HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN
 
お直しとか
 
横尾香央留
     
 
プロローグ #2 かつてのお仕事仲間と友人に、
横尾香央留さんのことを聞きました。


横尾香央留さんの、
周囲の方々へのインタビュー、第2回目です。
今回は、より身近な方々のお話をご紹介いたしましょう。

横尾さんのかつての職場、
「ミナ ペルホネン」におつとめの
長江 青さんと田中景子さん。
(こちらのインタビューは、
 おふたりいっしょにお話するかたちで掲載いたします)

そして、
「ほぼ日」ではおなじみの福田利之さん。
同じ吉祥寺にアトリエをかまえる友人、
横尾香央留さんの魅力をうかがいました。

 

長江 青さん


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田中景子さん


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─── 横尾さんはいつごろまで、
「ミナ ペルホネン」に
おつとめだったのでしょう?
長江さん たしか、6年くらい前だと思います。
─── 入社された時期が同じだったのは、田中さんで?
田中さん そうです、ほぼ同じころの入社です。
作業場も同じだったので、
ふたりで商品の検品や、お直しなどをして、
プライベートまでいっしょで(笑)、
とにかく長い時間いっしょにいました。
─── ブランドの立ち上げからいらした長江さんは、
横尾さんが入ってきたときのことを
ご存じだと思うのですが、
第一印象はいかがでしたか?
長江さん 香央留ちゃんがはじめて
皆川(明)に会いに来たときに、
持ってきた作品ファイルがとても印象的でした。
ポートフォリオの装丁が
ニットでつくられていたんです。
それを見てまずは、力がある方だと思いました。
そしてそのころからすでに、
ご本人そのものに
独特な雰囲気があったことを覚えています。
─── 独立後も横尾さんは外のスタッフとして
「ミナ ペルホネン」のお仕事を
受けているとお聞きしました。
それは具体的にはどのような?
長江さん たとえば、そうですね、
ワンポイントの刺しゅうをお願いしたりとか。
こちらから「こういうふうにしてほしい」
という要望を伝えると、
香央留ちゃんはそれを踏まえながら
自分の解釈も加えて作ってくださいます。

それは本来、とても難しいことなんです。
ちがう個性を持った外の方にお願いするのは
すごくむずかしいお仕事なんですけど、
香央留ちゃんなら大丈夫。
どう仕上がるのか、ちょっと楽しみなくらいです。
田中さん あとはやっぱり、
お直しをやってもらっています。
とても直せなさそうな穴があいたものでも、
彼女に渡せば、なんとかしてくれる。

香央留ちゃんは、
アーティストという枠ではくくれない、
職人的な要素をすごく持っている人だと思います。
自分のために物をつくるというよりは、
常に相手のことが頭にあって、
それをかたちにするという。
だから、そうやって作られた彼女のものには、
仕上がりにストーリーが見えるんですよ。
長江さん 香央留ちゃんの書いた文章を
はじめてめて読んだときに、
「あ、この人はこんなふうに
 オチをつけられる人だったんだ」って(笑)。
落としどころがあって笑わせてくれる、
こんな文章を書ける人って
なかなかいないかもしれないと思いました。

文章のことも、
考えてみればやっぱりストーリーなんですよね。
お直しのときも、文章を書くときも、
相手のことを考えながら
ストーリーを組み立てられる横尾さんは
ほんとにすごいと思います。

私たち「ミナ ペルホネン」と
香央留ちゃんの共通点は、
その「ストーリーを織り込む」部分だと思います。
田中さん いつもていねいで。
思いつくまでは時間がかかるんですけど、
でも、編むのはすごく早いんです。
びっくりするくらい、正確で早い。
長江さん 表現を実現するための、たしかな技術。
横尾さんには、それがしっかりとある。
繊細に見えて、とても強い人です。

 


 

 
 
     
 

福田利之さん


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「横尾さんと知り合ったのは
 いつごろどんなきっかけだったのか
 ちょっと思い出せないんですよ。
 吉祥寺の街でいろいろな人に出合う中で、
 自然と友だちになった感じだと思います。

 吉祥寺の街に集まる
 仲のいい友だちとみんなで
 お茶を飲んだりぶらぶらしたり、
 いつもはそんな感じなので、
 お互いに仕事の話をしたことがないんです。
 そんなぼくに、彼女の作品について
 お話しする資格があるのかどうか‥‥。
 
 あ、でもあれはすばらしかった。
 個展があったんですよ、
 「お直し とか」という個展があって、
 それに行ってきたんですけど、
 展示がすばらしかったです。
 見せ方のアイデアが豊富で、
 すごくわくわくさせられる展示でした。
 「お直し」ということだけで、
 あんなにたのしくて、
 注目させてしまうのはほんとにすごい。

 なんかこう‥‥
 すごく雰囲気を持ってる人なんですよ。
 人をひきつける、何かがあると思います。
 だから、第一線で活躍されている
 大人の方々にかわいがられていますよね。
 うらやましいです。
 何なんでしょう?
 あの、人に好かれる何かは」

「あまりにも、こう、
 ざっくばらんな友だちになってしまって、
 ふだんは仕事の話もしないので、
 お直しをお願いするような、
 そういう機会がぜんぜんないんですよ。
 ‥‥それで、実はですね、
 こういうものを持ってきたんですけど‥‥」

「虫喰いの穴があいたセーターです。
 これはぼくが
 東京に出てきたばかりのころ
 よく着ていたセーターなんです。
 はじめて吉祥寺に職場を持って、
 そのときちょうど大きな仕事がきて、
 着の身着のままで集中してた時期に
 ずーっと着てたセーターです。
 虫喰いなんですけど、
 やっぱりこう、
 そのころの思い出があるので捨てられなくて。
 ‥‥この場をかりて、お願いさせてください。
 香央留さん、
 セーターのお直し、よろしくお願いします」


(あしたにつづきます)

 

 
 
2011-10-20-THU
 
 
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デザイン:中村至男