第10回 最後はリクエストのお答えしましょう。
糸井

あらゆるこういう場所で
最近よく言ってることなんだけど、
万葉集というのは
どういう特徴があるかとか
試験問題として出たら書けるんです。
例えば益荒男振りとか
要素がいくつかあるわけですよね。
だけど、その万葉集の中に
和歌を1つ作ってどこかに挟みこんで、
めくったときに当時の人が書いたのと
紛れてしまうようなものが作れるかといったら、
それは作れないんですね。
技術の部分に
実はものすごい大量の
情報がこめられています。
これからはそこが
本当に重要だと思ってるんです。

例えば、コンセプトなんて
いいか悪いかについては
1発で分かんなきゃダメです。
実際はコンセプトよりも
実現できるかどうかが一番難しい。
実現できないコンセプトを出して
グシャグシャなものができるよりは、
実現できるコンセプトを
確実にいい技術で提供したほうが
本当に感動できるものができますね。

卓さんのデザインをずーっと見てて、
「あ、これ実は彫刻なんだな」
と気がついてから、
また、面白くなったんですよ。

佐藤

糸井さんから
「彫刻」と言われてから
ずっと考えていたんですが
日本のデザインは木彫的かもしれません。
ゴテゴテゴテゴテやって、
それで足んなかったら足して、
また削ってというよりも、
できるだけ手数を少なく、
ひと削りするときも
いろいろ考えた末に
そこに気を込めるように形を作っていくという。
書もそうですね。
書き直しは基本的にはできませんし。

糸井

捨てちゃうんですからね。

佐藤

日本食の世界でもそうかもしれませんけど、
まずい素材をいくらゴテゴテゴテゴテやってもダメで、
いい素材を選んで、
どれだけ必要最小限の手をそこに下すか。
そういうものに近いのかなって
やっぱり思うようになってきますね。

糸井

たかしまさんが使ってる画材がね、
トライが何度もできるっていうものだけに、
逆にいえば止め処もなく
いくらでもできるんですよね。

たかしま

そうです、やろうと思えば。

佐藤

でも、コンピュータで描いてる絵って、
ダメならパッと消すじゃないですか。
あれって書の失敗したのを
ポッと捨てるのと一緒ですよね。
最近の、手で描かなきゃダメだ
言われる時代に、
ちょっと考えさせられることでもありますよね。

糸井

要するに、
コンピュータが万能の機械だと
みんなが思い込みすぎたんでしょうね。
自動車さえあれば、
どこでも行けるわけじゃないように
コンピュータさえ持てば
いいアイディアが出るとか、
そんなふうに思い込まされた時代あるじゃないですか。
野球マンガでもさ、
博士ってあだ名のめがねをかけたやつが
地面に数式を書いて、
「こうこうこうで、こうすると打てる」
「やっぱり打った」なんてやるけど
あんなことありっこないですよね。
コンピュータがそう思われてた節があって。
やっとたかが道具に戻ってきたんでしょうね。

佐藤

だから、たかしまさんみたいな人が、
本来、持ってる力を
スッとストレスなく形にして
たかしまさんが持ってるものを
引き出す役割に逆にまたなってる。
ちゃんと道具になってるわけですね。

たかしま

手描きでも
楽しみで描いたりはしますが
一番心を開いてというか
楽に書けるのはコンピュータなので、
すごくいい相棒という感じですね。

佐藤

(「そろそろ時間です」という合図が入って)
もし酒が入ったら、
この話、朝までかかりそうです(笑)。
じゃあ、会場におこしの方から
ブタフィーヌさんの
こういうポーズを書いて欲しいという
リクエストがあれば
たかしまさんに
最後に書いてもらいましょう。

会場:

立ち上がったところをお願いします。

糸井

それじゃ、
最後はリクエストの模様を
お届けしながら
この座談会は終わりましょう。
本日はどうもありがとうございました!

<終わります>
2007-03-26-MON
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これまでの「かわいいマンガ、ここにあります。」
第1回 マンガ本のデザインは初めてでした。
第2回 ブタフィーヌさんの設計図。
第3回 だれもうまいとは言ってくれないタイプの
うまいコピー。
第4回 卓さんのプレゼンテーション(前編)
第5回 卓さんのプレゼンテーション(後編)
第6回 こいつは古くならないな。
第7回 友達になりやすい絵。
第8回 ブタフィーヌさんは目が命。
第9回 交通量の多い交差点を探すんです。