福田利之さん |
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「横尾さんと知り合ったのは
いつごろどんなきっかけだったのか
ちょっと思い出せないんですよ。
吉祥寺の街でいろいろな人に出合う中で、
自然と友だちになった感じだと思います。
吉祥寺の街に集まる
仲のいい友だちとみんなで
お茶を飲んだりぶらぶらしたり、
いつもはそんな感じなので、
お互いに仕事の話をしたことがないんです。
そんなぼくに、彼女の作品について
お話しする資格があるのかどうか‥‥。
あ、でもあれはすばらしかった。
個展があったんですよ、
「お直し とか」という個展があって、
それに行ってきたんですけど、
展示がすばらしかったです。
見せ方のアイデアが豊富で、
すごくわくわくさせられる展示でした。
「お直し」ということだけで、
あんなにたのしくて、
注目させてしまうのはほんとにすごい。
なんかこう‥‥
すごく雰囲気を持ってる人なんですよ。
人をひきつける、何かがあると思います。
だから、第一線で活躍されている
大人の方々にかわいがられていますよね。
うらやましいです。
何なんでしょう?
あの、人に好かれる何かは」
「あまりにも、こう、
ざっくばらんな友だちになってしまって、
ふだんは仕事の話もしないので、
お直しをお願いするような、
そういう機会がぜんぜんないんですよ。
‥‥それで、実はですね、
こういうものを持ってきたんですけど‥‥」
「虫喰いの穴があいたセーターです。
これはぼくが
東京に出てきたばかりのころ
よく着ていたセーターなんです。
はじめて吉祥寺に職場を持って、
そのときちょうど大きな仕事がきて、
着の身着のままで集中してた時期に
ずーっと着てたセーターです。
虫喰いなんですけど、
やっぱりこう、
そのころの思い出があるので捨てられなくて。
‥‥この場をかりて、お願いさせてください。
香央留さん、
セーターのお直し、よろしくお願いします」
(あしたにつづきます) |