうと思ったの。
でも、これ以上曲は書かないとか、
そんなんじゃなくて、
まぁ、しばらくはアルバムつくりたくないな、
くらいの気持ちはあるけどね。
糸井 うん。
矢沢 そりゃ、もう、32枚目にもなったら
そういう気持ちになってもおかしくないでしょ。
だから、決めないで、
また1年ぐらいスパン空いたら、
うずうずするから、絶対。
で、書きたかったら、
つくりたかったら、つくればいいし、
もういいやと思ったら、
つくらなきゃなくてもいいし。
糸井 ライブは?
矢沢 ライブはね、ライブはやめられないなぁ。
糸井 「ラストステージ」はない。
矢沢 ラストステージは、ないねぇ‥‥。
だって、やめてなにする?
糸井 ‥‥いいセリフだねぇ。
矢沢 ねぇ。
糸井 「やめてなにする?」
矢沢 やめてなにする?
ってことになるじゃない。
糸井 はぁー、なるほどねぇ。
矢沢 知ってる? 最近、
ブルース・スプリングスティーンが
また大々的にツアーやるんだって。
ストーンズなんかもまた世界ツアーやってるし。
あれ、なんでだと思う?
もうね、彼ら、お金でやってないから。
糸井 そうだね。
矢沢 どうしてかといったら、たぶんね、
命のためにやってるんだよ。
死にたくないからやってるの。
死ぬっていうのは、なにも、
ほんとに死んじゃうことじゃなくて、
こころが腐って死ぬもあれば、
やることなくて死んじゃうのもあるよね。
「死ぬ」っていうのは、いっぱい意味があってさ、
ほんものの「死ぬ」もあるけど、
こころが死んじゃう「死ぬ」もある。
やっぱり、死にたくないからね。
糸井 鳥だったら、翼、動かしてないとね。
矢沢 そうなのよ。
だから、死にたくないから歌うんだよ。
ぼくわかったもん。
糸井 歩いてる鷹とかヘンだもんね。
矢沢 ぶはっ。
糸井 鷲とか鷹がね、歩きながらさ、
「どう最近?」って言ってたら
やっぱり、変だもんね?
矢沢 ‥‥俺、糸井のそういうとこ、大好きなの。
一同 (笑)
矢沢 やさしいというかね。
糸井 鳥が飛ばずに話ばっかりしててさ。
「どう?」「どう最近?」
「たまご産んでる?」
「ないないない!」
矢沢 はっはっはっはっ、いいね。
いや、ほんとに、そういう感じよ。
糸井 飛ばなきゃね。
矢沢 やめてなにする? っていう気持ちがある。
やっぱりもう、ライブはねぇ、
自分の一部なんですよね。
糸井 うん。

(つづきます)





2012-08-07-TUE

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