矢沢 |
けっきょく、ぼくはこれまでに
ライブを2000本近くやってるんだけど。
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糸井 |
「2000本」(笑)。
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矢沢 |
そう、2000本。
で、ライブってね、
どこどこのなんとか会館でやりますよって
発表するのが、だいたい8ヵ月前。
遅くとも6ヵ月前には発表するの。
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糸井 |
うん。
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矢沢 |
でね、ぼくは、ラッキーなことに
発表したライブをこれまでに
一度もキャンセルしたことがないんですよ。
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糸井 |
ゼロ?
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矢沢 |
ゼロ。全部、やれてるの。
それは、ひとえに運がよかったよね。
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糸井 |
へぇーー。いや、運だけじゃないでしょ。
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矢沢 |
もちろん、自分の、
「やらなきゃ!」って気持ちもあるけど、
運も、ものすごくあるよね。
だって、熱がもう39度ぐらいあって、
もう、今日こそダメだっていうとき、あるもの。
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糸井 |
すごいな、それ。
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矢沢 |
マネージャーが、
「ボス‥‥わかりました、やめましょう。
今日はキャンセル発表しましょう」って。
で、「頼む‥‥」って言ったら、
「はじめてですねぇー」って言うんだよ(笑)。
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糸井 |
(笑)
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矢沢 |
「いやー、はじめてのキャンセルですねぇ、ボス」って。
そう言われると、
「ちょっと、待てっ、ちょっと!」って。
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糸井 |
39度のやつが(笑)。
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矢沢 |
「ちょっと待て、もう10分待ってくれ」って。
ちょっと熱いお湯、白湯くれとか、なんとか。
でも、もう、本番30分前。やっぱりダメなのよ。
ダメだ‥‥やっぱり今日はダメなんだ。
「わかりました‥‥もう無理やめましょう。
‥‥いや、はじめてですね、ほんとに!」
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糸井 |
もう1回(笑)。
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矢沢 |
「ちょっと待って、ちょっと!」
で、けっきょく、やったもんね、その日。
だから、そういうことで、1回も穴あけたことない。
ぜんぶ、乗り越えてるんですよ。
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糸井 |
すごいねぇ。いや、ぼくも何回か、
コンサートが終わったあとに
楽屋を訪ねたことがあるけど、
もう、のどを痛めないために加湿器をあちこちに置いて、
サウナみたいになってたもんね。
あのへんの自己管理は徹底してるなあ、と。
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矢沢 |
あ、でも、いまはもうやってないよ。
そういうときもあったけどね。
のどを痛めないために、湿度を上げたり、とか。
エアコンは絶対ダメとか。
でも、いまはそれはないです。
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糸井 |
いまは、平気なの?
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矢沢 |
いまはね。だから、体が、
だんだんもう慣れてきたのかなぁ。
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糸井 |
すごいね。
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矢沢 |
もういまは「エアコンかけて」って言いますもん。
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糸井 |
へぇー。じゃあ、長い道のりの中で、
身体が慣れていったというか。
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矢沢 |
うん。やっと、細胞がついてきたみたい。
歳とってから。
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糸井 |
でも、ふつうに考えたら、
歳とると、逆になるんじゃない?
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矢沢 |
ふつうはね。
でも、加湿器はいらなくなったし、
エアコンも好きなときにつかってる。
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糸井 |
すごいね。
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矢沢 |
なんだかね。
ただ、はっきりできなくなったこともある。
ここ、10年くらいかな、
ライブが終わった直後のビールは飲めなくなった。
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糸井 |
へぇー。
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矢沢 |
ぼくは何がたのしかったって、
ステージ終わって、シャワー浴びて、
「終わったー」って言って、
まずビールを、かあーっと注いで、
ぐびびびびぃーーーと飲んで。
有名なセリフ、あるじゃない。
ぐびぐびぐびって飲んだときに、
キャメラに向かって、
「キャメラくん、
このビールのためにやってるって
言っても過言じゃないよ。
今日のギャラいらない。
このビールがあれば、ギャラいらない」
コレ、有名な話。
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糸井 |
(笑)
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矢沢 |
でも、制作費に金掛かるから、
「やっぱりギャラはちょうだい」っていう
あの有名なセリフね。
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糸井 |
(笑)
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矢沢 |
そのぐらいにね、
終わったときのビールは最高!
もうこれくれるんなら、
ギャラいらねぇよってぐらいうまいもんなの。
それができなくなって、十何年になるかな。
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糸井 |
へぇ、そうなの。
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矢沢 |
飲めなくなった。歳ですよ、歳。
ライブ終わってすぐの、
ぐびぐびぐびーーーができない。
それやったら、もう、
頭がキーンと痛くなっちゃうもんね。
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糸井 |
ライブで熱しきっちゃってるからね。
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矢沢 |
そう、熱しきっちゃってるときに、
冷たいビール飲むと危ない。
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糸井 |
コップが割れるみたいだね。
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矢沢 |
(パチン)糸井はいいねぇ(笑)。
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一同 |
(笑)
(つづきます) |