2021年の夏、東京では
横尾忠則さんの作品があちこちで見られます。
国内外の団体がここぞと力を出し合い、
類稀なる存在をあらためて知らしめる、
しずかで大きな芸術活動です。
ほぼ日もそのちいさな一端を担います。
吉本ばななさんは、
横尾忠則さんと糸井重里の対話の連載
「YOKOO LIFE」を、
気にいって読んでくださっていました。
いったい、どこがお好きだったのでしょうか。
そして、絵画や文学の果たしている役割とは。
- ──
- 東京オリンピックが開かれる時期に
東京都現代美術館が
横尾さんの大規模な個展を開きます。
ばななさんにとって、
画家としての横尾忠則さんは、
どのような存在ですか?
- 吉本
- 物心がついた頃、
横尾さんはグラフィックデザイナーとして
あまりにも著名でした。
横尾さんのデザインは、色も、文字のバランスも、
完璧だと思っていたので、当時、
「えっ、どうして画家になるんですか?」
と思いました。
(註:横尾忠則さんの画家宣言は1980年)
だって、画家って、世界が違うから。
デザイナーとは、属するジャンルがぜんぜん違う。
- ──
- 同じく色や構図、配置を扱う職業であっても、
絵画とデザインは、違いますね。
- 吉本
- 「あれだけクオリティが高く、
もはや絵だといってもいい、
遜色ないものをデザインでつくっているのに」と
当時の私は思っていました。
だから、画家宣言なさったときに、
「これは横尾さんが大変になるんじゃないのかな」
「不自由になるんじゃないかな」
というイメージを持ちました。
画家ってやっぱり、
普通の職業じゃないと思いますから。
パトロンのようなものも必要だったりするし。
そのあたりについては「YOKOO LIFE」のなかで
横尾さんもおっしゃっていましたよね。
- ──
- はい。画商や美術評論家の関係について。
- 吉本
- コレクターがいて、ギャラリーがあって、
お金のやり取りも生々しくて、はっきりしている。
そんな印象が強かったから、
「どうして横尾さんは、
そんなことをはじめちゃったんだろう」
みたいな気持ちでいました。
だけど、いまになってこう思います。
「ああ、横尾さんはもともとが画家で、
その人が、グラフィックデザイナーを
やっていただけのことだったんだ」と。
横尾さんのなかの職業の「順番」が、
あとになってよくわかりました。
- ──
- もともと画家の世界の人だった、と。
- 吉本
- うん。
画家の素養を持っていて、だけどたまたま、
いろいろな人生の流れで
グラフィックデザイナーだった時期が
あったんだな、と思います。
- ──
- いまから振り返れば、
あんなグラフィックデザイナーはいませんね。
- 吉本
- そうですよね、ほんとに。
- ──
- 横尾さんの描く絵について、
どう思っていらっしゃいますか?
- 吉本
- みんなの頭のなかに、
ほんとうはあることが描かれているから、
それが画家ってものだな、
というふうに思います。
- ──
- ああ、なるほど。
- 吉本
- はい。
- ──
- 私は横尾さんの絵が好きですが、
横尾さんがふだんお話しされていることも、
絵と同じような気がしています。
つまり、こちらがびっくりするようなことを
おっしゃるのですが、
同時にものすごく納得できるんです。
- 吉本
- それはやっぱり、心からご本人が
思ってるからなんでしょうね。
- ──
- そうだと思います。
絵も、びっくりするような絵なのに、
すごく腑に落ちる。
横尾さんの発言はすでに私の頭のなかに
あったのかもしれないとすら思います。
私は「Y字路」が好きですが、
ばななさんはどのあたりの絵がお好きですか?
