第33回 《 奉仕の人 》 |
|
「だーいじょーぶ
だいじょーぶ
あとでみんなで食べよー」
はっとした。
ちょっとくらい おどろいたり
イヤな顔をしてもいいはずなのに。
気を遣っていってるのではない。
わかる。これは本心だ。
友人が ギャラリーで一日喫茶をした時のこと。
手伝いますと手をあげておきながら 接客は苦手。
裏方仕事なら得意です と胸を張って言ったのに
箱からケーキを取り出し お皿にうつすときに
ぐちゃっ。あぁ これで2つめ。
自己嫌悪絶頂の中 消えそうな声で
裏と表を忙しく行ったり来たりするカーリンに
おそるおそる失態を告げた。
心からの言葉というのは澄んでいて
すーっと頭の先からつま先まで浸透する。
カーリンの「だーいじょーぶ」という言葉は
くずれたケーキのことよりも そのとき抱えていた
心のカサカサにしみわたり 涙があふれでそうになった。
カーリンが旦那さんのターセンと
ギャラリーfeveを始めてから9年が経つ。
feveにいるとたくさんの人たちが
展示と同じくらいカーリン達に会うことを
たのしみにきていることがわかる。
いつだったかカーリンは
「わたしは奉仕の人なんだって思うの」といっていた。
言う人が言えば嫌みに聞こえそうなこの言葉も
みんなが幸せになれる方法をいつも考え
人の想いも引き受けてしまう
カーリンが言えばすんなりうなずける。
あたしは吉祥寺が好きだが
あたしなんかよりもずっとずっと
吉祥寺のことが大好きで大切にしているカーリン。
著書のタイトルは『わたしの吉祥寺』で
これまたほかの人が言えば “わたしの” って!と
つっこみたくなるようなタイトルも
カーリンがつければやっぱり素直にうなずける。
カーリンとは そういう人なのだ。
カーリンのニットの穴にはギャラリー名から
feve=そらまめ をつけるはずだった。
あれれ おかしいな これじゃあ枝豆だ。