まず、水野さんは「カレー」という食べ物を
メディアにしてしまったところに
大きな功績があると思うんです。
それまで、カレーに限らずなんでも
「食べ物は、ただの食べ物でしかない」と
みんな思ってたと思うんですけど。
たとえばぼくは以前、水野さんに
「人をカレーで表現する」ということを
してもらったことがあります。
たとえば「カルロス・ゴーンさんを
イメージしたカレーを作り、
それでゴーンさんを語る」とか。
水野さんはそんなふうに、
カレーをメディアにしたところがすごい。
芸術と言ったら大袈裟かもしれませんけど、
食べ物を表現ツールとして捉える視点が
すごく面白いなと思いましたね。
かつ、水野さんはカレーに対して、
本気で愛があるじゃないですか。
おおもとにカレーへの愛があって、
カレーを軸にさまざまな表現をしていく。
それは、カレーをひとつの芸術として捉えている
アーティストみたいな感じがあって、
すごく素敵だなと思っています。
しかも、彼はただのカレーオタクではなく、
ひじょうにバランス感覚がいいんですよね。
2007年、いっしょに「東京カレーラボ」という
カレー屋さんをプロデュースしたんです。
これは、水野さんが考える
カレーのラボラトリーを作ってみたいと思って、
「カリ~番長の部室を作るような気持ちで
作ってくれませんか」
とお願いしたら、
「部室、いいですね」と言って、作ってくれました。
そこは「ソースが主役のジャパニーズカレー」が
コンセプトのお店だったんですけど、
そのときのカレーも、すごくおいしかったですよ。
また、そのお店と関連させて
『Dr.SPICE』というラジオ番組を
いっしょにさせてもらいました。
水野さんに毎回、さまざまなゲストに合わせた
カレーを作ってもらい、
みなさんとカレートークをする番組なんですが、
水野さんからは毎回ほんとうに
さまざまなアイディアが出るんです。
料理人ということでもないのに、
あれほどのアイディアの引き出しがあって、
実際にそれを作れるのは、すごいなと思いました。
「カレーが好き」という人のなかには、
「語るのが専門」というような
オタクタイプの人はたくさんいると思うんですよね。
また、黙々と自分にとっての最高の味を追求する
ストイックな料理人の人もいる。
だけど、水野さんはそのどちらでもなくて、
自ら鍋を振って作りながら、
常に食べ手側の視点を持っている人。
さらに、カレーで人と人もつないだりもする。
そういった多角性を持っている部分が、
彼の魅力なんじゃないかと思います。
カレー好きの人って、
哲学者みたいな人が多い気がするんです。
我が道の探求がなによりの興味で、
ほかの人の行動にはあまり興味がないというような。
だけど、水野さんはいろんな人の話に
興味があるんですよね。
そして当たりもやわらかくて、すごくナチュラル。
もちろん、ものすごくマニアックな知識もあるし、
すごく強い自分の哲学を持ってるかもしれないですけど、
もっと、カレー全体への愛情というのかな。
そういうものを感じますよね。