- 吉本
- 宇宙が混ざってるシリーズは
みんな好きです。
絵の一部に宇宙が描き込まれていたりするでしょう。
- ──
- はい、天体が入っている絵が
たくさんありますね。
- 吉本
- 宇宙もそうですし、
地獄や天国のイメージも
横尾さんの絵の一部によく入ります。
ある絵に「違う世界のイメージ」が
入り込む感じが、すごく夢っぽいなと思います。
「Y字路」もすごく夢っぽいじゃないですか。
- ──
- 夢っぽいです。
絵の中に入り込みそうになってしまいます。
- 吉本
- そういうところがすごく好きです。
あと、私は、やっぱり
タマが好きです。
- ──
- 猫のタマを描いたシリーズ。
- 吉本
- タマの絵は、やっぱりすごいと思います。
「YOKOO LIFE」のなかにあった
オノ・ヨーコさんとまったく同じ意見です。
- ──
- あのタマの絵を、
横尾さんは芸術的ではないとおっしゃるけれども、
オノ・ヨーコさんは、
あれこそが芸術である、とおっしゃった。
- 吉本
- あれこそが絵だなと思う。
だって、横尾さんは写真を見て描いてるのに、
写真と絵がぜんぜん違うんだもの。
- ──
- 写実的だとおっしゃるけれども、
レクイエムとして描いておられるからか、
どんどん、写真とは違っていきますよね。
‥‥私はなぜ、人間には、
絵や小説が必要なのだろう、と
ときどき不思議に思うのですが。
- 吉本
- それはね、結局、人間って
表に見えているところだけじゃないからです。
(明日につづきます)
2021-07-10-FRI
この夏、横尾忠則さんの作品が
東京のあちこちで見られます。
ほぼ日は渋谷PARCO8階「ほぼ日曜日」で
横尾忠則さんのお人柄や生活にスポットをあてた
展覧会を開催します。
また、みなさまからの熱い要望により、
連載『YOKOO LIFE』を
糸井重里との新規対談を加えて書籍化します。
みなさま、この夏、
『YOKOO LIFE』の本を片手に
「東京YOKOOめぐり」をなさってください。
(めぐった方には横尾只海苔をプレゼント!)
『YOKOO LIFE』
横尾忠則(著)
糸井重里(聞き手)
1,320円(税込)
渋谷PARCO ほぼ日曜日で
7月17日より注文販売。
7月21日より先行販売。
東京都現代美術館のショップ、
横尾忠則現代美術館、豊島横尾館で、
7月21日より先行販売。
ほぼ日ストア、全国書店で
8月3日より販売開始予定。
打ち合わせや旅のあいだのおしゃべりが、
宝もののようで、聞き逃がせなかった。
だから録音機をできるだけまわした。
どうおもしろいのか、説明はできない。
そんなふうにおそるおそるはじまった、
横尾忠則と糸井重里による
「ほぼ日」のおしゃべり連載は、
通な方々のあいだでじわじわと話題となった。
「あれ、本にすればいいのに!」
という声をいただくも、
編集方針について迷いに迷い、数年経過。
この記念すべきYOKOOイヤーに、
思い切って追加の対談を収載し、
奇跡のような本を誕生させます。
本になって、さらに宝もののような、
貴重な内容です。
「YOKOO LIFE
横尾忠則の生活」
会期/2021年7月17日(土)→8月22日(日)
11:00→20:00
会場/渋谷PARCO8階「ほぼ日曜日」
入場料/450(¥OKOO)円
主催/ほぼ日
協力/朝日新聞社
2021年7月17日(土)→10月17日(日)
東京都現代美術館 企画展示室1F/3F
2021年7月21日(水)→10月17日(日)
21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー3
2021年7月17日(土)→9月5日(日)
丸の内ビルディング、新丸の内ビルディング
ジャケットとパンツを
2021年7月1日(木)から順次発売
ISSEY MIYAKE SHIBUYA(渋谷PARCO2階)、
A-POC ABLE ISSEY MIYAKE / AOYAMA、
ISSEY MIYAKE SEMBA、
ISSEY MIYAKE MARUNOUCHI、
ISSEY MIYAKE ONLINE STORE
横尾只海苔
(よこおただのり)
プレゼントします。
横尾さんの描き下ろし直筆文字入り!
渋谷PARCOの「YOKOO LIFE」展入口で、
東京都現代美術館で開催する
「GENKYO 横尾忠則展」のチケット
(電子チケットの画面可)をご提示の方に、
横尾忠則書きおろし文字入り
「横尾只海苔」(ホンモノの海苔)を
プレゼントします。
※「横尾只海苔」はなくなりしだい配布終了します。
「GENKYO 横尾忠則展」チケットは
観覧前、後どちらも可です。
(C) HOBONICHI