HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN
 
お直しとか
 
横尾香央留
 
 第49回 《 うまれかわったら 》

乾いた荒れ地にぽつりたたずむ
ひょろりと背の高い木。葉はない。
枝と枝の間に器用に作られた
大きな鳥の巣を想像する。
するするとした木肌に苦労しながらも
巣のところまで なんとか登る。
うんと手を伸ばし
なかを そーっとまさぐると
まだ なま暖かい卵が手に触れる。

つかいこまれた
ラフィアのかぎ針編みバッグ。
持ち手の根元がえぐれるように切れていた 。
じっと眺めていたら どこか知らない
遠くの国に旅してしまった。
モシャモシャとした鳥の巣を編み
キズにはめ込み 青く小さな鳥を住まわせる。

 
 

うまれかわったら
大空を自由に飛ぶ鳥になりたい。
そんなふうに思ったことは一度もない。
こどもの頃 そういった質問をされると
決まって答えるのは “天使” だった。

それこそ 飛べるからとか
着ているものが かわいいからとか
全体的にふわぁーっとした印象だからとか
天使に憧れる おんなの子らしい理由は
いくつかありそうなものだけど
“どうして?” そう聞かれるたび
当時のあたしはきまって真顔で答えていた
『だって 死なないから。』

 
 
2012-09-24-MON
 
 
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写真:ホンマタカシ
デザイン:中村至男