矢沢永吉×糸井重里 スティル、現役。
矢沢永吉さんと糸井重里、
7年ぶりの対談です。

ほぼ日刊イトイ新聞創刊21周年の記念企画として
ほぼ日のオフィスで乗組員全員の前で
対談してもらえませんかとお願いしたら、
「いいですよ」とお返事が。

出会いのときから、ほぼ日創刊時の思い出、
そして紅白歌合戦の裏話から、
「フェアじゃないね」の真相まで!

じっくりたっぷりお届けします。ヨロシク。
第14回 自分が臆病であること。
写真
糸井
うちの人たちから、
1、2個、質問受けていい?
矢沢
あ、はい。
糸井
(乗組員に向かって)
ありますか、質問って。
永ちゃん、怖いから、みんな訊けないかな。
一同
(笑)
矢沢
ハハハ!
糸井
永ちゃんは怖いんだよー。
はい、はい、どうぞ。
乗組員I
私は、学生のときに、アルバイトで、
矢沢さんのコンサートの
警備をしたことがあります。
最前列でお客さんを押さえる係だったので、
コンサートの間中、矢沢さんじゃなくて、
お客さんを観ていたんですけど、
そのとき感じたのは、矢沢さんのお客さんって、
ほかのコンサートのお客さんと違って、
全体がものすごくファミリーというか、
独特の一体感があって、
これはなんなんだろうなと思ったんです。
矢沢さんは、コンサートに来るお客さんを
どんなふうに感じてらっしゃいますか?
ちなみに、それは山形のコンサートでした。
写真
矢沢
うーん、まぁ、ぼくのお客さんは、
熱いからね。
よくも悪くも、熱い。
糸井
お客さんは、熱いよね。
矢沢
とくに、昔は、熱すぎたくらい。
でも、いまはもう、
そういう時代もだんだん過ぎて、
ちょっと変わってますけどね。
糸井
昔は、男ばっかりだったよね?
矢沢
昔はもう、ほぼ、9割以上、
ほんとに男ばっかりだったからね。
女の人がいるとしたら、
熱い男に連れてこられた、みたいな感じ。
糸井
もう、男子トイレがぎゅうぎゅうでね。
一同
(笑)
矢沢
ふふふふ。
糸井
それで、いまもときどきそうなんだけど、
俺、男子トイレに行くと、
譲ってもらえたりするんだよ。
まあ、トイレに限らないんだけど、
コンサート会場を歩いてると
「あ、どうぞ」みたいな。
矢沢
え、なんで?
糸井
つまり『成りあがり』の人だから、
熱いファンからすると、
永ちゃん側の関係者みたいな扱いなのよ。
だから、「あっ、どうぞ!」みたいな。
矢沢
ハッハッハッハ!
写真
糸井
そういう独特のノリが
たしかにありましたね。
矢沢
でも、いまはもう、男性女性、
五分五分くらいになってると思いますよ。
昔はもう、熱かったねぇ。
糸井
だって、永ちゃん、ステージの上から
喧嘩の仲裁とかしてたものね。
「あー、ちょっと演奏やめてくれる?
 あの‥‥そこ! そこ!」って。
一同
(笑)
矢沢
まぁ、むかしの話です(笑)。
乗組員I
ありがとうございます。
糸井
もうひとりぐらい、いますか。
はい、どうぞ。
乗組員N
矢沢さんのお話をうかがっていると、
上にあがりたいとか、
かたちのあるものがほしいとか、
強く目指すものがあって、
そこに向かっていく話が多いと思うのですが、
すべてがかなうわけではないと思うんです。
自分のことでも、組織のことでも、
何かをやめるとか、ここで諦めるとか、
そういう決断は、矢沢さんは何を基準に
どのようになさっているんでしょうか?
矢沢
ああ、なるほどね。
うーん、あのね、これは、
うちの奥さんに言われたことなんですけど、
「あなたは大丈夫よ」ってぼくは言われた。
どういうことかっていったら、
「もうこれ以上はきついな」
っていうときには、
あなたやめるって言うんだよね、ちゃんと。
パッと、こう、閉じる。
糸井
はーー、なるほど。
写真
矢沢
自分からちゃんと閉じるっていうところも、
あなたはちゃんと持ってるから、
そこは私は心配してないと、こう言うんだね。
これ、ぼくは自分ではわからない。
だから、聞いて、えーって思ったけど、
言われて振り返ったら、
たしかにそうなんだよ。
つまり、さっきも言ったけど、
ベーシックは非常にぼく、ビビリ屋さんなので、
やるやるやる! ってバーっとやりますよ?
やるけど、あれ? ちょっと違うか? 
っていったとき、パチっと止めるね。
それは、なんかあるねぇ。
サーモスタットみたいなのが
ちゃんと効くみたいなことなのかな。
糸井
おもしろいね。
ベーシックは臆病で、
ビビリ屋だっていうことが、
ただの謙遜でもなくて、
永ちゃんのすごく大事な個性なんだね。
矢沢
うん。自分が臆病であることっていうのは、
なんか大事かなぁと思ってますね。
たびたび、言ってますけれども。
だから、思ってるだけじゃなくて、
それを自分で認めて、ちゃんと言った方が、
自分がらくだなと思ってるんだね。
糸井
うん、けっこう言ってるもんね。
矢沢
ぼく、もう20年ぐらい前から、
「ぼくは臆病です」って、
ほんとの気持ちをさらけ出してます。
やっぱり、そのほうが、
自分がらくになれるっていうのもあるし、
あともうひとつは、
そうだよ、人はやっぱり臆病だよね、
って思ってるから、そう言うのかな。
糸井
そうだね。
矢沢
だから、みんな、臆病なんだよ。
そのうえで、やるときゃやるんだよ。
まぁ、だから、ぼくもやってきましたよ。
まー、よくやってきたね。よくやってきた。
糸井
よくやってきたね(笑)。
矢沢
ねぇ。
写真
(次回が最終回、ヨロシク)
2019-06-19-WED
写真