矢沢永吉さんと糸井重里、
7年ぶりの対談です。
ほぼ日刊イトイ新聞創刊21周年の記念企画として
ほぼ日のオフィスで乗組員全員の前で
対談してもらえませんかとお願いしたら、
「いいですよ」とお返事が。
出会いのときから、ほぼ日創刊時の思い出、
そして紅白歌合戦の裏話から、
「フェアじゃないね」の真相まで!
じっくりたっぷりお届けします。ヨロシク。
- 糸井
- でも、よくわかりました。
ぼくが永ちゃんのかっこよさについて
いろんな人にいつも言いたくなるのは、
それが「かっこ悪さ」を含んでるからなんだ。
「かっこ悪い」っていうのまで含んだ
「かっこよさ」というのを、
こんなにやってきた人はいないなと思うね。
- 矢沢
- ハハハハハ!
- 糸井
- だってみんな、永ちゃんの
伝説みたいなエピソードとか、大好きだもんね。
自動ドアにぶつかって
「フェアじゃないね!」とかさ、
ほんとであろうが、嘘であろうが‥‥。
- 矢沢
- あれ、よくさぁ、みんな仕入れてくるよね!
どこで聞きつけるんだろうね!
- 一同
- (笑)
- 糸井
- とんねるずの石橋貴明くんとか、
よく知ってるよね。
- 矢沢
- 俺さぁ、彼の番組出たとき、
矢沢さん、こうこうこういうことが
あったそうですね、って言うからさ、
「おまえ、なんで知ってるの、それ?」って。
- 糸井
- はははははは。
- 矢沢
- どっかで聞くんだね、あれ。
- 糸井
- だから、伝説の人みたいになっちゃってるんだよ。
- 矢沢
- それでさ‥‥あながち嘘じゃないんだよ。
- 一同
- (笑)
- 糸井
- 嘘じゃないんだね。
- 矢沢
- ドーンとぶつかって、俺さ、
「フェアじゃないよ」って言っちゃったの。
- 一同
- (爆笑)
- 矢沢
- あまりにもきれいで、ガラスが、
ほんとわかんなかったの。
俺、いまでも、この話は‥‥
もう、ついでにちゃんと言っちゃうけどね。
- 糸井
- してよ、みんな大好きだよ(笑)。
- 矢沢
- いま言っちゃうけど、
これ、ほんとの話なの。
- 一同
- (笑)
- 糸井
- ははははは。
- 矢沢
- 俺ね、昼のものすごい天気がいいときね、
久しぶりにオフだったの。
オフだから、気持ちちょっと
ウキウキするじゃない?
天気はいいし、うちの嫁さんに、
おう、ちょっとそこの商店街行って、
アイスキャンディーでも買いに行こうか?
- 糸井
- (笑)
- 矢沢
- って言って、アイスキャンディー、
ちょっとハッピーなのね。
ぱーっとハッピーで、
店の表にさ、アイスキャンディーのケース、
スライド式に開くやつあるじゃない?
- 糸井
- はいはい。
- 矢沢
- なに買おうかな?
気持ちもいい。なに買おうかな、って、
ガラスケースのスライドを開けようとしたら、
手がズバーっとケースの中に落っこったの。
アイスの中に手がズバーっと。
簡単なこと言えば、
開けっぱなしにしたやつがいるわけ。
- 糸井
- ああ、ああ(笑)
- 矢沢
- 開けたままで、しかも、夏じゃん?
それで、カチンと来そうになったけど、
まぁ、今日はさ、俺、ハッピーの日だから。
だから、こうスライドのガラスを
すーっと戻しながら、
「ダメだよ、キャンディー、
溶けちゃうだろ?」
- 糸井
- はははははは。
- 一同
- (笑)
- 矢沢
- 溶けちゃうから、閉めたの。
閉めたら、それを見たうちの嫁さんが、
「ぷっ」て笑いながら、
先に店に入っちゃったの。
でも、まあ、こんなもんじゃ、怒らない。
それで、ああ、まあまあ中に入ってるから、
俺も続いて入ろうかなと思ったら、
ドーンときた。
- 一同
- (笑)
- 糸井
- 二度目だったんだ(笑)!
- 矢沢
- 二度目。それで、思わず。
「‥‥フェアじゃないよ」
- 一同
- (拍手)
- 糸井
- いいなあ(笑)。
- 矢沢
- だから、ほんとの話なのよ、あれは。
みんなが、どこで聞いたら知らない。
まぁ、何かで俺が言ったんだろうね。
それを誰かが聞いたんでしょうね。
- 糸井
- そうだね。
で、永ちゃんのそういう話は
探せばきっと山ほどあるわけだよ。
- 矢沢
- 山ほどあるんだろうねぇ(笑)。
- 糸井
- それを、恥ずかしいでもなければ、
やめろよ、でもなく、もっと言え、でもなく、
すっごい平らな距離で
「そうなのよ」って言ってるのがいいよね。
- 矢沢
- はっはっはっ!
- 糸井
- だって、それで永ちゃんの
かっこよさが傷つくわけじゃないじゃない。
- 矢沢
- うーん、まぁねぇ。
というか、ぼくはそもそも、
そういうこと考えてもいないしねぇ。
- 糸井
- むしろ、永ちゃんのその、
ちょっとかっこ悪いところが
見えれば見えるほど、おもしろくて、
永ちゃんっていいなぁ、ってなるんだよ。
そういうので、ぼくが個人的に憶えてるのはね、
横浜かどこかの大きいステージ観てたら、
後半、ものすごく盛り上がって、
永ちゃん、上半身裸でタオル肩からかけて、
みたいな状態になったのよ。
- 矢沢
- うん。
- 糸井
- で、もう、そこからノリノリで
舞台を動き回るからさ。
そのうちに、なにかの拍子に、
永ちゃん、持ってたそのタオルを、
腰にぐるっと巻いちゃったのよ。
そうするとさ、一瞬、
風呂上がりみたいになっちゃって。
- 一同
- (笑)
- 矢沢
- やったんだろうね(笑)。
- 糸井
- 別に一瞬だから、なんのことないんだけど、
「これはないんじゃない?」って思った。
- 矢沢
- いやいや、ほんとね(笑)。
- 糸井
- きっと、そういう、
永ちゃんならではのおもしろさが、
たくさんあるんだよ(笑)。
- 矢沢
- まぁ、でも、長くやってますからね、
そういうことも、きっとね。
- 糸井
- そうねぇ(笑)。
(つづきます。ヨロシク)
2019-06-14-FRI
写真・幡野広志
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN