矢沢永吉さんと糸井重里、
7年ぶりの対談です。
ほぼ日刊イトイ新聞創刊21周年の記念企画として
ほぼ日のオフィスで乗組員全員の前で
対談してもらえませんかとお願いしたら、
「いいですよ」とお返事が。
出会いのときから、ほぼ日創刊時の思い出、
そして紅白歌合戦の裏話から、
「フェアじゃないね」の真相まで!
じっくりたっぷりお届けします。ヨロシク。
- 矢沢
- まぁ、『成りあがり』という本は、
矢沢にとってすごく大事なものだけど、
あなたにとっても、
すごく、あれは、もう、大事なものですよ。
- 糸井
- うん。
- 矢沢
- しかし、まぁ、あの本をつくったときは、
カセット、ずっと回してたよね。
- 糸井
- 永ちゃん、あの取材に
どんだけ付き合ったんだろうね(笑)。
- 矢沢
- 2つか3つぐらいのカセットが
いつも回ってるんだよ。
それで、俺、
「今日はひとりにして」って言っても、
「永ちゃん、永ちゃん‥‥」って、
なんかそばに来るんだよ。
で、もうカセット回してるんだよ。
- 一同
- (笑)
- 糸井
- ふふふふふ。
- 矢沢
- それで、とにかくね、
糸井重里は頭いいなと思ったのはね、
その、奥の奥のところまで
俺にしゃべらせようとするから、
わざとそこにね、ふっかけてくるわけよ。
- 糸井
- そうだった(笑)?
- 矢沢
- 俺、そのうち怒っちゃうときあったじゃん。
ガーッと怒って、
うるせえんだよ、おまえ、いちいちいちいち!
って言いながら。
- 一同
- (笑)
- 糸井
- いまはやらないだろうけど(笑)。
- 矢沢
- そのころは、やっぱ、そこを突くわけよ。
広島出るとき、親はどうだった?
とか訊くんだ。
俺が一番触れたくないところ。
- 糸井
- ああ(笑)。
- 矢沢
- そのうち俺は感情的になってくるけど、
彼にしてみたら、
おおー、しゃべったしゃべったって
全部しゃべらしてる。
映画館行っても、回してたしさ、
とにかく、ずーっと、回してたよ。
それで、あの本の原稿ができて、
最後は矢沢が全部見るよね。
ここ、意味が違う、
俺、そういう意味で
しゃべってんじゃねぇんだよ、
ここの意味はこういう意味なんだ、
ってことを書き直したりして、
最終的にあれが製本されるんだよね。
- 糸井
- うん。
- 矢沢
- だから、ぼくは、あれは、
矢沢永吉の『成りあがり』って言うけど、
まぁ、あれをあそこまで、
奥の奥の奥のところまで
矢沢にしゃべらせたっていうところで、
糸井重里の本でもあるわけ。
- 糸井
- あのときの永ちゃんはね、たぶんね、
根っこではしゃべりたかったんだと思う。
- 矢沢
- あー。
- 糸井
- ずーっとそばにいるやつがいたら、
言ってもいいかな、って気持ちが、
どこかにあったから、
最後にはしゃべったんだと思うよ。
- 矢沢
- うーん、そうなのかね。
まあ、いろいろあったよね、あの本は。
- 糸井
- そうだねぇ。
- 矢沢
- あと、あの表紙もね、おもしろい。
あれ、うまいのはね、
タイトルと、3つだけ、書いてあるのよ。
- 糸井
- うん。
「矢沢永吉激論集
成りあがり
How to be BIG」
- 矢沢
- あれはもう、糸井サンのアイディアだね。
- 糸井
- でも、『成りあがり』っていうタイトルは
最初カチンときたんだよね、永ちゃんは。
- 矢沢
- ああ(笑)。
あれ、イトイが言ったんでしょ、
「『成りあがり』ってタイトルで
永ちゃん、どう?」って。
で、なにぃ、この、
おまえ俺を下に見てんじゃねぇのか、って。
- 一同
- (笑)
- 糸井
- そう(笑)。
- 矢沢
- 俺ってもっとエレガントだよ、
みたいな(笑)。
- 糸井
- たぶん、そうだよね。
だって、永ちゃん以前の時代の
「成りあがり」っていうことばは、
いいことばじゃないからね。
- 矢沢
- でも、いま思えば、
『成りあがり』ってタイトルは、
ぴったしカンカンだよね。
- 糸井
- だから、あの本と永ちゃんが、
『成りあがり』ってことばを
イヤじゃないことばにしたんだよ。
- 矢沢
- うん、ほんとだね。
だから、正直、カチンときたけど、
でも、すぐOKしたじゃん、俺。
- 糸井
- した。
- 矢沢
- これで行こうって言ってね。
でも、まぁ、よくやったよねぇ、イトイも。
- 糸井
- よくつき合ってくれたと思うよ。
だって、まぁ、永ちゃんも若いし、
もっと怖かったからね(笑)。
ずっとくっついてたら、
ケンカになったりすることだって、
あるかもしれないし、
怒ってもうイヤだってこともありえたじゃない。
- 矢沢
- でも、あれね、上っ面のきれいごとだけで、
よろしくーってやったら、
あの本になってないですよ。
やっぱり、もういいよ、うるせーな、おまえ、
やかましいんだ、おまえは、っていうぐらいの、
訊いちゃいけないようなことを
つっこんできたから、ああなったわけで。
- 糸井
- うん(笑)。
- 矢沢
- だから、小学館の島本(脩二)さんは、
そういう力を糸井に見出してたんじゃないの?
まだまだ無名だったかも知らんけど、
こいつを矢沢にぶっ込んだら、
どこまでしゃべらせるのかな、みたいな。
- 糸井
- そうだったのかなぁ。
- 矢沢
- だって、俺、後半なんか、
こいつしつこいな! と思ったもん。
飲み屋に行ってもついてくるし、
どこ行ってもついてくる、
みたいな感じだからさ。
- 糸井
- わかった(笑)。
- 矢沢
- でも、それがどういう意味があったか?
いまはもう、結果に現れてるよね。
(つづきます。ヨロシク)
2019-06-11-TUE
写真・幡野広志
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN