第1回 マンガ本のデザインは初めてでした。
糸井

まえがき的に言うと
漫画の本というのは
『サザエさん』の時代から、
『おそ松くん』であろうが
『鉄腕アトム』であろうが、
『ちびまる子ちゃん』にしても
漫画家側からの発想で
本のデザインがされていたように思うんです。
どれも、「漫画が読めればいいもの」
として作られていたんですね。

そこでヒントにしたのが
『クマのプーさん』という本です。
つまり、作者のミルンが
自分の子どものクリストファー・ロビン
という人のために描いた
『クマのプーさん』という物語の本作り。
本として愛着をもってもらうためには
どういうことをやったんだろうという
根源的なところにまで
戻る必要があったんです。
「漫画が出るんだよ」
というよりは
「本を作ったんだよ」という形で
デザインするには
どうしたらいいかっていうことを
やってみたかったんです。

仕様も発売日もほぼ決定して
何部刷りましょうか?
という会議の最中に
「根源的にデザインを
 一から考え方を組み立てるのなら
 佐藤卓さんだ。
 発売日を遅らせてでも
 ダメもとで佐藤卓さんに
 お願いできないかな」
と、ぼくが言い出したことから始まったんです。
とは、言ってみたものの
卓さんが、かつてに
漫画の本のデザインをしたって話も
聞いたことがないし‥‥。
まずはこの話が舞い込んで来たとき、
卓さんはどう思いましたか?

佐藤

「ほぼ日」は読んではいましたが
「ブタフィーヌさん」を
よく読んでいたわけでは
実はなかったんです。
「ほぼ日」スタッフの方が説明に来られて
その場で4コマを見始めたら
これがかわいいわけじゃないですか!(笑)

実際に手を動かすことになった
デザイナーの日下部昌子と
2人で見て、その場で
もう、かわいいとと思ってしまいました。

ただ、マンガの本のデザインというのは
本当にやったことが無かったですし、
なにしろ作者であるたかしまさんとも
実はここで会うのが初めてなんですね。
つまり、作者とお会いして
打ち合わせをする時間も無かったわけです。
ですから、まずは
「作者のたかしまさんだったら
 どういうことを
 やってもらいたいんだろう。」
次に「ほぼ日」で「ブタフィーヌさん」を
いつも楽しみに読んでいるファンの方が
どのような本であったら嬉しいんだろう。
それから、糸井さんをはじめとした
「ほぼ日」の方々がどのようなものを
イメージしているんだろう。
デザインとは自分がやりたいことを
やることではないので
そんなことを思い描いていました。

糸井

卓さんがお断りになるっていうことも
僕らは覚悟してお願いしたんですね。
だって水戸芸の展覧会の直前ですよ(笑)。
だから、絶対無理なんだろうけども
一縷の望みをかけてお願いしたのですが、
お断りになるという
選択肢はまったくなかったですか。

佐藤

あのぐらいのタイミングだと
もうやるべきことがほぼ決まってて。
後は会場で一気に
1週間で組み立てようかという
タイミングでした。
もうちょっと前だと
物理的に時間を
作れなかったかもしれませんが
「ブタフィーヌさん」のことを知ったら
携われること自体が
嬉しかったと思うんで、
結論としては
どのタイミングでも
させていただいてたんでしょうね。

糸井

それはものすごく嬉しい話(笑)。

佐藤

今日たかしまさんに
お会いするまで
たかしまさんが
どういう方かも
存じ上げないわけですし
私にとって「ブタフィーヌさん」が
たかしまさんだったんですよ。

たかしま

「ブタフィーヌさん」が書いてるみたいな?

佐藤

そうそうそう、そうそうそう(笑)。
で、コイツのために――
コイツって言っちゃあ
また「ブタフィーヌさん」が
怒ると思うんですけど。

たかしま

いや、「ブタ」って
言わなきゃ大丈夫です(笑)。

佐藤

ああ、よかった。
「コイツ」は大丈夫ですね。
「コイツのために
 少しでも力になれるんだったら」
という本当そういう気持ちに
デザイナーも僕も2人がそのときなったんです。

<つづきます>
2007-03-05-MON
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