個人差はもちろんあるけれど、
人はだれでも、おおむね、
生活の3分の1近くをふとんの中で過ごします。
みんな、どんなふうに過ごしているんだろう‥‥?
寝つきは? 目覚めは? 快眠法は?
100人にたずねれば100種類の答えが返ってきそう。
様々な方々に、聞いてみることにしました。
「あなたの、眠りとのつき合い方を教えてください」
シリーズ2回目にお招きしたのは、
バレエダンサー・俳優の宮尾俊太郎さんです。
人生の3分の1は、ふとんの中。1/3LIFE

- ──
- 様々なジャンルでご活躍の方々に、
眠りについてうかがう連載をやっておりまして。
本日は、宮尾さんにお越しいただきました。
- 宮尾
- 眠り。睡眠ですね。
ぼくは睡眠に関してすごく興味がありますし、
自分なりに勉強もしてきました。
- ──
- おお、頼もしいです。
勉強してきたということは、
宮尾さんご自身もそれで悩んでいらっしゃる?
- 宮尾
- 基本的にはよく眠れる人間なんです。
ただ職業柄、
舞台やドラマの本番直前はどうしても‥‥。
- ──
- ああ。
本番の前日などは、緊張で眠れなくなりそうです。
- 宮尾
- やはりバレエの本番前日は
キリキリ、ピリピリしてしまいます。
あとはドラマの撮影で
寝る時間が不規則になったり、
考えごとがあって眠れなくなったりもしますね。

- ──
- バレエの舞台と、ドラマのお仕事では、
また微妙に心持ちが違うのでしょうか?
- 宮尾
- そうですね。
バレエとドラマでは、生活リズムも違いますし
使う体や頭も違うので、
睡眠の質も変わってくると思います。
- ──
- ちなみに、前回ご出演いただいた
俳優の菊地凛子さんが、
夜にセリフを覚える作業をするので
眠れなくなるとお話ししていました。
- 宮尾
- ああ、なるほど。
夜にやった方が覚えられる
という人も多いらしいのですが、
ぼくは寝起きに台本を読むのが
いちばん効率がいいです。
- ──
- 朝に。
人それぞれなんですねえ。
宮尾さんは、俳優のお仕事と
バレエダンサーのお仕事の割合は
現在どれくらいなのでしょう?
- 宮尾
- いまは、俳優が8割くらいですね。
長年、バレエをやった後に大怪我をして、
年齢的にも「そろそろかな」と思ったときに
俳優の道を本格的に進むことになったんです。
- ──
- バレエを本格的にやられていたころは、
熊川哲也さんのKバレエカンパニーに
所属されていましたよね。
- 宮尾
- そうですね。
正直、かなり厳しい世界でした(笑)。
- ──
- その時代の「眠り」はどうでしたか?
- 宮尾
- あのころは‥‥ほぼ気絶、ですね。
- ──
- 気絶‥‥!
- 宮尾
- 肉体的にも精神的にも疲れすぎていたんです。
ベッドに入った瞬間、眠りに落ちて、
朝起きたら全身が痛くて
「お、起きれない‥‥」っていう(笑)。
- ──
- その経験があったから、
睡眠について勉強するようになったのでしょうか?
- 宮尾
- いや、そのときはあまり何も考えていませんでした。
27歳のときに靭帯を切る大怪我をして、
活動量が制限されたんです。
そのとき「どうやって体力を維持をする?」とか
「どのようにパフォーマンスを上げる?」
について調べていくなかで、
睡眠の質を上げることに辿り着いたんです。
- ──
- 自分の体のメンテナンスをするなかで、
「眠り」の研究に行きついたわけですね。
- 宮尾
- ええ。
ただ、ぼくが研究して見つけたのは、
あくまで自分にとっての手法なんです。
いちばん大切なのは、
自分のライフスタイルに合ったやりやすい方法を、
体の声を聞きながら、ちゃんといろいろ試して
見つけることだと思います。

- ──
- 「自分はどうなのか」を、きちんと探す。
- 宮尾
- はい。
以前、ねむくまさんに出ていた
「快眠のための入浴法」の記事
を読んだんです。
- ──
- ありがとうございます、
わたしたちの記事を読んでいただいたんですね。
- 宮尾
- どの記事だったか‥‥
「入浴は寝る1~2時間前がいい」
と書いてあったじゃないですか?
- ──
- 快眠セラピストの三橋美穂さんに
「入浴と睡眠」についてうかがった記事ですね。
- 宮尾
- ぼくにとってのベストは90分前なんですよ。
- ──
- ちゃんと時間を計って。
- 宮尾
- そうです。
ぼくの場合は90分でした。
食事のタイミングとか、
ドライヤーにかかる時間とか、
人それぞれだと思うので、
自分の体質に寄り添って
ベストのリズムを見つけることが
大切だと思っています。
- ──
- 寝る90分前に入浴する以外に、
何か気を付けていることはありますか?
- 宮尾
- そうですね‥‥
コーヒーは寝る前は控えるようにしています。
あとは、食事は寝る4時間前までに済ませます。
- ──
- そうした時間も、
ご自身でいろいろ試してわかったことなんですね。
- 宮尾
- はい。食事だったら4時間。
それ以上あけちゃうと、
今度は寝る前にお腹が空いて
逆に寝られなくなる可能性があるんです。
4時間が理想ですね。
- ──
- まいにち、そのリズムで計画的に
暮らしていらっしゃるんですね。
- 宮尾
- いや、実はそうでもなくて(笑)。
- ──
- え? といいますと?
- 宮尾
- なんとなくやるようにしています。
- ──
- なんとなく。
- 宮尾
- 眠ることを後まわしにしてでも
どうしてもやりたいことがあったら、
「まあ寝られなくなるけどいいか」と思って
そっちを優先する日もあります。
- ──
- まいにちのこととして
厳しく決めているわけではないんですね。
で、舞台や撮影があるときは、
眠りのためのリズムを優先するような。
- ──
- そうですね。
自分のベースを決めておく感じです。
そうすれば、
眠りを大切にしたいときに戻れるので。
- ──
- なるほど。
「ぜったいにこうしなければ」と思うと、
また変なプレッシャーになりそうです。
- 宮尾
- そうそう。
そのときの自分の感情に寄り添いながら、
「なんとなく」くらいに思っておくのが
ちょうどいいんじゃないかなと思っています。
- ──
- 「なんとなく」の精神で構えつつ、
でも自分にとっての
ベストのリズムはわかっていると。
- 宮尾
- バレエにしても俳優にしても
体を動かす仕事なので、
朝のコンディションが
そのままパフォーマンスに影響するんです。
だから「こうして寝たら、次の日の自分はこうなる」
というのをたくさん試してきました。
「自分の体が実験台」みたいな感じなんです。

(つづきます)
撮影:池ノ谷侑花(ゆかい)