私と芸術、私の友情。吉本ばなな 私と芸術、私の友情。吉本ばなな
2021年の夏、東京では
横尾忠則さんの作品があちこちで見られます。
国内外の団体がここぞと力を出し合い、
類稀なる存在をあらためて知らしめる、
しずかで大きな芸術活動です。
ほぼ日もそのちいさな一端を担います。

吉本ばななさんは、
横尾忠則さんと糸井重里の対話の連載
「YOKOO LIFE」を、
気にいって読んでくださっていました。
いったい、どこがお好きだったのでしょうか。
そして、絵画や文学の果たしている役割とは。
第4回 隆明さんと忠則さん。
──
吉本隆明さんと横尾さんは、
年が5つぐらい、離れてますでしょうか。
吉本
もうちょっと離れてたんじゃないかしら。
世代が違うような気がする。
──
うーん、そうですね、
おふたりとも戦中の方ですが、
太平洋戦争のときに青年だった方と、
子どもだった方の違いですね。
吉本
そうですね、なんだかそのくらいの世代の違いは、
あったような気がします。
──
隆明さんと忠則さんのお人柄は、
どのあたりが違うでしょうか。
吉本
ちょっと思うのは‥‥やっぱり横尾さんは
関西の人だなあと思います。
横尾さんと関西でお会いしたことは、
1回しかないんですけど、
東京にいるときとぜんぜん違うんですよ。
あんなに「東京」が長いのに、
やっぱり関西の人なんだなと思ったことを、
よく覚えてます。
──
それは「お笑い系」みたいなことですか?
吉本
いや、おもしろいからとかじゃなくて、
なんていうんだろう、空気かな(笑)。
──
関西の空気が横尾さんに合っている、と。
吉本
ふだん、横尾さんはお住まいの
成城におられるでしょう。
成城って、都内でも独特の場所です。
私も成城に行くときは
ちょっと「入っていく」ような感じがあります。
──
ああ、そうですね。
吉本
横尾さんはいつもあそこにいるから、
あんまりそんなことを考えたことは
なかったのですが、
でも、ほんとうのほんとうは、
横尾さんはもしかしたら、
東京はそんなに合わないのかもしれない。
関西で一瞬だけお目にかかったとき、
そう思ったんです。
写真
──
HOME感が、しらずしらずに
関西で出ていたのもしれないですね。
吉本
すごく不思議でした。
──
そうか‥‥吉本隆明さんと横尾忠則さんの違いは、
もしかしたら
地方性にあるかもしれないですね。
吉本
うちの父はなんだかんだいってやっぱり、
九州の人ですよね。
──
そうか、天草の。
でも、隆明さんに、
あんまり九州を感じたことが‥‥。
吉本
いや、九州へ行くと、
「なんか、ここだあ」って思いますよ。
とくに天草なんて、
「全員、知ってる人」ぐらいの感じが。
──
(笑)ほんとですか。
吉本
なんだかね、
いままで父について
「あれ? おかしいな」と思ったり
私から見て「ええっ!」と驚いたようなことが、
「ここでは常識」って感じでした。
天草に行って「ああ、こういうことだったのか」と
肌で感じることがありました。
──
出身地、重要ですね。
吉本
だって、父なんて、
一瞬も住んではいないはずなんですけどね。
──
生まれはすでに月島で。
吉本
だけどまあ、父がこっちに来て育った環境でも、
周りは全員、天草の人でした。
おじいちゃんが、
天草から東京に出てきた人を
世話したりしていたと聞いたことがあります。
県人会みたいなものがあったのか、
よくわからないけど。
父は墓まで、天草の人にかこまれて眠ってますもの。
──
そうなんですか。
吉本さんも横尾さんも、
「自分のいたところ」の意味が
大きい世代だったかもしれないです。
吉本
なんといっても子どもの頃、
激動の時代でしたものね。
そういう日本の大変な時代を
肌で感じてきた人たちなんだと思います。
──
でも、それにしても、
まったく違うタイプです。
隆明さんと忠則さんは。
吉本
違うと思います。
うちのお父さんはそもそも、
横尾さんみたいに世渡りがうまくないよ。
──
世渡り‥‥!
吉本
やっぱり横尾さんは、すごくいい意味で、
絶妙な感じで、世渡りがうまいです。
父にはなかった部分です。
もしそうでなかったら、横尾さんはたぶん、
いまのような感じではないんじゃないかな。
写真
──
そうかぁ‥‥。
おふたり、喧嘩のしかたも違いますね。
吉本
横尾さん、喧嘩もするかもしれないけど、
やさしいでしょう。
父の場合は、私も同じなんですけど、
「ギリまで我慢してブチッと行く」タイプです。
すごく似てるんです。
──
年齢を重ねると、
喧嘩が多くなる気がするのは、
どうしてでしょう。
吉本
それは当然だと思います。
登場人物全員が偉くなると、
みんな後に引かなくなるからね。
それはそれは難しいですよ。
たぶん私も、もっと年を取ったら、
起こってくる問題なんだろうな。
──
後に引けなくなっちゃうのは、
なぜなんだろう‥‥。
吉本
それぞれの立場を、
背負っちゃうからでしょう。
──
ああ、なるほど。
吉本
それでも横尾さんは、
背負ってないほうだろうと思います。
だからのびのびと、
当然のことをおっしゃっている。
横尾さんの場合はきっと、
あとに引けない喧嘩というわけではないと思います。
(明日につづきます)
2021-07-12-MON


