乾いた荒れ地にぽつりたたずむ ひょろりと背の高い木。葉はない。 枝と枝の間に器用に作られた 大きな鳥の巣を想像する。 するするとした木肌に苦労しながらも 巣のところまで なんとか登る。 うんと手を伸ばし なかを そーっとまさぐると まだ なま暖かい卵が手に触れる。
つかいこまれた ラフィアのかぎ針編みバッグ。 持ち手の根元がえぐれるように切れていた 。 じっと眺めていたら どこか知らない 遠くの国に旅してしまった。 モシャモシャとした鳥の巣を編み キズにはめ込み 青く小さな鳥を住まわせる。
うまれかわったら 大空を自由に飛ぶ鳥になりたい。 そんなふうに思ったことは一度もない。 こどもの頃 そういった質問をされると 決まって答えるのは “天使” だった。
それこそ 飛べるからとか 着ているものが かわいいからとか 全体的にふわぁーっとした印象だからとか 天使に憧れる おんなの子らしい理由は いくつかありそうなものだけど “どうして?” そう聞かれるたび 当時のあたしはきまって真顔で答えていた 『だって 死なないから。』