人生の3分の1は、ふとんの中。1/3LIFE

Interview 03 小平奈緒さんに聞いた眠りの話。

ほぼ日「ねむれないくまのために」PRESENTS
個人差はもちろんあるけれど、
人はだれでも、おおむね、
生活の3分の1近くをふとんの中で過ごします。
みんな、どんなふうに過ごしているんだろう‥‥? 
寝つきは? 目覚めは? 快眠法は? 
100人にたずねれば100種類の答えが返ってきそう。

様々な方々に、聞いてみることにしました。
「あなたの、眠りとのつき合い方を教えてください」

シリーズ3回目にお招きしたのは、
オリンピック女子スピードスケート史上、
日本初の金メダリスト、小平奈緒さんです。
小平奈緒さんプロフィール

第1回 
                            寝ているあいだに強くなる。

──
様々なジャンルでご活躍の方々に、
眠りについてお話をうかがっております。
今回はオリンピック女子スピードスケートで
日本初の金メダリスト、
小平奈緒さんにお越しいただきました。
小平
よろしくおねがいします。
──
小平さんに眠りのお話をうかがえるとは‥‥。
たいへん光栄です。
ほんとうにありがとうございます。
小平
いえいえ、こちらこそありがとうございます。

あ、
このくまちゃん、「ねむくま」さんですね。
──
えっ!
知ってくださっているなんて‥‥
うれしいです。
※わたしたちは「ねむれないくま」を
略して「ねむくま」と呼んでいます。
小平
Twitterを拝見しました。
──
わー、ありがとうございます。

さっそくお話をうかがいたいのですが、
まずは、現役を引退されたということで、
ほんとうにおつかれさまでした。
小平
ありがとうございます。
──
もう、引退されてから7ヶ月くらいですか?
小平
そうですね。
10月22日がラストレースでしたので、
ちょうど7ヶ月が経ちました。
(このインタビューは6月上旬におこなわれました)
──
ラストレースを、マックススピードのままで
かけ抜けていかれたような印象があります。
小平
そうかもしれません。
おかげさまで、
ベストな状態で現役生活を終えることができました。
「スポーツは人生を豊かにする文化である」
ということを、自分の身体で表現したかったんです。

やはり、引退していく姿が
心身をボロボロに削られた状態ですと、
スポーツの豊かさが伝えられないですから。
──
ご自身の身をもって表現されたわけですね。
おこがましいのですが、
「ほんとうにかっこいい」と思いました。
小平
ありがとうございます(笑)。
──
現役でいらしたときは、眠りについて
たいへん気を使われていたとうかがいました。
小平
はい。
アスリートって、
トレーニングしているときに強くなるのかというと、
そうではないんです。
──
え、トレーニング以外でなにか‥‥。
小平
休んでいるときに、強くなるんです。
──
休んでいるときに、強くなる。
小平
トレーニングはもちろん大切なのですが、
いかに上手に休めるかが、もっと大切です。
──
ほう。
小平
身体はトレーニング中ではなく、
トレーニングの後に筋肉の合成などが
行われることで成長します。
──
はい。
小平
ですから、そのタイミングでしっかりと
睡眠をとって身体を休めると
成長ホルモンなどが正常に働くようになり、
より成長が促されるんです。
──
なるほど。
小平
どんなに練習しても、
身体を成長させる時間をしっかりとってあげないと、
強くはなれません。
──
寝ることで、強くなる。
小平
はい。
さらに、睡眠が不足すると
疲労も抜けず、次の日のトレーニングに
集中できなくなってしまいます。
──
悪循環ですね。
小平
ですから、睡眠はアスリートにとって
ほんとうに大切なことなんです。
──
それは、ご自身の経験で学ばれたんですか。
小平
そうですね。
いろいろと勉強はしてきたのですが、
やはり、自分がどんな状態がいいのかを
実際に経験してきたことが大きいです。
──
なるほど。
小平
眠れていないときは、
はっきりと数値やデータに現われます。
──
競技のタイムなどで? 
小平
はい。
よく眠れていないな、というときには、
代謝がうまく行っていなかったり、
メンタル的にも焦りが出てしまったり。
そうすると
SpO2や体温、脈などのスコアに現れます。
SpO2の数値が下がったり、
起床時の脈がいつもより高かったりするので、
パフォーマンスが低下してしまいます。
※SpO2:体内のヘモグロビンと結合した酸素量の割合
──
そんなにすぐに影響が出てしまうんですか。
小平
そうなんです。
反対に、睡眠のリズムが整ってきたときには、
内臓やメンタルが整って、むくみもとれ、
全身の循環が良くなります。
そうすると、スコアも良くなってきます。
──
はあー、
やはりそういうものなのですね。
小平
とはいってもわたしの場合、
現役時代はトレーニングで
身体が疲れていましたから、
ほとんどまいにち
バタンキューという感じでした(笑)。
──
そうですよねぇ。
小平
白目になって寝るような(笑)。
──
白目‥‥?!
小平
はい、もう、そういうイメージです(笑)。
9時に寝ようと決めていても、
8時ころには
「もうだめだ‥‥」という感じで。
──
前回お話をうかがった
バレエダンサーの宮尾俊太郎さんも、
レッスンの日々だった期間は
毎晩バタンキューだったと
おっしゃっていました。
小平
きっと同じですね。
──
白目を剥いてしまうほどの眠りは、
やはり深い睡眠なんでしょうか。
小平
深い睡眠ですよね。
でも、そもそもそんなになるまで
身体に負荷をかけるのは良くないことです。
気絶とおなじですから。

(つづきます)

撮影:池ノ谷侑花(ゆかい)
  • 2023-07-12-WED

これまでの1/3LIFE

  • Interview 01 菊地凛子さんに聞いた眠りの話。
  • Interview 02 宮尾俊太郎さんに聞いた眠りの話。