この夏、横尾忠則さんの作品が
東京のあちこちで見られます。
ほぼ日は渋谷PARCO8階「ほぼ日曜日」で
横尾忠則さんのお人柄や生活にスポットをあてた
展覧会を開催します。

また、みなさまからの熱い要望により、
連載『YOKOO LIFE』を
糸井重里との新規対談を加えて書籍化します。



みなさま、この夏、
『YOKOO LIFE』の本を片手に
「東京YOKOOめぐり」をなさってください。
(めぐった方には横尾只海苔をプレゼント!)
写真
『YOKOO LIFE』
横尾忠則(著)

糸井重里(聞き手)

1,320円(税込)

渋谷PARCO ほぼ日曜日で
7月17日より注文販売。
7月21日より先行販売。
東京都現代美術館のショップ、
横尾忠則現代美術館、豊島横尾館で、
7月21日より先行販売。
ほぼ日ストア、全国書店で
8月3日より販売開始予定。
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打ち合わせや旅のあいだのおしゃべりが、
宝もののようで、聞き逃がせなかった。
だから録音機をできるだけまわした。
どうおもしろいのか、説明はできない。
そんなふうにおそるおそるはじまった、
横尾忠則と糸井重里による
「ほぼ日」のおしゃべり連載は、
通な方々のあいだでじわじわと話題となった。

「あれ、本にすればいいのに!」
という声をいただくも、
編集方針について迷いに迷い、数年経過。
この記念すべきYOKOOイヤーに、
思い切って追加の対談を収載し、
奇跡のような本を誕生させます。
本になって、さらに宝もののような、
貴重な内容です。
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「YOKOO LIFE 

横尾忠則の生活」
会期/2021年7月17日(土)→8月22日(日)

   11:00→20:00

会場/渋谷PARCO8階「ほぼ日曜日」

入場料/450(¥OKOO)円

主催/ほぼ日

協力/朝日新聞社



2021年7月17日(土)→10月17日(日)

東京都現代美術館 企画展示室1F/3F



2021年7月21日(水)→10月17日(日)

21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー3



2021年7月17日(土)→9月5日(日)

丸の内ビルディング、新丸の内ビルディング



ジャケットとパンツを
2021年7月1日(木)から順次発売

ISSEY MIYAKE SHIBUYA(渋谷PARCO2階)、
A-POC ABLE ISSEY MIYAKE / AOYAMA、
ISSEY MIYAKE SEMBA、
ISSEY MIYAKE MARUNOUCHI、
ISSEY MIYAKE ONLINE STORE
写真
横尾只海苔

(よこおただのり)

プレゼントします。
写真
横尾さんの描き下ろし直筆文字入り!



渋谷PARCOの「YOKOO LIFE」展入口で、
東京都現代美術館で開催する
「GENKYO 横尾忠則展」のチケット
(電子チケットの画面可)をご提示の方に、
横尾忠則書きおろし文字入り
「横尾只海苔」(ホンモノの海苔)を
プレゼントします。
※「横尾只海苔」はなくなりしだい配布終了します。
「GENKYO 横尾忠則展」チケットは
観覧前、後どちらも可です。