矢沢永吉×糸井重里 スティル、現役。
矢沢永吉さんと糸井重里、
7年ぶりの対談です。

ほぼ日刊イトイ新聞創刊21周年の記念企画として
ほぼ日のオフィスで乗組員全員の前で
対談してもらえませんかとお願いしたら、
「いいですよ」とお返事が。

出会いのときから、ほぼ日創刊時の思い出、
そして紅白歌合戦の裏話から、
「フェアじゃないね」の真相まで!

じっくりたっぷりお届けします。ヨロシク。
第13回 人生も、そうかもしれないよ?
写真
糸井
歌もうたって、ステージもやって、
お金のことも考えて、
矢沢永吉という人は、
ずーっと一所懸命だよね。
矢沢
そうだねぇ(笑)。
でも、そういうことでいうと、
ちょっとぼくは一所懸命過ぎるね。
糸井
はははは、真面目すぎる?
矢沢
うん、真面目なのよ。
だから、そろそろね、
一所懸命も真面目もいいけど、
もうちょっとこう、力を抜いたもの。
そこをうまく出せるようになったら、
ぼくは歌手として、ミュージシャンとして、
もう1ランク2ランク上に
行けるんだけどな、というのは思うね。
糸井
ふーん。それは、具体的にはどういうこと?
矢沢
あのね、一所懸命は、時として、
やかましいとき、あるわけだ。
糸井
あー(笑)。
矢沢
それがようやくわかるようになってきたわけよ。
だから、もうちょっとね、なんつーのかな、
ここをこうしろ、もう少しこうしようって、
真面目に全部がんばるんじゃなくて、
「オッケー、オッケー」っていうところ?
「わかった、わかった、いいよ、好きにして」
っていうところがあると、
もうちょっと、もう一味よくなるのになぁ、
というのが、最近はわかってきた。
糸井
あー、それはおもしろい話だね。
写真
矢沢
たぶん、むかし、ぼくのそばにいた人が
「ボス、ちょっと熱すぎない?」
って思ってても、ちょっと怖くて
言えなかったんじゃないかと思う。
糸井
そう思うよ。
怖いって、勝手に思われてたと思う。
矢沢
うん、だから、
これ言っちゃいけねぇだろう、って、
感じさせてたんじゃないかと、いまは思う。
なぜかといったら、本人はいつも
真面目に、一所懸命に、
「Let's Do It!」ってやってるから。
糸井
永ちゃんって、どの時代のどの写真も、
真面目で一所懸命で、怖いもんね。
矢沢
ほんと、ほんと、どの写真も真面目だもん。
一同
(笑)
矢沢
でも、いまから10年くらい前かな。
ちょっとこの力を抜くことができたら、
もっといいのになぁ、
と思うようになりましたね。
糸井
それは何かきっかけがあったの?
矢沢
そりゃ、あーた、経験よ。
糸井
(笑)
矢沢
たとえば、わかりやすいところで言うと、
ミックスダウンの音を決めるときなんかでも、
この一所懸命な人間が何するかって言ったら、
ギター! っていったら、もうそこは、
ワッッバァーーーン! と来ないと
ギターじゃねぇじゃん、みたいな話で、
だから、ちょうどいい加減のところで、
クッと抑えてればいいのに、
もうちょっと、ほしいわけね。
写真
糸井
ああー。
矢沢
スネアのカッ! っていうのも、
そのくらいでちょうどいいのに、
もうちょっと‥‥ほしいよね? って。
それで、あとでゆっくり聞くと、
全部やかましいのよ。
糸井
ははははは。
矢沢
うるさいの。ちょっとうるさい。
で、これ、ちょっとうるさいな、
って言うと、エンジニアが言うの。
「やったのはボスですよ」
糸井
ああー(笑)。
矢沢
だよね、って。
俺があそこ、ちょっと上げる、
ここ、ちょっと上げる、
それを2回も3回も繰り返すと、
そりゃもう、うるさいよ。
で、なんで俺は、こう、
もう一個ほしいんだろう、と思うんだね。
欲張りなのよ。もう一個ほしい。
糸井
クソ真面目だったんだね。
真面目というよりは。
矢沢
そ。で、欲張りなの。
糸井
あー。
矢沢
だけど、いまは、
さてここは欲張りになるのがいいのか、
ちょっと引く加減がいいのか、って、
ちゃんと考えるようになったんだよ。
あのね、ちょっと、引く。
加減って、よく言ったものでね。
これでいいんだ、というところは、それでいいの。
ちょっと引いたところっていうのは、
あとあと、飽きないんだよね。
糸井
そうだね。
矢沢
あとあと聴いても、飽きないんだよ。
なんとも言えない、ふくよかなあの感じ。
ひょっとしたら、これ、
いま、音楽の話をしてますけど、
人生も、そうかもしれないよ?
写真
糸井
そう思うよ。
矢沢
人生もそうなのかもしれない。
ちょっとこう、ここにもう一個、
というところを、抑える。
抑えるところが、あとあと、
ちょーどいいバランスになる、みたいな。
糸井
あの、ダムがあってさ、
ものすごく水が貯まってるわけじゃない?
でも、こんなに貯まってるから全部出す、
っていって全部出したら、
もう、ダムじゃないじゃん?
矢沢
ん。
あの、あれ、調節してるんでしょ。
糸井
ん‥‥これは、うまく伝わらなかったな。
一同
(笑)
写真
矢沢
まぁ、まぁ(笑)。
糸井
うん。
矢沢
俺さ、キャロルのときに、
バカだったなと思うのはさ、
ジョニー大倉がリードボーカルで、
「Just little boy
 good all rock'n roll」
って歌ってるとき、
ハーモニーのところをぼくがやるわけだ。
それで、彼が
「ナントカカントカ!」って言ったときに、
俺も、負けずにマイクに向かって、
「ナントカカントカ!」
一同
(笑)
糸井
そう(笑)、デカい声なのよ!
矢沢
絶対、俺のほうがバカでかいの!
糸井
それ、思ってた、思ってた(笑)。
矢沢
「ナントカカントカ!」
って彼が言ってるのに、俺が、
「ナントカカントカ!」
一同
(笑)
糸井
そうそう、そうそう。
矢沢
ダメだ、ダメだ。
ハーモニーっていうのは、
メインが10だったら、
7ぐらいで行くからバランスがいいのに、
俺、13ぐらいで行く。
一同
(笑)
糸井
それはね、永ちゃんね、ダメなんだけど、
キャロルはそういう個性だったと思うよ。
矢沢
だから、それを個性にしちゃったのよ、もう。
糸井
そうだね。
矢沢
そんなことばっかりやってた。
(そろそろ、ですかね。ヨロシク)
2019-06-18-TUE
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